高齢化進むタイ 注目される“日本式介護”
タイでは今、急速なペースで高齢化が進んでいる。そんな中、介護の現場では、高齢化先進国である日本のノウハウや日本式の介護施設の導入が進んでいる。
■将来に不安抱える高齢者も
タイ・アユタヤで、反射神経を鍛えるゲームを楽しむお年寄りたち。よく見ると、学生のような制服を着ている。ここは、高齢者だけを対象にした学校だ。
学校は地元の自治体が運営し、授業料などは全て無料。こうした取り組みの背景にあるのは、タイで急速に進む高齢化だ。年金や介護保険のような公的支援は十分ではなく、厳しい生活を強いられている高齢者もいる。
タイ東北部の村で暮らす91歳のトンチャンさんは、目が見えず歩くこともできない。70歳の妹、ブンピアンさんが世話をしているが、彼女自身も目を患っていて、将来への不安を抱えていた。
ブンピアンさん「私たち2人でこの先どうやって生きていけばよいのでしょうか」
■日本式介護で状況打開目指して
こうした状況を打開し、高齢者に健康を取り戻してもらおうと、日本式の介護を取り入れる動きも出てきている。バンコク近郊のデイケアセンターでは、日本政府の協力で地域のボランティアスタッフが日本式の介護を学び、高齢者に無料でリハビリなどのケアを提供している。
日本式の介護は、高齢者ができる限り自立して生活できるようサポートすることを重視しているという。
さらに、バンコクにはタイで初めてとなる、日本式の有料老人ホームも進出している。日本と同様、高齢者の飲み込む力に応じて食事の柔らかさを変え、なるべく自力で食べられるようにサポートしている。
また、日本式介護の技術教育にも力を入れている。インターネットのビデオ通話を通じて、介護士が日本の専門家からリハビリの方法を学んでいた。この日、タイ人介護士のマリサさんが練習していたのは、関節の可動域を広げるトレーニングなどができる器具の使い方だ。
マリサさん「タイでは学んだことがないことを教えてもらえて、お年寄りの役に立てるのはうれしいです」
■「自分の親を捨てるのか」
一見、高齢化が進むタイのニーズに合っているかに見える日本式の老人ホーム。しかし、定着するにはハードルがある。
利用者の家族「『自分の親を捨てるのか』と親戚から罵られました」
タイでは“高齢者の面倒は家族で見るのが当たり前”という考えが根強くある。親を老人ホームに預けることへの風当たりは強く、親戚に秘密にしている家族もいる。
タイで老人ホームを運営するタイリエイの木本亮取締役社長によると、「少子高齢化が進む中で、家族や身内で介護するのがこれから難しくなってくるであろうと考えている。(老人ホームなどの)ニーズは増えてくると思う」とのことだ。
急速に増え続ける高齢者をどう支えていくか。日本の支援や介護の手法を取り入れつつ、タイの社会に合った制度作りが求められている。