“脱・親任せ”問われるダイハツ 「トヨタから社長」で本当に変革できる? 新体制発足の裏側
車両の認証試験で不正を行っていたダイハツ工業が13日、親会社のトヨタ自動車と会見し、奥平総一郎社長の交代などを発表した。ただ、あるダイハツ関係者は、会見や体制などについて、「トヨタ主導で決められている」と話す。今回の不正の要因の一つ、親会社のトヨタに、“できないことをできないと言えない”風土から脱却し、ダイハツが“自ら”生まれ変わることはできるのか。(経済部・戸田舜介)
13日午後、ダイハツは、経営陣の刷新などについて親会社のトヨタ自動車とともに会見を開いた。トヨタの佐藤社長は、ダイハツの再生を牽引するため、トヨタから社長らを送り込む人事を発表。新社長も新たな副社長も、トヨタから送り込まれる形となった。
しかし、あるダイハツ関係者からは、再発防止策やこの日の会見、さらに新体制などについて、「トヨタ主導で決められている」との声も聞かれ、いまだ“親会社任せ”の状況もうかがえる。
■「どうして選ばれたか私もはっきりわからない」
ダイハツの新たなトップには、トヨタ中南米本部の本部長である井上雅宏(いのうえ・まさひろ)氏が3月1日付で就くことが発表された。
井上次期社長は、「私は今回、送られた側だ」「どうして選ばれたか私もはっきりわからない」と話した。一方で、豊田章男会長から、「5年間、海外でワンチームで頑張ってきた功績があると言われた」とも話した。
■次期社長・井上氏 “現場主義”が評価され
井上氏の起用理由について話したのは、トヨタの佐藤社長だった。佐藤社長は井上氏について、「現場のメンバーと徹底的に対話を続け改革を前に進めてきたリーダーだ」と説明し、井上氏の“現場を重視するマインド”を評価した。
さらに佐藤社長は、「お客様に応援いただける会社に生まれ変わるため、ダイハツとトヨタが一緒になり全力で取り組む」と、“両社で”再生に向けて取り組んでいくことを強調した。
■「自発的に変革できないから…」との声も
一方の井上次期社長も、「トヨタの力を借りながら確実に再生していく」と述べたが、あるトヨタ関係者からは、「ダイハツが自発的に変革できないから、トヨタ主導で体制を決めざるを得ない」という声も出ている。
去年不正が発覚した際、調査報告書が指摘したのは、ダイハツの現場が“親”のトヨタに対し、「できないものはできない」と言える環境になく、「過度にタイトで硬直的な開発スケジュール」に追い込まれた点だった。
佐藤社長も「現場主義を徹底する」と話したが、そうであるならば、トヨタ自身も、“子”が“親”にモノを言える風土を作れるかどうかが問われている。さらにいえば、その風土をダイハツ自身が作り出し、「人に愛されるクルマづくり」をする会社に“自ら”生まれ変われるかどうかということになる。
豊田自動織機でも不正が発覚するなど、不正がグループ全体の問題となっているトヨタグループ。“親”と“子”の関係性を、本当の親子のように、「気軽にコミュニケーション」ができる“親密”なものにできるのかが問われている。