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北のパレードにICBMなく 市民に変化も

2018年9月10日 21:21

建国70年を祝う北朝鮮の軍事パレードでは弾道ミサイルが公開されなかったほか、アメリカにむけた激しい批判はなかった。アメリカへの配慮が指摘される中、北朝鮮の市民の認識にも変化が現れているようだ。

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9日、平壌の中心にあるメーデースタジアム。15万人収容のスタジアムは満員となっていた。そこに現れたのが金正恩委員長。鑑賞したのはマスゲーム。一糸乱れぬ連携で巨大なイラストやスローガンが次々と描かれる。ドローンやプロジェクションマッピングを使っての演出も。しかし、「お約束」のアメリカにむけた攻撃的なメッセージや、核・ミサイルについてのスローガンはなかった。

9日の軍事パレードでも、戦車や多連装ロケット砲などは登場したが、ICBM(大陸間弾道ミサイル)は出てこなかった模様。今回は、登場した兵器に大きな変化があった。今年2月8日のパレードでは、日本の上空を通過した「火星12型」、そして、アメリカを射程に収めるICBM「火星15型」が登場。

金正恩委員長「閲兵式は世界的な強国へと発展した強大な国の姿を誇示することになるだろう」

しかし、9日のパレードではICBMを含む全ての弾道ミサイルが公開されなかったほか、金正恩委員長の演説もなかった。変化の背景には何があるのだろうか?

北朝鮮情勢に詳しい早稲田大学大学院・李鍾元教授「米朝の対話が進んでいることを考えて、内容が非常に抑制的になった。非常にアメリカを意識した、少なくとも米朝の対話が進んでいるので、それを配慮したことが一貫している」

反米集会の登壇者(去年9月、平壌)「トランプの狂った姿は尊厳高いわが共和国(北朝鮮)に対する絶対許せない冒とくであり、露骨な宣戦布告だ!」

北朝鮮がミサイル発射を繰り返していた去年、トランプ大統領が「小さなロケットマン」と揶揄すると、金委員長は「狂った老いぼれ」とやり返した。当時、私たちを案内した北朝鮮のガイドはトランプ大統領への激しい怒りをあらわにしていた。

北朝鮮のガイド(去年10月)「私がトランプの前に立っていたら、打ち倒す決心ばかりですよ」

いま、北朝鮮の市民は――

北朝鮮市民「(Q:金委員長とトランプ大統領が握手したでしょう。感想は?)その場面は本当に興奮しました。でも、わが敬愛する元帥様の姿を見て、我々こそが誇らしい人民だと思いました」

アメリカに対する認識は変化しているようだ。

軍事パレードが抑制的だったことについて、トランプ大統領は9日、ツイッターで「金委員長ありがとう」と投稿し、北朝鮮からの大きな、そしてとても前向きな意思表示だと評価した。

北朝鮮の一連のメッセージによって停滞するアメリカとの非核化交渉は再び動き出すのか?来週18日には今年3回目の南北首脳会談が平壌で行われる。