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【解説】物価高は続く? 円安でさらに加速も…“利上げ”踏み切れない日本の現実

2022年9月22日 20:43
【解説】物価高は続く? 円安でさらに加速も…“利上げ”踏み切れない日本の現実

さまざまなモノの値段が上がり続ける中、来月もまた値上がりするモノがあります。そして、さらなる値上げも懸念されています。

「食品値上げ“年内最多”」
「アメリカの決定 日本に影響」
「物価高はまだ続く?」

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■ペットボトル飲料(500ml) 20円値上げ

帝国データバンクによると、2022年に値上げした食品の品目は8月、初めて2000を超え、9月には2424品目となっていました。

9月は、2424品目が値上げされました。ところが、10月は年内最多となる6532品目の値上げが予定されています。値上げの“波”というより、とんでもない“壁”が待っている状況です。ちなみに、値上げされたすべての品目の平均値上げ率は、14%ということです。

では、10月から、具体的に何が値上がりするのでしょうか。例えば、マヨネーズやハム・ソーセージ、チーズ、ジュース・お茶、回転ずし、ビール、家電など、食べ物だけでなく、私たちの生活に身近なものが次々と値上げされる予定です。

税抜き1皿100円の「100円ずし」が魅力だった回転ずしチェーンでは、「スシロー」は、マグロやサーモンなどを税込み110円から、120円に値上げする予定です。(一部店舗を除く)「くら寿司」は、マグロやサーモンなど約50品目を税込み110円から115円に値上げする予定です。(※一部店舗を除く)

ファミリーレストラン「ガスト」は22日、都市部の店舗では、原料の見直しなどをした上で、看板商品「チーズINハンバーグ」は769円から824円、「日替わりランチ(スープバー付き)」は604円から699円に、それぞれ値上げすると発表しました。(※一部店舗を除く)ガストによると、商品全体の平均では、約5.6%値上げするということです。

さらに、ペットボトルのジュースやお茶も値上げされる予定です。「コカ・コーラ」の500㎖、「サントリー緑茶 伊右衛門」の525㎖、「キリン 午後の紅茶 ストレートティー」500㎖は、すべて20円値上げされる予定です。

■米FRB、大幅利上げを決定 円安に拍車?

原材料価格の高騰や円安などを理由に値上げされることが多いですが、これに拍車をかけるかもしれない、ある決定が22日、なされました。

アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は21日、政策金利の引き上げを決定しました。3回連続で0.75%ずつの大幅な利上げとなります。さらに、FRBは「今後も継続的な引き上げが適切」ともしています。

FRBの決定には、どのような狙いがあるのでしょうか。今、アメリカでは物の値段が上がるインフレが続き、景気が過熱しています。そこで、金利を引き上げることによって、企業が銀行から金を借りづらくなる状況になります。その結果、経済活動を抑制し、物価上昇も抑えていこうということです。

このアメリカの決定が、早速、日本に影響を与えています。金利上昇が続く“ドルが買われ”、低金利政策が採られている“円が売られる”ことで、結果として円安がさらに進んでいます。

■“利上げできない”日本の現実 “ローン”“給与”…影響を懸念

海外から物を仕入れて、何か作ろうとした時に、円安が続いていた場合、当然、値段は高くなります。実際にその傾向が、この数か月続いています。

では、円が売られて円安とならないように「日本も利上げをする」というのが、1つの方法として考えられます。当然、利上げをすると、生活にさまざまな影響も出てきます。

例えば、住宅ローンなどの金利が上がった場合、月々の返済額が増えたり、返済期間が長引いたりする可能性があります。当然、新たにローンを組むハードルも上がります。

企業も同様です。当然、お金を借りて、ビジネスを拡大することには慎重になります。その結果、給与は上がりにくくなり、雇用も減る恐れもあります。

そもそも金利の引き上げは、アメリカのFRBが狙ったように、過熱している景気を冷やすことにつながります。しかし、今の日本が果たして、熱々の好景気で、利上げにも耐えられるくらい十分に給料が上がったかというと、残念ながら決してそこまでではありません。

そんな中で、欧米と同じように金利を一気に引き上げた場合、急速に不景気に陥る可能性があります。そのため、日本はなかなか、利上げには踏み切れないのが現実です。

■止まらぬ円安…でも日銀は「大規模な金融緩和を維持」

日銀は21日から22日まで、金融政策決定会合を開きました。22日昼ごろ、大規模な金融緩和策については、維持することを決めました。つまり、今は利上げをしない、金利を上げないことを明確にした形です。金融緩和策の維持決定を受けて、22日の円相場はさらに円安が進み、一時、約24年ぶりに1ドル=145円台をつけました。

円安が止まらない中、22日午後3時すぎ、日本銀行の黒田東彦総裁が会見を開き、大規模な金融緩和策を維持する理由について次のように述べました。

日本銀行 黒田東彦総裁
「現在は経済を支えて賃金の上昇を伴う形で 、物価安定の目標を持続的に安定的に実現することが必要であって、金融緩和を継続することが適当であると考えています」

また、円安の進行について、黒田総裁は「先行きの不確実性を高め、日本経済にとってマイナスで、望ましくない」との認識を示しました。

     ◇

世界の主要国では利上げが相次ぐ中、日本だけが利上げのカードを使おうにも使えない状況です。しばらくは円安が続き、物価高が私たちの生活をジワジワと苦しめそうです。痛みを伴わずに抜け出す道は、簡単には見いだせそうにありません。

(2022年9月22日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)