断食月“ラマダン”の違った一面 エジプト
中東諸国などのイスラム圏は今、断食月「ラマダン」を迎えている。断食と聞くと、苦しいイメージだが、実際には少し違った一面もあった。
ラマダンまっただ中の中東・エジプト。国民の大半を占めるイスラム教徒は約4週間、原則として、日の出から日没まで食べ物や飲み物を口にできない。
高齢の男性「喉が渇くことが年寄りには一番つらいよ」
飲食店はシャッターを下ろし、閑散としていた。断食は貧しい人の苦しみや食べ物のありがたみを知ることなどが本来の目的だが、最高気温が40℃に達する日もある中、1日15時間あまりの断食は容易なことではない。
若い女性「礼拝したりコーランを読んだり、あえて忙しくして、疲れを忘れるようにしているの」
一方で、この時期、よく売れるモノがある。それは、イスラム教の聖典・コーラン。
コーラン専門店の店長「100冊や200冊以上まとめ買いして、贈り物として配る人もいます」
イスラム教徒にとって、もっとも神聖な月とされるラマダン。断食に耐えながら、信仰心はいや応なく高まる。
そして、近づく日没。この頃になると、街にも活気が戻る。レストランには大勢の人が詰めかけ、「イフタール」と呼ばれる日没後の食事を楽しむ。断食を終えた安堵(あんど)感からか、食事をする人たちは一様に明るい表情をしていた。
食事をする男性「ラマダン中の食事は特においしい」
そして、ここでも、信仰心の高まりを感じる光景に出会った。街の一角に設置されたテーブルで、「イフタール」をとる人たち。実は、食事代は無料。会社の経営者など社会的地位の高い人たちが匿名で貧しい人や道行く人に食事を振る舞う。“神からの食事”と言われる慣習だ。
“神からの食事”提供者「断食した人に食事を振る舞うことは神や預言者が勧めていて、イスラム教の精神そのものだ」「私もとても幸せな気分になる」
夜になると、イルミネーションに彩られた街に大勢の人が繰り出し、昼間は閑散としていた繁華街もにぎわう。断食を終えた人たちが深夜や未明まで家族や友人らと思い思いに過ごす。
繁華街で過ごす男性「イスラム教徒にとって、ラマダンは祭りのようなものだよ」
断食の苦しさと、夜の楽しさ。その両方がラマダンなのだ。
しかし近年、ラマダン期間中は、信仰心の高まりから、過激派によるテロ事件が増える傾向にある。
繁華街で過ごす男性「ラマダンの期間は(テロではなく)みんなを愛するべきだ」
テロとは無縁の、心穏やかに過ごせるラマダンはいつ戻ってくるのだろうか。