“巨大アンモニア基地”が瀬戸内に誕生へ!三菱商事・四国電力などのビッグプロジェクト
「うまくいけば東予・今治は、アンモニアを含めエネルギーを供給する巨大エリアになる」
遠くに穏やかな瀬戸内海を臨む今治市波方町。ここに、三菱商事が100%出資するエネルギー輸入基地「波方ターミナル」があります。
「これまではLPガスのターミナルでしたが、これからは世の中の低炭素・脱炭素などエネルギー転換に資するようなアンモニアの新しいターミナルへと変換する」と高らかに“宣言”した三菱商事の田中格知副社長。
1983年の操業開始からちょうど40年。
波方ターミナルは、次世代エネルギーとして注目されるアンモニアの「ハブターミナル」へ生まれ変わろうとしています。
(県政担当 植田 竜一)
「40歳」の変身…2030年に100万トン
12月8日、愛媛県・中村時広知事が波方ターミナルを訪れました。
「40歳とは思えないほどきれい。あの頃のままだね」
元三菱商事社員の中村知事は、新卒で入社し最初の研修の地が波方ターミナルだったと言います。
四国電力の長井啓介社長とともに中村知事を案内したのは三菱商事の田中副社長。
中村知事と田中副社長は“同期入社”の間柄ですが、2人がこの地を訪れた目的は「研修の地」を懐かしむためでは決してありません。
「こちらの4万5000トンのタンク4基ですが、現在はLPガスが入っています。この内2基または3基をアンモニアの貯蔵に転用します。これを四国電力と弊社などでつくる協議会で検討を進めています」(三菱商事担当者)
燃焼時にCO2を排出しない“ゼロエミッション燃料”であるアンモニア。プロパンやブタンが入るタンクをアンモニアのタンクに転用するプロジェクトの視察に訪れたのです。
波方ターミナルでは海外からLPガスや石油類を輸入し、貯蔵。そして国内外へ供給する基地として機能してきました。それを、「2030年には100万トン規模の」アンモニアを輸入し、国内へ供給する基地へ“変身”させるというのです。
次世代エネルギー“群雄割拠”の戦国時代
現在、瀬戸内エリアに大規模なアンモニア基地はありません。
しかし、水面下では次世代エネルギーの拠点整備を目指す自治体や企業が増加中。“我こそは”と群雄割拠状態、まさに「戦国時代」(プロジェクト関係者)の様相も呈しています。
その流れを後押しするように、経産省は水素やアンモニアの「供給基盤整備事業」として、全国で大規模な拠点3カ所、中規模な拠点5カ所の整備支援のための予算化を来年度目指しているとのこと。
競争の激化も予想されます。
「“新しいタンクや基地を作る”というのは莫大なコストがかかります。ですので、既存のタンクを活用する『転換』というのは、理にかなった方向性ではないかと思っています」(中村知事)
プロジェクトの関係者らは、LPガスからの“転換”という点に波方ターミナルのアドバンテージを見出しています。
マツダ、住友化学、太陽石油…。将来のアンモニアの需要を見込んで、今回のプロジェクトを担う「波方協議会」には三菱商事・四国電力のほかにも多くの企業や自治体が参画しています。
「波方ターミナル」は群雄割拠の時代を生き残れるのか。
“2030年に100万トン”を掲げる三菱商事と四国電力は、「経産省で検討されている支援の活用も視野に入れつつ、鋭意協議を進めたい」としています。