貸金庫から“十数億円相当”窃盗…元行員の手口は? 三菱UFJ銀行が会見
三菱UFJ銀行の元行員が、貸金庫から時価十数億円相当を盗んだ不祥事について、半沢頭取らが会見を開きました。会見から元行員の“手口”が見えてきました。
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「かけがえのない財産を安全にお預かりします」
「大切な財産の保管なら私たちにおまかせください」
“安全”とうたう、三菱UFJ銀行の「貸金庫」から、元行員が顧客約60人の現金や貴金属、時価十数億円相当を盗んだ事案。
三菱UFJ銀行 半沢淳一頭取
「元行員による貸金庫からのお客さま資産窃取事案につきまして、信頼・信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすものであると厳粛に受けとめており、心よりおわびを申し上げます」
16日、半沢頭取ら4人が、初めて会見を開きました。
三菱UFJ銀行 半沢淳一頭取
「多大なるご迷惑、ご不安をあたえましたことを非常に重く受けとめています」
不祥事は今年10月、「貸金庫の中身が違っている」という顧客からの相談で発覚しました。
都内の練馬支店と玉川支店の2店舗で、2020年4月から今年10月までの4年半にわたり、元行員が無断で貸金庫の扉を開け、顧客の金品を盗んでいたといいます。
盗んだのは、支店長代理をつとめていた40代の女性です。銀行側の聞き取りに対し、「大変申し訳ないことをした」と事実を認め、すでに懲戒解雇されたといいます。
会見で明らかになったのは、“手口”と“銀行のチェックのずさんさ”、そして“十数億円の行き先”です。まず、手口については…
三菱UFJ銀行 半沢淳一頭取
「行為者は貸金庫の管理責任を担う立場にあり、支店で保管している予備カギを不正に利用してお客さまの貸金庫を無断で開け、現金等のお客さまの資産を窃取しました」
銀行によると、被害があった支店では貸金庫を開ける際、2種類のカギが必要だといいます。銀行で保管するカギと、顧客に渡しているカギ。銀行はもともと、顧客がカギを紛失した場合などに備えて、顧客に渡しているカギのスペアキーを作成。このスペアキーを使って、元行員は顧客の貸金庫を開けたといいます。
そして、4年半隠し通せた“チェックのずさんさ”も明らかになりました。
三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部 向井理人部長
「予備カギについては、お客さまに立ち会っていただいて、専用の封筒に入れてお客さまの印鑑と管理者の印鑑で封かん」
スペアキーは封に入れて割り印を押して保管されているといいます。つまり、封を開けると後からわかってしまうはずですが、元行員は巧妙に封筒を開けて、カギを持ち出したといいます。
──開け閉めの形跡の確認は?
三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部 向井理人部長
「封筒が破封、破れてないかを確認すると書かれている。どのようにそれを確認するのか詳しくなかった」
──割り印の照合や届出印の確認は?
三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部 向井理人部長
「それはしていません」
さらに、十数億円の行き先は…
三菱UFJ銀行 半沢淳一頭取
「投資等に流用しているという供述を得ています」
“私的な投資”と判明。被害が確認できた顧客から補償を始めていて、すでに約3億円の補償を実行したといいます。
今後、再発防止策として貸金庫の予備カギを支店で管理せず、来年1月中に本部での一括保管に変更するとしています。