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「火山とともに生きてきた」溶岩に襲われた町 共生への思いと対策 アイスランド

2024年6月6日 20:15
「火山とともに生きてきた」溶岩に襲われた町 共生への思いと対策 アイスランド

日本テレビが「地球にいいこと、人にいいこと」を考える『Good For the Planetウィーク』略してグップラ。今回は「火山と共生する町」についてお伝えします。

噴火が続くアイスランドで溶岩に襲われた町があります。暮らしは一変。それでも町にとどまり、火山と共存しようとする住民の思い、そして国の対策を取材しました。

住民
「噴火が始まった!今のうちに避難しよう!」

今年3月、北欧の島国・アイスランド。地表から真っ赤な溶岩が噴き出し、大地を覆うように広がると、道路ものみ込んでいきました。この半年足らずで5回にのぼる噴火が発生しました。

私たちは、溶岩に襲われた町、グリンダビークに向かいました。

後閑駿一記者・NNNグリンダビーク
「噴火して流れ出た溶岩は数軒の家屋をのみ込んで、約3mの高さとなっています。今も周辺には焦げたようなにおいが漂っています」

町のあちこちに黒く固まった溶岩が。家や道路には、地殻変動で大きな亀裂が入っていました。

町の学校は来年までの休校が決まるなど、暮らしを一変させた溶岩の脅威。さらに、町の主要産業にも、大きなダメージが─。

向かった先にあったのは、水が抜けてしまった空の水槽です。

ホッキョクイワナ養殖企業・広報責任者 アリニさん
「(その日地震で)75トンの魚が死んでしまいました」

アイスランドの名産、ホッキョクイワナを育てる養殖施設は、火山活動にともなう地震で、魚を育てる水槽に亀裂が入り、多くの魚を失いました。また、周辺の水質も変化。養殖に適した水を調達するのも一苦労だといいます。

噴火前は4000人ほどが暮らしていましたが、ほとんどの住民は避難しました。

   ◇

ただ、一度は避難したものの町に戻ってきた住民もいます。4人家族のマグニさん一家です。

マグニさん(5月18日)
「先週末に戻ってきたんです」

マグニさんは、いざという時の備えをしながら、住み慣れたこの町で暮らし続けたいと話します。そこには、ある思いがありました。

マグニさん
「私たちは何千年もの間、火山とともに生きてきました。自然の力にはかないませんが、共存することはできると思います。人が安心して暮らせることを示す必要があると思いました」

■火山から命を守る対策1 溶岩を防ぐ巨大な「壁」

実は、火山から命を守り共存するための対策がありました。

記者
「私の身長が約170センチ。それをはるかに超える約10メートルの壁が建設されています」

町を囲うようにつくられたのは、全長7キロほどの巨大な「壁」。この壁が、溶岩が町へ流れ込むのを防いでいるのです。

しかし今年3月の噴火では、壁を乗り越えて溶岩が流れ出る事態も起きました。そこで2つめの壁をつくり、今後さらに多くの溶岩が流れ込んだ場合は、その壁で溶岩の流れを変えて海へと流す計画です。

■火山から命を守る対策2 海水で溶岩をせき止める

そして、その海の水を使って町を守るという独自の対策も。

アイスランド気象庁・サロメさん
「アイスランドでは、以前から溶岩対策に水が役立ってきました」

実は、1973年に起きた大噴火の際にも、海水で冷やすことで溶岩をせき止めました。今後、地元当局は、海水で溶岩を冷やし、町に流れ込まないように誘導する作戦を検討するといいます。

■火山から命を守る対策3 避難ルートの確保

そして、もう一つの対策が避難ルートの確保です。訪ねたのはピザがうりの店。今では町で唯一営業しているレストランです。


「アイスランドで最高のレストランだよ!」

店主 ソルマルさん
「人々が集まる場所として、町を少しでも活気付けたくて店を続けているんです」

この店では、客に安全に食事を楽しんでもらうため、噴火の場所に応じた避難経路を確保しているといいます。

   ◇

火山活動で生み出された手つかずの大自然や、世界最大級の露天風呂ブルーラグーンなど、火山による恵みも多いアイスランド。

火山との共生についてアイスランドの地質学者は…

地質学者 マグヌス教授
「日本も同じですが、火山活動が活発な地域で豊かな生活をおくってきたので、火山とうまく共存していく必要があります。あらゆるケースに備えておくべきです。何かが起きてから決めるのでは遅すぎます」

   ◇

火山と密接にかかわりながら住民の命をどう守っていくのか。アイスランドの取り組みは、日本にとってもヒントになるかもしれません。

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