米大統領選 激戦州でハリス氏に“逆風”なぜ? 「見捨てよう」「信頼できない」 カギ握るアラブ系、“第3の候補”も
投票まで1週間と迫った、アメリカ大統領選。激戦のミシガン州で取材すると、大学生に支持されている民主党のハリス氏にとって、中東情勢が大きな逆風になっていました。カギを握るのがミシガン州のアラブ系住民で、「第3の候補」が支持を集めています。
大統領選の結果を左右する激戦州・ミシガン州のミシガン大学。投票のための有権者登録を代行する団体には、次々に学生が訪れていました。キャンパス内には期日前投票所も登場。学生たちに、選挙で重視する点を聞きました。
大学生
「女性の妊娠や中絶などの権利が争点だと思います。ハリス氏に投票します」
別の大学生
「経済と気候変動が最も大きな問題です。ハリス氏に投票するでしょう」
大学生からの支持が高いハリス氏(民主党)ですが、ある大学生からは「友人の多くはハリス氏に投票すると思いますが、彼女のパレスチナへの姿勢のせいで少し複雑な気持ちです」という声も聞かれました。
パレスチナ自治区ガザ地区やレバノンで軍事作戦を続けるイスラエル軍。民間人の犠牲が増え続ける中、イスラエルへの武器供与をやめないバイデン政権への批判は、副大統領であるハリス氏にも向けられています。
ミシガン大学のキャンパス内では10月7日、学生たちがパレスチナやレバノンへの旗を持って集会を開いていました。「抵抗は正当だ!」とシュプレヒコールを上げ、バイデン政権に武器支援の停止などを求めました。
集会参加者
「アメリカの指導者たちは、この大虐殺を支援し続けています」
すぐ近くではイスラエルを支持する学生らも集会を開き、衝突を避けようと誘導する警察と反発した学生がもみ合いに。逮捕者が出るなど、現場は一時騒然となりました。
集会参加者
「信頼できないし、ハリス氏には投票しない。断言します」
一方、対立候補のトランプ氏(共和党)は「史上最も親イスラエルの大統領」を自称。学生たちの中には、今回の大統領選で「どちらにも投票しない」という人もいます。
ミシガン州では、両者の最新の支持率(10月2日~27日、リアル・クリア・ポリティクスより)はトランプ氏が47.9%、ハリス氏が47.8%と0.1ポイント差の大接戦となっています。
ミシガン州で勝敗のカギを握るのが、20万人以上いるアラブ系住民の動向です。本来ならハリス氏の支持層ですが、中東情勢が大きな逆風になっています。
最大都市デトロイト中心部で10月に行われた、停戦を求めるデモ。「ハリスを見捨てよう」と、ハリス氏に投票しないよう呼びかけるプラカードを掲げている人もいました。
デモ参加者は「スタイン氏に投票します」と話します。ハリス氏への抗議の表明として、第3の候補に投票するといいます。「パレスチナを自由にする!」と主張する、「緑の党」のジル・スタイン氏です。
当選の見込みはありませんが、「イスラエル支援へNOを突き付けよう」と自らへの投票を呼びかけています。
イスラム教徒を対象とした調査(8月25日~27日、CAIR)では、ハリス氏は29.4%、スタイン氏は29.1%、トランプ氏は11.2%となっています。スタイン氏は、ハリス氏に匹敵する支持を集めています。
集会参加者
「バイデン氏とハリス氏を見捨て、スタイン氏に投票すれば、トランプ氏が大統領になる可能性がある。それは十分わかった上でやっています」
ハリス氏は、ミシガン州のアラブ系団体と面会を重ねるなど、危機感を示しています。トランプ氏の勝利を避けるため、ハリス氏支持を表明する団体もあり、アラブ系住民の間でも意見が割れています。
大接戦を制するのはどちらなのか。投開票は現地時間の11月5日。1週間後に迫っています。
(10月29日『news every.』より)