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【独自解説】トランプ氏の野望「アメリカファースト」は日本の中小企業を潰す?格差社会拡大へ…“またトラ”の政策が日本経済に与える恩恵と懸念

2024年11月9日 11:00
【独自解説】トランプ氏の野望「アメリカファースト」は日本の中小企業を潰す?格差社会拡大へ…“またトラ”の政策が日本経済に与える恩恵と懸念
“またトラ”で日本経済に懸念

 アメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が勝利を確実にし、再び大統領に返り咲くことに。“またトラ”で、外交や安全保障などがダイナミックに変わっていくだろうといわれています。「アメリカファースト」を掲げるトランプ氏は、日本などの同盟国にも高い関税を課す方針を示していますが、私たちの生活には一体どんな影響が?『読売テレビ』横須賀ゆきの解説委員の解説です。

■“世界のルール”制定か?イーロン・マスク氏とトランプ氏の蜜月な関係

 今回、選挙戦を通して目立っていたのが、トランプ氏とイーロン・マスク氏の2人。選挙で力を得た2トップです。トランプ氏の勝利宣言の中でも出てきました、「新しいスターが誕生した。それはイーロン・マスクだ」と。実は、開票を待つ間も2人で一緒に話し込んでいて、ビジネスの話かなと思ってしまいます。

 機を見るに敏と言うべきか、マスク氏がCEOを務める『テスラ社』の株価が上がりました。また、マスク氏は宇宙産業や『X』なども持っています。航空宇宙やサイバー空間は、国のルールで規制緩和などがかかってくる部分なので、2人で世界のルールを作っていくのかなという印象を与える一コマです。

■円安が加速し日本でも格差拡大か 日本政府が取るべき対策

 そんな中、「日本でも格差拡大か」と懸念されています。

 まず、トランプ氏はアメリカ国内で今、減税対策を強く打ち出しています。減税することで経済成長させていこうということで、所得税や法人税も下げると公約に掲げています。すると、当然アメリカでたくさん物を買いたいと消費欲が上がり、企業業績が良くなるので賃金も上がり、それに連れて物価も上がります。

 でも、上がり過ぎると、今度は政府が利上げをして、景気を冷まそうとします。それによって、少し前にも起きましたが、ドル買い円売りが加速します。つまり、日米の金利差が拡大していき、円安になります。

 円安が進むと、日本では輸入コストが上昇し、物価も上がります。肉や魚などが値上げされ、生活に逆風が吹きます。

 また、企業でも格差が生まれます。輸出を中心とした大企業は利益が上がりますが、一方で関西に多い中小企業は、仕入れコストの負担が増え、収益が悪化します。その結果、賃金に影響が及ぶ恐れがあるという図式です。

 今、日本政府が取るべき道は、とにかく国内でお金を使ってもらうための策をどうにかして打ち出すことです。すでに危機的局面にあります。

■中国の経済減速が関西企業に影響するワケ 先端企業も拠点の見直し迫られる

 そして、特に関西に影響のあるキーワードは、『中国』です。帝国データバンクによると、中国に進出している関西企業は3000社以上あり、ここにダメージがあります。

 トランプ氏は関税政策として、あらゆる国に高い関税をかけようとしていて、その中でも中国に対しては特に高くかけようとしています。当然、中国はアメリカに対して輸出しにくくなり、物が売れないという現象が起こります。すると、中国は経済が減速し、所得が落ちて、消費も減っていきます。その結果、中国でビジネスをしている小売や外食産業に打撃を与え、関西の企業が影響を受けるということです。

 また、半導体関連などの先端企業にも影響が。自動車や半導体産業用の計測機の製造をしている大阪の企業は、中国・アメリカ・日本に拠点があって、中国で生産してアメリカに売っています。関税が引き上げられると、価格転嫁できずにコストが増える懸念があるということです。そのため、インドにも生産拠点を増やすなど見直しを行っているということで、供給も全体の組み直しが必要になってきます。

 そんな中で、考えてみたい言葉がこちらです。

「いかに仁義道徳が美徳であっても、経済活動を離れては、真の仁義道徳ではない。経済活動もまた、仁義道徳に基づかなければ、決して永続するものではない」

 資本主義の父・渋沢栄一氏の言葉です。要は、道徳があっても経済活動を離れては真の道徳にはならないが、経済活動も道徳に基づかないと長くは続かないということです。今、この時代に、このタイミングで、この経済学の考え方―その舵取りや交渉術も含めて、注目していきたいと思います。(『読売テレビ』横須賀ゆきの解説委員)

(「かんさい情報ネットten.」2024年11月7日放送)

最終更新日:2024年11月9日 11:00
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