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現実味増す“合意なき離脱”日系企業は…

2019年1月16日 18:45

EU(=ヨーロッパ連合)からの離脱条件などを定めた「離脱協定案」がイギリス議会で採決されたが、歴史的な大差で否決された。最悪のシナリオである「合意なき離脱」がより現実味を増す中、現地の日系企業にも影響が出始めている。

イギリスの今後をうらなう重要な一日。議会の前は騒然としていた。

EU離脱派「いま離脱しよう!いま離脱しよう!」

EU残留派「EU離脱は詐欺だ!EU離脱はクズだ!」

そして議会では、採決の前にメイ首相が、EUとの間で合意した離脱協定案について支持を訴えた。

イギリス・メイ首相「私たちには国民の民主的な決断を実現させる義務がある」

しかし、離脱協定案について、議会はダブルスコアとなる230票の歴史的大差で「ノー」を突きつけた。

議長「静粛に!賛成202!反対432!協定案は否決された!」

最大の懸案は、EU加盟国のアイルランドと、イギリス領・北アイルランドとの国境管理。離脱後も当面EUのルールに従う可能性が残ることに強硬離脱派が反発し、与党・保守党から118人もの造反が出た。

離脱期限の3月29日までおよそ2か月半。着地点の見えない展開の中、市民の声も様々だ。

市民「離脱期限を延長して他の可能性を検討すべきだ」

市民「総選挙を行うべき。それが一番わかりやすい」

そんな中、最も懸念されるのが、何の取り決めもないままEUから離脱する「合意なき離脱」。社会や経済が大混乱に陥ることは避けられない。

この最悪のシナリオが現実味を帯びてきたことで、現地の日系企業も慌ただしさを増している。

日本食を輸出している企業は、EU各国の取引先からの注文急増に対応が追いつかないという。

タザキフーズ・古川周広社長「お客さんもパニックになっていまして、先週あたりから多めに早めに(在庫を)買いたいという注文が殺到しています。ひどいところは半年分(注文したい)と言ってきたので、半年分はちょっと無理ですという話をしています」

「合意なき離脱」による混乱を警戒して、商品を早めに確保しようとしている。

専門家も十分な準備は難しいとの見方を示している。

大和総研ロンドンリサーチセンター長・菅野泰夫シニアエコノミスト「具体的な対応を今すぐできるメーカーはおそらくほとんどなくて、急きょ2か月間で対応を求められてしまう状態」

ホンダも部品調達が遅れる事態を想定し、イギリス南部にある工場の生産を一時的に止める計画を発表。離脱期限直後の4月に合計6日間、生産を停止する日を設けるとしている。

日本の経済団体も、日本企業への影響に懸念を示した。

経済同友会・小林喜光代表幹事「確率としては“合意なき離脱”が相当高くなってきたかと。ということは最悪の状況も想定しながら手を打っていく。最悪にならなければこんなよいことはない」

イギリス議会では16日、内閣不信任案の採決が行われる。これを乗り切っても、メイ首相は21日までに「代替案」を提出することが求められる。

混迷を極めるEU離脱の行方。タイムリミットは刻一刻と迫っている。