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米・2人の脱獄囚 23日間の逃走劇

2015年7月17日 17:14
米・2人の脱獄囚 23日間の逃走劇

 アメリカ・ニューヨーク州の刑務所から受刑者が脱獄し1人が射殺され、1人の身柄が確保された事件。2人がどのような逃亡生活を送っていたのか、徐々に明らかになってきた。

 6月28日、デービット・スウェット受刑者がカナダとの国境近くで拘束された。この2日前には、一緒に逃亡していたリチャード・マット受刑者が射殺されており、23日間の逃走に終止符が打たれた。

 事件は6月6日、ニューヨーク州北部のクリントン刑務所で起きた。殺人などの罪でそれぞれ終身刑と禁錮25年の刑で服役していたスウェット受刑者とマット受刑者の2人が脱獄したのだ。2人は隣同士の独居房にいたが、その間の壁に穴を開けて配管の中をはい刑務所から約100メートル離れたマンホールから脱出した。

 彼らの脱獄に協力していたのは、刑務所で働いていたジョイス・ミッチェル容疑者だった。マット受刑者と性的関係を持ったうえ、のこぎりなどの工具をひそかに渡して脱獄を手助けしていた疑いが持たれている。実は、ミッチェル容疑者には夫や子どももいた。夫は妻の犯行動機をこう語る。

 「妻は私が愛していないと思う中で、男らが色目を使ってきた。その結果、取り返しのつかない事になったと」

 ミッチェル容疑者の協力で脱獄に成功した2人だが、刑務所の周囲は森林が広がっている。捜査当局によると、2人は見つかりにくいよう途中で盗んだ迷彩服に着替えたということだ。また、クオモ州知事によると、スウェット受刑者は確保された際に地図や工具、お菓子、虫よけスプレーなどが入ったリュックサックを持っていたということで、はじめから準備していたものか捜査中だ。逃走中はラジオで警察の捜索エリアを確認していたとも供述しているということだ。

 殺人犯が近くにいるかもしれないことに住民の不安は募った。銃を持った男性に話を聞いた。

 「脱獄囚は失うものは何もない。だから私は予防策を講じているんです」

 マット受刑者が射殺された現場の近くには、使われていないキャンピングカーや人の気配のない小屋があちらこちらにあった。地元メディアはスウェット受刑者の供述として、マット受刑者は小屋に侵入すると必ず酒を探して飲んでいたと伝えている。その小屋に警察官が近づいてきて慌てて逃げたこともあったということだ。

 クオモ知事によると、2人は国境を越えてカナダに行こうと協力して逃走を続けていた。しかし、スウェット受刑者より14歳年上のマット受刑者は腰痛を患っていたほか、サイズが合わない靴で足に血豆ができたために動きが遅く、途中から2人は別行動をとるようになったということだ。クオモ知事はこう語る。

 「スウェット受刑者はマット受刑者と、射殺の5日前には別れていました。スウェット受刑者はマット受刑者が足手まといだったのです」

 地域を震撼(しんかん)させた脱獄事件は1人を射殺、1人を確保して幕を閉じた。クリントン刑務所ではミッチェル容疑者のほかにも、職員が受刑者にヘロインを含む違法な差し入れをしていた疑いが持たれている。ニューヨーク州はスウェット受刑者の確保後、所長を含む12人を調査のため停職処分にした。前代未聞の脱獄事件は、刑務所の管理体制も問われる結果となった。