イスラエルとハマス「停戦合意」 発効目前にイスラエル政府内で「戦闘再開」の“密約”報道
イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意が19日に発効する見通しとなった一方、イスラエルメディアは、ネタニヤフ政権内でパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を再開する動きがあることを報じていて、停戦がどこまで続くのか不透明な情勢が続いています。
■ネタニヤフ首相 停戦を「一時的なもの」と強調
イスラエルとハマスの停戦合意は、イスラエル政府の承認を経て、19日に発効する見通しとなりました。
停戦合意は段階に分かれていて、最初の6週間を第1段階として、ハマス側が拘束している人質33人を解放する一方、イスラエルの刑務所に収容されているパレスチナ人が釈放される取り決めとなっています。
第1段階の間に全ての人質の解放と恒久的な停戦に向けた交渉が行われることになっていますが、イスラエルのネタニヤフ首相は今回の停戦について「一時的なものだ」としています。その上で、全ての人質の解放と恒久的な停戦に向けた交渉が決裂した場合、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を再開する意向を示唆して、強硬姿勢を崩していないことを強調しました。
■強硬姿勢の裏に極右政党の閣僚との“密約”
イスラエルメディアは、この背景にネタニヤフ首相が連立政権を組む極右政党の閣僚の存在があると報じています。極右政党の党首で国家治安相を務めるベングビール氏は、停戦合意に反対して連立政権からの離脱を表明している一方、同じく極右政党のスモトリッチ財務相は停戦合意に反対したものの、連立政権にとどまる見込みです。
スモトリッチ氏の決断の裏には、ネタニヤフ首相とスモトリッチ氏の間での“密約”があったと報じられています。
その“密約”とは、人質の解放が行われた後、ガザ地区での戦闘を再開することを約束したというもの。イスラエル政府は、これまで、ハマス側が拘束している人質の解放とともに「ハマスのせん滅」を戦闘の目標に掲げていて、スモトリッチ氏は停戦合意によって人質が解放されたとしても、戦争の目標を達成するまではガザ地区での戦闘を続けるべきだと強く主張してきました。
連立政権からの離脱をちらつかせていたスモトリッチ氏に対し、ネタニヤフ首相はイスラエル政府での停戦合意の承認を行う閣議の前にスモトリッチ氏と会談を重ね、戦闘を再開することを確約したといいます。スモトリッチ氏は「ガザ地区のハマスのせん滅をはじめとする完全な目標を達成することなく、戦争がいかなる形でも終結することはないと主張し、それを確固たるものにすることができた」と声明を発表していて、ハマスへの強硬姿勢を改めて強調しました。
■「人質の家族」と「ガザ地区内住民」の思いは…
こうした報道を受けて、人質の家族らも複雑な心境で事態を見守っています。今回の停戦合意では、最初の6週間で解放される予定の人質は女性や子ども、女性兵士などが主で、男性の人質は、それ以降の交渉によって解放されることになっているため、男性の人質家族は解放に至る前に、交渉が決裂することへの不安を抱いています。
今もガザ地区に拘束されている男性の人質の家族は「人質が戻ってくるのは喜ばしいことだが、交渉は本来、人質全員の解放を前提とするべきだった」と話します。実際に、一部の人質の家族らの団体は「段階的な人質の解放は、ハマス側を利するだけだ」として、今回の停戦合意に反対を表明しています。
停戦合意で沸き立つガザ地区の住民からも不安の声が。ガザ地区のジャーナリストのオベイドさんは「停戦自体には安堵(あんど)の気持ちだが、条件を見る限り、恒久的な停戦への望みは大きくない。冷静な住民は、この点をとても不安に思っている」とした上で、「ハマスは直ちに全ての人質の解放をするべきで、イスラエル側は全ての人質の解放とともに、恒久的な停戦に合意するべきだ」と双方に呼びかけました。