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ウクライナ側“市民2万人死亡”焦土と化すマリウポリ 記録・発信し続けた1台のカメラ

2022年5月9日 18:25
ウクライナ側“市民2万人死亡”焦土と化すマリウポリ 記録・発信し続けた1台のカメラ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、最大の激戦地となったのが、南東部のマリウポリです。ウクライナ側は「2万人もの市民が亡くなった」としています。市民には何が起きていたのか、1台のカメラが記録し、発信し続けていました。(※遺体が映っている映像を加工しています)

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2月24日、マリウポリでは、シェルターに駆け込む親子の姿が見られました。街は、軍事侵攻の初日から標的になっていました。

避難した女の子
「死にたくない。早く終わってほしい」

こうした街の様子を撮影していたのは、AP通信のビデオジャーナリスト、ムスティスラウ・チェルノフ記者です。同僚のカメラマン、エフゲニー・マロレツカ氏とともに国際的なメディアとして唯一、街にとどまり続けました。

チェルノフ記者(「20 days in Mariupol」より)
「(街では)『戦争が起きる』と信じていた人はほとんどいなかった。多くの人がその過ちに気づいた時には、もう遅かった」

侵攻4日目の2月27日、臨時のシェルターに避難者たちが集まっていましたが、この頃、人々は「事態は収束する」と期待していました。

避難している女性
「(和平交渉の)希望はあります。みんな平和を望んでいますし、市民が殺されないよう合意できると期待しています」

しかし、この時、すでに街はロシア軍に包囲され、無差別な砲撃が始まりました。

チェルノフ記者(「20 days in Mariupol」より)
「死はすぐにやってきた。2月27日、砲弾の破片があたった女の子を医師が助けようとしていた」

医師
「この映像をプーチンのクソ野郎に見せてくれ! この子の目を、医師たちの涙を!」

「市民は標的にしていない」とロシア国防省が主張していた時、子どもたちの命は次々に奪われていました。

侵攻8日目の3月3日、サッカーをしていた16歳の少年は、至近距離で砲弾が爆発しました。その翌日も、頭に砲弾の破片を受けたのは、生後18か月の男の子でした。

母親
「助けられなかったの? どうして? どうして…」

街では、ロシア軍によって電気や水の供給が断たれていきます。さらに、ネットの接続もできなくなり、情報が遮断されました。

ウクライナ兵
「水は女性や子どものためだ。男たちは自力で探すんだ!」

ウクライナ側は「1日50~100個の爆弾が落とされた」としています。市内の8割が破壊され、マリウポリは焦土と化しました。

侵攻14日目の3月9日、産科・小児科病院が空爆され、その映像が世界に流れました。非難をあびたロシア政府は「妊婦はこの施設にいない。(映像・写真は)フェイクだ」と主張しましたが、2日後、チェルノフ記者らのカメラは、この空爆を生き延びた1人の妊婦の出産をとらえていました。爆発音が響く中、命が生まれた一方で、担架で運ばれた別の女性は亡くなり、おなかの赤ちゃんも助かりませんでした。

チェルノフ記者(「20 days in Mariupol」より)
「破壊された建物や、子どもの死体の写真が発信されなければ、ロシア軍はなんだってやれる。だからこそ、世界に私たちが見たものを発信したんだ」

    ◇

物流の拠点でもあったこのマリウポリは、ロシア側が8年前から制圧を狙いながら、ウクライナ側が守り続けてきた因縁の街でもありました。

ウクライナ側は、「マリウポリでの民間人の死者は2万人にのぼり、大勢の市民の遺体がロシア軍によって焼却されている」としています。この街の人々が受けた被害の全容はいまだ明らかになっていません。