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高齢者の定義「5歳」引き上げ案……背景に国難? 31歳「死ぬまで働くのは嫌」 提言の“真の狙い”は【#みんなのギモン】

2024年5月25日 13:45
高齢者の定義「5歳」引き上げ案……背景に国難? 31歳「死ぬまで働くのは嫌」 提言の“真の狙い”は【#みんなのギモン】
高齢者の定義を「65歳以上」から「70歳以上」に――。政府の経済財政諮問会議で、このことを検討すべきとの意見が出されました。背景には働き手の減少などがありますが、もし実現すれば、課題となっている社会保障の負担などはどう変わるのでしょうか?

そこで今回の#みんなのギモンでは、「高齢者の定義『5歳』延ばす?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●高齢になっても働きたい?
●70歳から“高齢者”もし実現したら…

■「生涯活躍と少子化への対応」を議論

近野宏明・日本テレビ解説委員
「一般的には65歳以上の方が高齢者とされていますが、それを5歳延ばして70歳以上とすることを検討すべきだ、という意見が政府の会議で出ました。その背景に一体何があるのでしょうか?」

「23日の経済財政諮問会議で、『生涯活躍と少子化への対応』などについて議論されました。この中で有識者から、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべきだという意見が出ました」

「理由は『日本では健康寿命が延びていて、就労意欲の高い 65 歳以上の人が増えているから』というものです。その上で、全世代を対象としたリスキリング(学び直し)を推進し、意欲ある高齢者が活躍できる社会をつくることが重要だ、という提言がなされました」

鈴江奈々アナウンサー
「周りを見ていても65歳以上の方でもお元気です。働きたいという方も増えてきているとなると、自然に考えると、高齢者と言わない方がいいのかなと思います。ただ、政府がそう捉えるということはどういう意味なのかな、という点は気になります」

■「5歳引き上げ案」どう?…街で聞いた

近野解説委員
「5歳引き上げ案をどう受け止めているか、街の人に聞きました」

会社員(31)
「いいことはなさそうですね。65 歳まで働いて、退職して、余生をゆっくり過ごそうと思っていた人たちも働くのが当たり前になってしまうっていうのは…。死ぬまで働くのは嫌だな」

会社員(29)
「年金受給の関係で、(仮に)その開始が遅くなると、そこまでの間どうやってお金もらおうか心配になるかなと思いますね」

自営業(50代)
「今の世の中、高齢者といっても動ける方いらっしゃるので、それは問題ないのかなと。いろいろ活躍できる場が増えるのはいいと思いますが、それより下の世代から見れば、上が詰まってるのに下が働く場所が奪われていくような印象もあるのかな…」

専業主婦(69)
「現状の65歳で今はいいんじゃないかと。とにかく全てが後ろ倒しになっていくのは、もしかしたらつらい方もいるんじゃないかなと思います」

ホテル勤務(24)
「単純に、働く期間が長くなっちゃうんじゃないかなって思うと、ちょっと怖いです。すごくいい感じに言ってる気がするんですけど、ずっと働いて、働かされてそうな気がするし…」

■70歳までの雇用確保が努力義務に

近野解説委員
「思いはさまざまということですね」

森圭介アナウンサー
「5歳後ろに延びるということで、定年も延びて年金の受給(開始)も延びてということになると、また話は違います。働きたい人が働ける世の中はいいですが、ゆっくりしたい人が働かなくても安心して暮らせる世の中になるのが一番いいんじゃないかなと思います」

忽滑谷こころアナウンサー
「私は入社5年目の26歳です。この年齢だけ見ると近い未来ではないのかなと思いきや、入社の時に自分の人生プランはざっくり立てるので、同じように働かれている方々にとっては、この5年というのは大きいんじゃないかなと思いますね」

近野解説委員
「私も他人事ではなく、昔は60歳定年というのが当たり前にありました。それが2013年からは、働く人が希望する場合には企業は65歳まで雇用する義務が課され、2021年になると70歳まで雇用を確保することが努力義務に。だいぶ時代は変わってきてはいるんですね」

