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“キャラバン”で再注目…「国境の壁」は今

2018年11月6日 10:43

アメリカ・トランプ大統領への評価が問われる中間選挙が、6日に迫った。トランプ大統領の看板公約といえば、メキシコとの国境沿いの「壁」の建設。今、その「壁」が、アメリカを目指すある集団の存在によって、再び注目されている。

◆トランプ大統領「侵略だ」、“キャラバン”とは?

中間選挙を目前に、各地で精力的に演説を行うトランプ大統領。そこでやり玉にあげていたのは──

トランプ大統領(アリゾナ州、先月19日)「あの集団には“悪党”が紛れ込んでいる!“乱暴なやつら”が紛れ込んでいる!」

トランプ大統領(フロリダ州、今月3日)「“キャラバン”が押し寄せている。そんなこと我々は望んでいない」

トランプ大統領がアメリカへの「侵略だ」などと激しく批判している“キャラバン”とは、中米から北上し、アメリカへの移住を目指す人々のことだ。移住の手段については、亡命申請など、これから検討が行われる。

◆“キャラバン”はなぜアメリカを目指す?

今月3日、メキシコ南部の道路を大勢の“キャラバン”が埋め尽くしていた。

記者「アメリカを目指しているキャラバンと歩いている。メンバーは若い人たちが中心だが、小さな子供を連れた人たちも多く見られる」

先月中旬以降、中米・ホンジュラスなどから移住希望者が続々と出発。5000人以上にまでふくれあがった(メキシコ政府発表)。

“キャラバン”参加者「アメリカは、すべての人の夢。子供にホンジュラスより良い教育を受けさせられるわ」

人々は、治安や労働面などよりよい暮らしを求め、アメリカを目指す。しかし、トランプ大統領は、メキシコとの国境に5200人規模の兵士を派遣するなど“キャラバン”を入国させまいとしている。国境警備を強化するトランプ大統領。その対策の要ともいえる公約が、「国境の壁」の建設だ。

大統領の支持者は、「壁を築け!」と叫ぶ。

トランプ大統領の支持者「国境から7マイル(約11キロ)の所に住んでいるから、壁が欲しい」「私たちは安全に暮らしたいの」

◆メキシコ国境の壁の建設は今…

大統領選挙から2年、メキシコ国境の壁の建設はどこまで進んでいるのだろうか。

メキシコと国境を接するカリフォルニア州で、許可を得て、立ち入りが規制されている国境沿いへ入った。国境警備隊に同行させてもらうと、メキシコとの国境にあったのは、「そびえたつ壁」ではなく、さびたバリケード。

このバリケードは、車による国境の突破を防ぐためのもの。車両の侵入は食い止めることができるが、人の侵入を想定したものではない。

同行取材を続けていると、突然、警備隊が慌ただしくなった。

国境警備隊「おい、北側で誰かいたか?12検問所のあたりだ」

地面に、何者かが侵入したとみられる痕跡が見つかったのだ。さらに国境沿いを進むと、別の隊員らが、不法入国の疑いがある男らを逮捕していた。

国境警備隊「あなたたちは家族?それとも親戚?兄弟?」

国境のフェンスを乗り越えてきたという男たちは、母国での政治的迫害から逃れるため、亡命を試みたという。1日あたりの逮捕者は、取材した区域だけでも約50人。徒歩でバリケードを通り抜ける不法移民は後を絶たないという。

◆初めての「壁」完成…中間選挙で公約は

先月、トランプ政権になって初めての壁が完成。高さは約9メートルで、付近に監視カメラを設置するなどの徹底ぶり。しかし、そうした壁があるのはアメリカとメキシコの国境の総距離約3000キロのうち、わずか3.2キロにとどまっている。

さらに、建設には巨額の費用がかかることから、反対する声も。

『国境の壁』に反対する女性「(“壁”の建設は)とてつもないお金の無駄づかいよ。移民の入国を認めないなんて、攻撃的すぎるわ」

大統領の身内の共和党にも慎重な意見があり、予算確保のめどが立っていないのが現状。公約はどうなるのか。中間選挙は、日本時間の6日夜に投票が始まる。