ヘリも登場!“豪快”アメリカ大統領選
来年に迫ったアメリカ大統領選挙。アメリカは、大統領選もビッグサイズだ。日本テレビ・国際部の森美華記者が解説する。
――来年に迫ったアメリカ大統領選挙について解説してもらいます。どんな切り口から見ていくんでしょう?
まず、「選挙」というとどんなイメージがありますか?
――候補者が駅前で街頭演説していたり、選挙カーで町中を回っているのを見ると、選挙だなと感じますね。
そうですよね。では、アメリカの大統領選挙はどんなイメージですか?
――テレビで見て印象的なのは、大きな会場で行われる、集会ですかね。たくさんの人が集まっていて、日本の選挙と比べると、華やかなイメージがあります。
そうですよね。アメリカ国内だけでなく、世界中に大きな影響を及ぼす「アメリカ大統領選挙」は莫大な費用がかかっていて、日本の選挙と比べてもかなり派手なんです。
◇
天井から降り注ぐ、たくさんの風船。巨大なステージに立つのはトランプ氏。これは2016年に開かれた、アメリカの共和党大会の様子です。
大きなアリーナを借り切り、集まった約5万人の支持者が、当時のトランプ候補に声援を送りました。地方での集会には、プライベートの飛行機やヘリコプターで駆けつける、豪快な演出。
アメリカメディアによると、前回の大統領選でトランプ陣営が使った選挙費用は日本円で約700億円。一方民主党は約1300億円を投入。党大会では花火が噴き上がり、風船と紙吹雪が、会場を埋め尽くしました。
グッズの販売や看板広告、ネットでの動画配信など、大統領選のPR手法は様々。候補者が、レストランなど庶民的な場所を回り、親しみやすさをアピールしたり、ボランティアスタッフを集めて、有権者に電話をかけ、投票を呼びかけたり、直接自宅を訪ねて支持を訴える、草の根的な活動も。
来年の選挙に名乗りを上げる民主党のウォーレン氏は、集会後、希望者全員と写真撮影。これまでに撮影した支持者は8万人以上。支持者の多くがSNSで発信し、宣伝効果を生んでいます。
こちらは、トランプ大統領を支持する「トランプ親衛隊」の会合。来年の選挙に向けて新たにスタッフを集め、電話作戦や戸別訪問のやり方を教えています。
大規模に展開する、大統領選。来年11月の投票に向け、戦いが始まります。
◇
――やっぱり華やかですね。ロックスターのコンサート並みの盛りあがりでしたね。一方で、有権者一人一人と向き合う姿などは、そういう一面もあるんだと、少し意外な感じもありました。
これから11月の投票日まで大統領選挙はこのように進んでいくんです。まずは来年2月から始まるのが全米各地で行われる党員集会と予備選挙です。州ごとに開催され、ここで候補者が絞り込まれていきます。中でも、3月の第一火曜日には、15もの州で党員集会や予備選挙が一斉に行われるため、「スーパーチューズデー」と呼ばれ、注目されるんです。特にトランプ大統領に対抗する野党・民主党では、現在候補者が15人も乱立していますので、ここで候補者レースの方向性が見えてくると思われます。
――民主党の候補者って15人もいるんですね。
これでも減ったんです。撤退した人も含めると過去最多の28人が出馬を表明していたんですが、その後どんどん減って、いま15人になっています。
――選挙戦からどんどん脱落していくということ?
やはり、各地で集会を開くとなれば、会場費や移動費のほか、PRから警備まで多額のコストがかかる。そうした費用がまかない切れなくなって早々にレースから撤退する候補も少なくありません。大統領選を勝ち抜くには、そもそもの資金力に加え、支援者からどれだけ寄付金を集められるかなども鍵となってきます。
――確かに長期戦ですから、資金力があるかないかは大きな要素ですよね。
こうして勝ち残った候補者が夏に行われる全国党大会の場で正式な党の大統領候補として指名され、この時、大統領とペアになる副大統領候補も指名されます。ここからいよいよ共和党VS民主党の戦いが始まるんです。
――ここまで見てくると、莫大な資金力がないと大統領にはなれないように思えますが、そもそも大統領選に立候補する条件はあるのでしょうか?
実は立候補するだけなら「資金力」は関係ありません。立候補の条件は大きく3つがあります。
・アメリカ出生によって国籍を取得
・35歳以上
・(少なくとも14年以上)アメリカに居住
――大金持ちでなくても、大統領選に立候補することはできるんですね。では、党大会で大統領候補に指名されたあとは、どんな展開になるのでしょうか?
ここからは、いよいよ共和党と民主党の候補の一騎打ちが始まります。投票日に向けて、テレビ討論会など、直接意見をぶつけ合う機会もあります。候補者の表情や話し方などがダイレクトに有権者に伝わるので、ここでしくじると一気に形勢が逆転することもあるなど、とても重要な場になります。
さらに、この時期になると候補者同士の中傷合戦も激しくなってきます。○○疑惑というような、相手候補のスキャンダルを持ち出して攻撃したり、候補者の言動に注目が集まります。
――そしていよいよ11月の本番を迎えるわけですね。日本と違ってかなりの長丁場ですが、有権者の方はどんな気持ちで臨むのでしょうか?
前回2016年の大統領選の時は、私はアメリカの大学にいたんですが、選挙期間中は、キャンパスの中で学生団体がミーティングを開いたり、学生たちに投票に行くように呼びかけていて、積極的に選挙に参加する若者が多いなと感じました。
――日本では政治に関心のない若者も増えていますが、アメリカでは若い人も積極的に投票に行くんですね?
そうですね。多くの若者の間に危機感が広がっているのは確かです。いま世界でも地球温暖化の問題や銃規制などをめぐって、将来世界を担う若者たちが声を上げ始めていますが、そうした若者たちの声がどこまで届くかも、大統領選を左右する要素のひとつとみられています。その意味でもこれから11月の投票日までの間、目が離せない状況が続きそうです。