17世紀を再現した華麗なるベルサイユ宮殿
フランスのベルサイユ宮殿では8月28日、ルイ14世の時代、17世紀を再現した華やかなショーが行われた。そのようすをパリ支局・野尻仁記者が取材した。
世界遺産に登録されているベルサイユ宮殿は、年間600万人が訪れる観光名所で、8月28日、特別なショーが行われた。控室では、ダンスに出演する人たちが衣装に着替えたり、メイクの準備に追われたりしている。プロのバレエ団と演奏家たちによって、ルイ14世の時代、17世紀の宮廷文化を再現した華やかなダンスショーが披露される。バレエ団ダンサーのエリーズさんは「鏡の間で踊るのは、とても感動します。雰囲気と時代が感じられる場所ですから」と語る。また、演奏家のパトリックさんは「私たちは、歴史の中の音楽を当時の楽器で演奏して再現する専門家です。鏡の間で演奏するのはとてもうれしく、栄誉なことです」と話してくれた。
そして宮殿の中で、最も有名な「鏡の間」でショーが始まる。ぜいたくな生活を極めたルイ14世は絶対的な権力を持っていたが、その象徴といわれるベルサイユ宮殿では、優雅なダンスや音楽のうたげが毎日のように繰り広げられていた、といわれている。鏡の間は、貴族たちが、王様に謁見(えっけん)する特別な場所として使われてきた。男性客に感想を聞くと「鏡の間は、世界で最も美しい場所です。そして夕日が沈みかけている時間…すべてが重なり合った素晴らしいひと時でした。300年前にさかのぼったみたいでした」と答えてくれた。また、日本から来た観光客の女性は「素晴らしかったですね。世界が違うというか、とてもよかったと思います」と感動を語った。
ベルサイユ宮殿の庭園には、大小さまざまな噴水が作られている。夜になり、ライトアップされた庭園に続々と客が集まり、午後9時になると、いよいよメーンイベントとなる「噴水と光のショー」が始まる。ベルサイユ宮殿の噴水は、17世紀に工事が行われ、現在も建設当時の水道管が使われている。ルイ14世の時代は、王様が庭園を歩くとそばの噴水が水を吹き出す仕掛けだったといわれている。噴き上がる水の高さは、最大で16メートルにもなる。音楽にあわせて、噴水がまるで生き物のように形を変えていく。噴水ショーの技師ガブリエルさんは「いまご覧になっているような噴水をルイ14世も楽しんでいたんですよ。噴水は重力を使って作動しています。ルイ14世の時代と同じですよ」と教えてくれた。
午後11時になり、いよいよショーはクライマックスを迎える。鮮やかな花火が、夜空を照らす。輝く太陽に例えられ「太陽王」と呼ばれたルイ14世も花火を楽しんでいた、といわれている。ショーを見た客は「夜の庭園は明かりがついているし、昼間と違ってとてもきれいだわ。いつか子供ができたら、その子供と夫と一緒に来たいわ」と話し、また「生まれてから見たものの中で、一番きれいだったわ」とうれしそうに語る客もいて、観客たちの笑顔は絶えない。ベルサイユ宮殿がより華やかに見える特別な1日が終わると、フランスの夏も終わりを告げる。