個人データをどう活用? 情報銀行スタート
三菱UFJ信託銀行が今月1日に、日本の金融機関として初めて、あるサービスを開始しました。銀行が利用者から「お金」ではなく「個人のデータ」を預かり、その一部を企業に提供するというもので、個人情報の取り扱いを巡る議論に一石を投じそうです。
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■情報銀行サービス「Dprime」の仕組み
三菱UFJ信託銀行が今月1日から本格的に始めたサービス「Dprime」。銀行が利用者の同意を得て預かった個人データを、同意を得た上でデータを求める企業に提供する「情報銀行」と呼ばれるサービスです。
仕組みは、三菱UFJ信託銀行がつくったアプリにデータを提供してもいいと同意している人が情報を登録します。登録するデータは主に4種類。性別や生年月日のほか、趣味や好みなどのライフスタイル、位置情報などの行動履歴。そして、資産の情報です。
企業側はそのデータのうち、必要なものを選び、利用者が同意した上でデータの提供を受けます。メールアドレスや電話番号などの個人が特定されるデータは銀行が管理し、企業側には渡らないとしています。
■企業と利用者 それぞれのメリットは?
個人の利用者と企業はお互いにどういったメリットがあるのでしょうか。まず企業側は、提供を受けた個人データをもとにマーケティングや商品開発などに活用できるメリットがあります。一方、データを提供した利用者は、対価として割引クーポンなどを受け取ることができます。
例えば、この「Dprime」に参加している企業のひとつ、フルーツの老舗「千疋屋」は、趣味や食事の好みなどの個人データを希望していて、提供に同意した個人には、季節限定のフルーツの割引券をもらえるということです。
「Dprime」が始まった7月1日時点で、参加している企業は25社。さらに50社近くの企業が参加を予定しています。三菱UFJ信託銀行は今後、参加企業を数百社にまで拡大したいと考えていて、2年後の100万ダウンロードを目指しています。
■“情報銀行”は他の金融機関も
「情報銀行」を巡っては、三井住友銀行を傘下に持つSMBCグループでも医療分野での活用が検討されています。みずほ銀行とソフトバンクが共同出資しているジェイスコアでも参入を検討しているといいます。
■情報銀行で「GAFA」に対抗?
企業の個人データの活用を巡っては、日本の企業は欧米の企業に比べればまだまだ出遅れていると言われています。アメリカ大手IT企業、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといった「GAFA」がデジタル分野で独占的に個人データを収集し、活用しています。ただ、利用者が想定しない分野にも使われるケースがあり、本人の同意なしに使うべきでないという批判の声も多く上がっています。
一方、日本で先進的に進められている情報銀行サービスでは、データがどういう形で活用されるのか、提供者があらかじめ把握することができるため、企業側にとっては提供者に安心感を与え、「GAFA」などにはない独自の個人データを事業に活用できるとの期待が広がっています。
一方、データの流出などのリスクを回避できるのか課題も指摘されています。
情報銀行サービスを日本独自のビジネスモデルとして世界に先駆けて確立することができるのか、今後の展開が注目されています。