「女子教育で社会腐敗」繰り返される過激発言 タリバン“新”高等教育相就任で女子学生らの恐れは現実に…
先月、アフガニスタン全土で大学の女子教育を停止したタリバン。「女子教育で社会が腐敗」などと過激発言を繰り返す新大臣が主導したとされる。“反女子教育”の保守強硬派が大学を管轄する大臣に任命され、女子学生を排除するという展開に衝撃が広がっている。
■大学の女子教育停止 その理由は…
先月、アフガニスタンのタリバン暫定政権は突如、全土の大学に女子教育の停止を命令した。アフガンでは去年2月までに“男女別学”を条件に、全ての大学で女子の通学が認められていた。
いったいなぜ、このような決定に至ったのか。暫定政権で大学を管轄する高等教育省のニダ・モハンマド・ナディム大臣は先月22日、国営テレビに出演し、次のように正当化した。
タリバン暫定政権 ナディム高等教育大臣
「大学の女子教育をめぐっては、イスラム法に反するさまざまな問題があった。まず、地方の女子学生らがマフラム(男性親族)の付き添いなしに大学に来るなど遠出をしたことや、女子寮で暮らしていたこと。そして、ヒジャブ(髪を覆うスカーフ)をきちんと身につけていなかったことも問題だ。女子学生らは結婚式に出席するような服装で大学に来ていた」
「また、ほとんどの大学で男女のクラス分けがなされていなかった。さらに、工学や農業分野など女性にふさわしくないカリキュラムもあった。私たちは女子教育には反対しているが、女性の存在を否定しているわけでも、アフガンの発展に反対しているわけでもない。国際社会には私たちの内政に干渉しないよう求める」
■“反女子教育”大臣の物議を醸した発言の数々
実はこのナディム氏、去年10月に暫定政権の高等教育大臣に任命されたばかりだ。就任した最初の週、いきなり暫定政権の内閣に対し、大学における女子教育の停止を提案したと伝えられている。
アメリカ政府系メディア「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」などによると、ナディム氏はもともとタリバン内部で女子教育に批判的な保守強硬派として知られていたという。その発言は、物議を醸してきた。
“女子教育は反イスラム的で、アフガンの価値観に反する”
“女子教育の推進が、社会の腐敗とわいせつさにつながった”
“男性が勉強して働けるなら、女性の教育や労働は必要ない”
また、何の経験も資格もないタリバン構成員を大学の職員や講師として送り込み、現場は混乱したという。ナディム氏はタリバンの構成員が大学に入学したり、職員や講師として勤務したりする際には「試験ではなく、起爆した爆弾の数によって、その資格が評価されるべきだ」と演説したとも伝えられている。
■“反女子教育”大臣 任命の背景は…
いったいなぜ、このような人物が高等教育大臣に任命されたのか。ナディム氏は聖職者出身で、タリバン復権後はナンガルハル州知事、カブール州知事などを歴任してきた。タリバンの最高指導者アクンザダ師に近いとされる。
大学の女子教育を再開した前任の大臣が保守強硬派を怒らせ、その首をすげ替える形でアクンザダ師が“反女子教育”のナディム氏を任命したとみられている。この人事の時点ですでに、大学の女子教育がいずれ停止されるのではないかとの懸念は広がっていた。
タリバン内部でも、女子教育をめぐっては賛成と反対で意見が対立しているのが現状だ。ナディム氏の人事からは、タリバン内で女性の権利に否定的な保守強硬派の影響力が拡大している現状が見てとれる。
■大学“最後”の日 女子学生たちは…
こうした現実に、女子学生たちはいま、何を思うのか。タリバンによる大学の女子教育停止の決定は、学期最終日の前日に通知された。最終日には試験や卒業論文の提出などが予定されていたため、この日、各地の大学は大混乱に陥ったという。カブール大学に通う2人の女子学生が、NNNの取材に答えてくれた。
カブール大学2年の女子学生(22)
「最初に発表を聞いたときは、ウソだと思った。でも、翌日、試験のために大学に向かうと門が閉まっていて、タリバンの戦闘員がいたるところでパトロールをしていた。彼らは女子がキャンパスに入ることを許さなかった。また、何人もの女子学生が暴行を受けた。私たちは混乱し、何人かの友達は泣いていた。私は1時間ほど大学の外で様子を見ていたが、ほかの学生が暴行を受けたのを見て、諦めて家に帰った。タリバンは女性の権利をどんどん制限している。いまは公衆浴場にも行けなくなってしまった。私たち女性の未来がどうなってしまうのか、予想がつかない。もしかしたら、外を歩くことさえ許されない日が来るかもしれない」
カブール大学4年の女子学生(22)
「もともと発表の翌日には卒業論文を提出しに大学に行くつもりだった。発表を受けて学部長に連絡したが、『何が起きているのか分からない』と言ったので、直接、大学に行くことにした。大学の門の前には何人もの女子学生がいて、『タリバンが中に入れてくれない』と言っていた。私は何とか中に入れてもらったが、タリバンの戦闘員からは『きょうが大学に入れる最後の日だ。あすはもう入れない』と言われた。卒業論文は提出できたが、書類の手続きなども残っていて学士号がもらえるのか分からない。今後、女性にどのような制限が課されるのか予想がつかない。働けなくなってしまうことが一番の心配だ」