銃殺され焼かれた遺体は何を示す? 「外に出るとロシア軍のスナイパーが狙ってくる」“恐怖に支配された街”ブチャ【佐藤和孝さん現地取材】
ウクライナの首都キーウ近郊のブチャで民間人とされる遺体が多数見つかっています。ゼレンスキー大統領は5日、国連の安全保障理事会で演説し、「第二次世界大戦以来、最もひどい戦争犯罪だ」とロシアを強く非難しました。
現在ウクライナの首都・キーウにいるジャーナリストの佐藤和孝さんが、ブチャを取材しました。現地の状況を伝えてもらいます。
──多数の民間人の遺体が見つかったブチャの状況について教えてください。
ブチャはキーウのすぐそばにある街ですが、ロシア軍に占拠され、しばらく前に解放されたということで、戦闘の跡も非常に激しかったですし、街にはほとんど人が歩いていないという、非常に凄惨な状況でした。
その中で遺体が発見された。それは僕たちが取材した前日の夜に発見されたご遺体なんですが、女性4人、男性5人が銃殺されて焼かれていた現場でした。
──直接目にして、どのようなことを考えられましたか?
とにかく残酷、残虐。残虐非道と。とても正視には耐えられない。我々はそれを記録して伝えるというのは仕事ですから、しっかりと撮影はしたんですけれども。
これを誰がやったのかということ自体は、まだ捜査中でわかりません。ただ警察関係者は、ロシア軍がこの行為を行ったということを断言していました。ただ、その家族の名前やいつどこでなど詳細に関しては捜査中で、今後、司法解剖なども含めて色んなことがわかるだろうということを言っていました。
──焼かれた遺体があったということですが、どういった意味を持つのでしょうか?
警察当局は、殺害してそれを隠すために焼却、証拠隠滅を図ったんだろうということは言っていました。
つまり、もしこれがロシア軍の犯行であったとしたならば、これは戦争犯罪であるわけだし、やった本人たちも、これは自分たちの犯罪行為だということを認識していたからこそ遺体を隠滅したんだろうと考えます。
──ロシア側はこれを一貫して「フェイクだ」と主張し(ウクライナと)お互いに反対意見を述べあっていますが、直接現場を見た佐藤さんだからこそ伝えられることはあるでしょうか?
基本的に民間人だったということですね。ブチャに関しても、僕たちが目撃した場所だけではなくて、映像等々で伝えられた、ご遺体が道路に散乱しているとか集団墓地に埋葬されていたとか、そういった状況ですので、占領下で非常に残虐なことが行われたのではないかと、推測ですが、そういうことはあります。
今後、司法解剖などでますます戦争犯罪が明るみに出てくるものと思われますし、これに関してはウクライナ当局だけの捜査ではなく、国際機関を含めた第三者機関などを設置して捜査・検証していくべきものだと思います。
──ブチャに住む人と話をしたということですが、住民の皆さんはロシア軍の行動、現状についてどんなことを語っていましたか?
恐怖に支配されていたということは、皆さんが口々におっしゃっていました。ロシア軍の戦車の音、銃撃の音、砲撃の音、また(ロシア軍が)家々を捜索して回る時に、自分たちのところに足音が近づいてきたら、どこかに必死になって隠れる。そういった生活を余儀なくされていた。
また占領されていますから、なかなか逃げるにも逃げられない。外に出たらスナイパーが狙ってくる。そういった恐怖の中で1か月あまりを生活されていたということをおっしゃっていました。
またこの日が1か月間占領された中で初めて援助品が届いたということで、パンを手にして非常に安心し、喜んでおられる姿を目にしました。