刈川くるみキャスター
「私たちがもっと大人になった時に、(70歳どころではなく)75歳、80歳になってしまうのかなと心配はありますね」

■2030年代からさらに…働き手が減少

近野解説委員
「私は会社に入ったのが1995年ですから、その時は60歳まで働けば、そこから先は多少穏やかな悠々とした暮らしになるのかなと推測しましたが、多分そうならない…」

森アナウンサー
「走れば走るほどゴールが勝手に遠ざかっていくというね…」

近野解説委員
「現実はあまりのんきな見通しは立てにくくなりました」

「一般に働き手とされる生産年齢人口(15~64歳)は減っていて、国立社会保障・人口問題研究所の令和5年推計によると、2030年代からは減少がさらに加速するとみられています。2030年代は意外とすぐそこで、待ったなしの状態です」

「経済財政諮問会議では、このことを『国難とも言える成長下押し』と表現し、この克服が大きな課題だとしました。そのためには、健康で意欲のある65~74歳の活躍などが重要だと指摘しています」

■内閣府が調査…何歳まで働きたい?

近野解説委員
「皆さん、何歳くらいまで仕事をしたいですか?」

鈴江アナウンサー
「もう、行けるところまで…」

森アナウンサー
「私も細く長く。1週間に1回くらいだったらいいかな」

近野解説委員
「人生いろいろ、キャスターもいろいろです。定年から定年後をリアルに見据える60歳以上の男女に『何歳まで働きたいか、または働きたかったか』を聞いた内閣府の調査(2019年度)があります」

「『65歳位まで』は、男女とも約25%であまり差はありません。『70歳位まで』だと、男性が26.8%、女性が16.8%と10ポイントの差が出ました。『働けるうちはいつまでも』という鈴江さんのような人も、男性が19.6%、女性が21.5%と男女とも約2割いました」

「また、総務省によると15歳以上の働いている人全体のうち、約7人に1人は高齢者ということです」

刈川キャスター
「多いなと思う一方で、これからもっと増えていきますよね。ただ問題なのは年金などの制度がどう変わっていくのかが気になります」

■年金支給などが70歳からになれば…?

近野解説委員
「あくまでも今回の提言は、今後実現に向けて本当に進んでいくか分からないという前提ですが、専門家はその裏側に切羽詰まった事情があるとみています。それは、社会保障の若者の負担と公費負担を減らすことです。日本総合研究所の西沢和彦理事に聞きました」

「今は、年金の支給などの現役世代からの支援を受けられるのは原則として65歳から。これが仮に、高齢者の定義を変えたのに合わせて70歳からとなれば、現役世代の負担と公費の負担が減ります。西沢理事は『真の狙いはそこにあるのかもしれない』と言います」

森アナウンサー
「すると、65歳まで働いて後はゆっくりしようと思っていた方が、65~70歳は無年金になっちゃいます。そうなると話が違いますよね、となりますよね」

■誰でも安心して老後を過ごせる施策を

近野解説委員
「まさにゴールがずれちゃうということになると、当然そういう感情を抱く方は多いと思います」

「“年金支給の開始の時期をさらに後ろにする”といきなり言うことはできないですから、西沢理事は『最初の一歩として高齢者の定義をまず変える可能性もあるのではないか』とみています」

鈴江アナウンサー
「どんどん後ろになっていくのではないかと若い世代が不安に思うように、歳を重ねることの不安を払拭することって大事だと思います。言葉の定義からぬるっと払拭するのではなく、どうなっていくのかという制度の話は、きちんと丁寧にしてもらいたいですよね」

森アナウンサー
「納得したいと思います」

近野解説委員
「正面から堂々と議論していただきたいところです。働きたい人が生き生きと働ける、このこと自体は重要です。しかし、さまざまな理由で早いうちから働けない、働かないという方も大勢います」

「そうであっても安心して老後を過ごせるような施策は、決しておろそかにはしないでください。そうくぎを刺しておきたいと思います」

(2024年5月24日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html