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たまごの価格 また高騰するのか? 前シーズンと違う感染事情

2023年12月29日 14:00
たまごの価格 また高騰するのか? 前シーズンと違う感染事情

「たまごはもう昔のような物価の優等生にはなれない」。前シーズン、過去最多の1771万羽の殺処分数を出して、一度は収束した鳥インフルエンザの感染。しかし、11月に入り今シーズン1例目となる感染が確認された。いまは下がりつつあるたまごの価格は今後再び高騰するのだろうか?

■いまはどうなっている? たまごの価格

母親
「2個ぐらい余っているから、きょうは買わなくてもいいかもよ」
女の子
「でも買いたい」

春にはそんなやりとりが街のスーパーで聞かれるほど高騰していた「たまごの価格」。2023年1月には東京で280円だった1キログラムあたりのたまごのMサイズの卸売価格は、高騰を続け、一時350円となりました。

その後、鳥インフルエンザが収束し、清浄化宣言が出された6月ごろからたまごの卸売価格は下がりはじめ、11月16日には250円になりました。ところが、それからおよそ10日後の11月25日、今シーズン1例目の鳥インフルエンザが佐賀県で確認されたのです。

たまごの価格はこれからまた高騰してしまうのでしょうか? たまご業界関係者に聞いてみると…

「冬の間は本来たまごの需要が高くなり価格も上がります。しかし、前回の鳥インフルの被害からは徐々に回復していて、生産量も増えてきています。このまま増え続ければいまの価格よりも下がることも考えられます」

たまごの生産量は、まだ半分程度しか回復していないので、これからさらに生産量が増える可能性があるといいます。しかし、たまご業界の関係者はこうも付け加えました

「いずれにしても、今後の鳥インフルエンザの発生状況によって値段は変わってきます」

これから鳥インフルエンザが再び流行することは考えられるのでしょうか?

■前シーズンに比べ少ない鳥インフルの発生 なぜなのか?

鳥インフルエンザのウイルスは、寒くなると暖かい地域に移動する渡り鳥が、ロシアや中国などから日本に運んできます。以前は感染した渡り鳥の多くは日本に来る前に死んでいましたが、鳥インフルエンザに詳しい北海道大学の迫田義博教授によりますと、ここ数年はウイルスが変異して、渡り鳥が感染しても以前ほど死ななくなったといいます。感染したまま日本に来た渡り鳥が養鶏場のニワトリにウイルスをうつすのです。

ところが、前シーズンに比べて今シーズンは驚くほど養鶏場での感染数が少ないのです。前シーズンは2022年10月28日に養鶏場で鳥インフルエンザの感染が確認され、12月31日までに51件の感染が確認されています。しかし今シーズンは、2023年11月25日に確認されましたが、12月20日までに4件しか確認されていません。

なぜ、今シーズンはこれほどまでに感染数が少ないのでしょうか? 迫田教授はこう話します。

「それは養鶏場の人たちが、がんばっているからです。野鳥の感染数は例年どおり増えてきている。しかし養鶏場で感染が少ないのは、前回、被害が大きかったため、感染対策に神経を使っているからです」

環境省によりますと、今シーズンの野鳥の鳥インフルエンザの発生状況は12月20日までで72例にのぼります。この数字は、すでに鳥インフルエンザが渡り鳥によって国内に持ち込まれ、自然界にウイルスが多く存在していることを示すそうです。それでも養鶏場での感染数が少ないのは、「養鶏場の努力」によるものなのだと、迫田教授はいいます。

具体的にはどのような努力なのでしょうか?

■養鶏場の努力で鳥インフルは防げるのか?

「たまごはもう昔のような物価の優等生にはなれない」

このコメントは青森県にある養鶏場、東北ファームの山本彌一社長のものです。

東北ファームは2022年12月、国内最多139万羽のニワトリを殺処分、約13億円の赤字を出しています。感染が確認されると養鶏場のすべてのニワトリを殺処分しなければならず、その後も消毒作業などでおよそ半年間、たまごが生産できない状況が続きました。東北ファームが行っている「養鶏場の努力」はどんなものなのか? 山本社長に聞くと…

「やはり分割管理。万が一の管理、リスク軽減という点ではメリットは大きい」

東北ファームは全国に先駆けて「分割管理」を2023年11月から導入しています。

養鶏場を複数のブロックに分け、作業員や車両などがほかのブロックと接触しないようにニワトリを管理します。この方法だと、1つのブロックで感染が確認されても、他のブロックでは、たまごの生産が続けられます。分割管理の導入は新たな負担と恩恵の両方をもたらしたといいます。

「フェンスや鶏糞の処理施設など設備投資に3億円ほどかかりました。しかし、それだけリスク管理をしているならと新しい取引先もできました」

農林水産省は2023年9月に分割管理のマニュアルを作成。周知に努めていますが、費用面などでハードルは高く、全国で分割管理を取り入れている養鶏場は現在、東北ファームだけです。ほかの養鶏場でも数十件が分割管理の導入を検討しているといいます。

山本社長に改めて「たまごは物価の優等生」に戻れるのか聞いてみました。

「鳥インフルエンザがこのまま流行らなければ、今後たまごの価格は下がると予想しています。これからの感染に気をつけなければならない」

今シーズンの感染数がまだ少ないのは、夏の暑さが長引いて流行の時期がずれ込んでいるからだという見方もあり、今後も注意していく必要がありそうです。

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