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韓国MERS終息宣言、観光客戻ってくるか

2015年8月7日 16:33
韓国MERS終息宣言、観光客戻ってくるか

 韓国で感染が拡大したMERS。先週、事実上の終息が宣言されたが、韓国政府と企業は大幅に減少した外国人観光客を呼び戻そうと懸命になっている。

 8月4日、韓国・仁川空港に到着したのは、130人にのぼる日本の旅行会社の関係者たち。韓国の航空会社のスタッフが花束を渡して出迎える。MERS(=中東呼吸器症候群)の影響で日本からの観光客が激減したことを受け、航空会社が利用客を呼び戻そうと無料で韓国に招待したものだ。

 大韓航空・日本路線担当者「日本路線の乗客数は6、7月で40%減少し、相当大きな影響を受けました」「韓国は本当に安全だということを直接見て感じてほしいです」

 日本の旅行会社の担当者「市民の方や街の様子が、どのようになっているか見て帰りたいなと」

 韓国で感染が広がったMERS。5月から7月にかけて186人が感染し、このうち36人が死亡した。先月4日以降、新たな感染者は出ておらず、約1万7000人にのぼった隔離対象者も先月末までにゼロとなった。

 黄教安首相「国民はもう安心しても良いというのが医療界と政府の判断です」

 先月28日、黄教安首相は、事実上の終息を宣言したものの、MERSの感染拡大は、韓国の経済に深い爪痕を残している。

 ソウル中心部の繁華街・明洞。街には、にぎわいが戻りつつあるが、外国人観光客の客足は、まだ遠のいたままだという。

 化粧品店の店員「MERSの前は中国人・日本人が多かったけど、今は韓国人ばかりです」

 日本人観光客「親は少し心配してました。『今いくの?』と言われました」

 観光当局によると、6月と7月の2か月間で、外国人観光客は、去年と比べて103万人減り、観光収入は、約1400億円減少した。

 MERSの感染が拡大した原因について、感染が疑われる人を隔離しないなど、初期対応が不十分だったことや、速やかに情報が公開されなかったことが挙げられている。さらに、効率を優先する韓国の病院のシステムも原因のひとつだと指摘されている。

 SBS医療専門記者 チョ・ドンチャン氏「韓国では、低額で質の高い医療を提供するため、診察ができるだけ効率化されています」「狭い空間に多くの患者を密集させ、そこで医療陣が次々に患者を診療しています」

 最も多くの感染者が出たサムスンソウル病院では、後になってMERSに感染していたことが分かった患者が、混雑する応急室に3日間とどまったことで、90人もの院内感染が起きた。感染が広がった応急室には、50台のベッドが並んでいたが、カーテンなどの仕切りはなかった。外来患者の診察を停止するなど、部分的な閉鎖措置をとった病院側は、ベッドを38台に減らして間隔を広げ、仕切りを設置。また、大人数で見舞いに訪れる韓国の習慣が、感染拡大につながったため、応急室の訪問を制限することにした。

 韓国でのMERSの発生から2か月。韓国政府は終息を宣言したものの、政府の初期対応のまずさや病院のずさんな管理体制など、感染症に対する韓国社会の脆弱さが浮き彫りになった。教訓をどのように生かしていくのか、今後問われることになりそうだ。