SDGs実現に向けて私たちができること
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「SDGs首脳級会合 初開催」。国連広報センター所長の根本かおるさん、鎌倉市スマートシティ・SDGs担当参与の加治慶光さんに話を聞いた。
アメリカ・ニューヨークの国連本部でSDGs(=持続可能な開発目標)をテーマに各国の首脳が集まる「SDGサミット2019」が9月24日、25日の2日間、はじめて開催された。会議で採択された「SDGサミット政治宣言」では2030年の目標達成に向けて、努力を加速することを誓った。
――根本さん、加治さんにご意見をうかがいますが、まずは根本さん、この現状はどうなっているのでしょうか。
世界の現状でお話をさせていただきますと、色々な取り組みが行われていますが十分ではありません。このままではSDGs達成の目途(めど)が立っていません。ですので、よりスピードアップ、スケールアップすることが必要です。これがキーメッセージだと思います。
2020年はSDGs採択から5年、最終年まで10年しかないというなかで、これからSDGs達成のための行動を結集してやっていこうということで、行動の10年というものを打ち立てて、世界中で政府、自治体、企業、個人あらゆるレベルでその努力を結集していくという取り組みをはじめていくことになります。
――これまでの4年間を見てみると、2030年までに目標を達成するのは少し難しいかなというところでしょうか。
一番、懸念があるのは気候変動ですね。今のままでいくと、契約国が示している削減目標を足し込んでも、今世紀末には3度の気温上昇となってしまいます。パリ協定では2度未満、可能な限り1.5度未満をと呼び掛けています。
科学者が発表した1.5度報告書によりますと、2度と1.5度というと0.5度の違いしかありませんが、その影響というのは非常に大きな違いがあるといいます。
何とか1.5度未満に抑えることができれば、この地球を次の世代につなげていくことができる余地が広がってくるということです。ですので何が何でも、1.5度未満に抑えるべきであるというのが世界のメッセージなんです。
――加治さんはどう感じられていますか。
先ほど申し上げましたが、民間レベルでもあるイベントでは7000人が集まったり、地方自治体レベルでもSDGs未来都市というものが政府のリーダーシップで採用されて60の地方自治体に広がっていっています。
いまの根本さんのお話をうかがうと、ますます急いでいくことが重要だと思いました。鎌倉市でも大きな災害に見舞われまして、被災者の方も大変な思いをされました。一刻も早く、根本的な対応を人類全体でしなければいけないんだなと感じました。
――では、これから私たちはどうしていけばいいのだろうということで、お二人にフリップに意見を書いていただきました。
根本さん「自分事化して、暮らしの中で実践を」
加治さん「よいことはまねしよう」
――これはどういうことでしょうか、まずは根本さんからお願いします。
気候行動も含めて、SDGsの取り組みをより広げていくには、私たち個人の暮らしのなかでも取り組めることがたくさんあるということに気づいていただいて、それを実践して広げていく、そういうことが必要だと思います。
例えば、暮らしのなかでできる気候行動としては、公共交通機関を使うこともそのひとつですし、食品ロスを減らす、それからファストファッションに走りがちですが、いいものを長く着て捨てる洋服を減らしていく、そういう取り組みも気候行動のひとつなんです。そういったことに気づいていただいて、どんどん広げていっていただくことが大切かなと思います。
――加治さんからもお願いいたします。
根本さんのご指摘通りでスピードアップするためには、一人一人がばらばらにやっていくのではなく、よいアイデアがあったらどんどんまねしてやってみるというのが重要だと思います。
今までは、人のまねをしないとか、差別化するとかそういったことに縛られていました。しかし、いまはオープンイノベーションの時代でもありますし、どんどんいいアイデアをみんなでまねして拡大再生産していくことが重要だなと思いました。
――では、なにか魅力的な活動だなと思ったことは、どんどんまねして実践していくことが重要だということですね。
自分事化するということですが、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが、気候変動に関して非常に強いメッセージを発信しました。そしてそれに呼応するようなかたちで、世界で若者たちが立ち上がっています。
その動きは日本にも広がってきていて、この9月20日のグローバル気候マーチでは4000人の若者が日本でも集まってマーチしました。
先ほど、加治さんがおっしゃられた台風被害や、昨年西日本を襲った水害、これも気候変動がなければ、ここまでの災害にはならなかったであろうということを科学者たちはいっています。
気候変動のことに関して、もっと危機感を強めて科学者たちも緊急メッセージを発して、政治家たちに大胆なアクションをとってもらうよう促しています。
■根本かおるさんプロフィル
テレビ局で報道記者として勤務後、米コロンビア大学大学院へ留学。その後、国連難民高等弁務官事務所にて15年間、難民支援活動に従事。フリージャーナリストとしての活動を経て、2013年から国連広報センターの所長を務めている。
■加治慶光さんプロフィル
マーケターとして、首相官邸では、国際広報室参事官として日本の広報、民間企業では、働き方改革・SDGs統合プログラムの推進を歴任。2019年より鎌倉市の参与を務めている。
【the SOCIAL opinionsより】