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【解説】 プーチン大統領“諜報機関幹部”を軟禁?「今後もっと恐ろしくなる」指摘も…

2022年3月14日 21:16
【解説】 プーチン大統領“諜報機関幹部”を軟禁?「今後もっと恐ろしくなる」指摘も…

ロシアのプーチン大統領が、「諜報・工作部門トップらを自宅軟禁した」と報道されています。その背景には「ウクライナへの侵攻が思うように進んでいない事へのプーチン氏の焦りもある」とみられていますが、ロシア軍はウクライナ西部への攻撃を強めています。

■ロシア、ウクライナ西部にも攻撃か 「主要都市を奪えずいらだち」

地元当局によると、13日、ウクライナのヤボリウにある軍事施設がミサイル攻撃を受け、14日時点で35人が死亡、134人がけがをしたということです。また、11日、ウクライナ西部にある2か所の軍事飛行場も、空爆を受けたとみられています。

アメリカ・国防総省高官は「これまで西部を攻撃していなかったので異例」と分析しました。

13日、ウクライナ西部・ヤボリウの軍事施設も攻撃を受けました。ロイター通信によると、ヤボリウの軍事施設は、ウクライナ軍とNATO(=北大西洋条約機構) との合同軍事演習も行われてきた場所です。「ロシアが、ウクライナに軍事的な支援を行う欧米側をけん制するものではないか」とみられています。

この攻撃に対して、アメリカ・サリバン大統領補佐官は、米・NBCテレビの番組で「ロシアが標的を拡大しようとしているのは、驚きではない。なぜなら、主要都市を奪えず、いらだちを感じているからだ」と指摘しました。

■プーチン大統領、“諜報・工作部門トップ”を軟禁? ロシア独立系メディア報道

こうした中、ロシアの独立系メディア・メドゥーザが、「不正確な情報があしき事態に。プーチンの矛先はロシアのウクライナ侵攻準備をしくじったFSB(=連邦保安局)に」という見出しの記事を報じました。

長くFSBを取材してきたジャーナリスト2人による情報として、「FSBの諜報・工作部門が弾圧の対象となっている。そのトップらが自宅軟禁されている」とメドゥーザは報じました。

この記事によると、軟禁されているとされているのは、FSB諜報・工作部門トップのセルゲイ・ベセダ氏と補佐官の2人で、「不正確な情報を報告した」などの疑いがかけられています。

ウクライナ侵攻前、FSBの諜報・工作部門はプーチン大統領に情勢報告をしていました。しかし、実際の侵攻開始から2週間たち、プーチン大統領は、「その時の報告にミスリードされたことに気づいた」と報じられています。

ベセダ氏らが、プーチン大統領を怒らせてしまうことを恐れ、大統領の耳に心地よい情報だけを報告していたとみられています。つまり、「誤った報告によって、侵攻が計画通り進まない。その懲罰として、今回、軟禁されたのではないか」というのが記事の趣旨です。

■誤った報告で失敗…“引くに引けない状況”プーチン大統領にもたらす?

この記事について、ロシアの安全保障などを専門とする防衛省防衛研究所・山添博史主任研究官に聞きました。

そもそも、FSBという組織は、旧ソ連で大きな権勢を誇ったKGBが再編されて、「SVR(=ロシア対外情報局)」と「FSB(=ロシア連邦保安局)」に改組されました。FSBは「国境警備」、「通信監視」、「犯罪組織取り締まり」などを行う組織です。

山添氏は、「FSBは、KGBの一番大きな核となる部分を引き継いでいる」と分析しています。実は、プーチン大統領もKGB出身で、FSB長官も経験した経歴を持っています。山添氏によると、「プーチン大統領が、一番信頼する組織。ウクライナ対策の重要任務を信頼してやらせていた」ということです。

また、山添氏は、「プーチン氏への権力集中・絶対的方針が決まっていると、ゆがんだ情報分析の報告が起こりうる」とみています。

山添氏は「諜報部門の楽観的すぎる見通しの報告で失敗してしまい、プーチン氏にとって、引くに引けない状況をもたらした原因となり、そこで、さすがにベセダ氏をやめさせたというのが、今回の軟禁とみられる記事の趣旨だろう」と読み解いています。

■「プーチン大統領は今後もっと恐ろしくなる」との指摘も

この記事を報じたメドゥーザというメディアは、独立系メディアで、元々、ロシア国内のメディアで活動できなくなった人たちが、隣国・ラトビアから正しい情報を報じようと立ち上げたものです。

そして、山添氏は、「情報源とされる2人は、かなり定評があるだけではなく、決死の覚悟がないと発信できない内容も含まれている。つまり、信じるに足る情報ではある」とみています。

一方、山添氏は、この状況に強い懸念を示していて、「当初、ウクライナは容易に服属させることができるはずと思っていた。その考えをいま改めているならば、プーチン大統領は今後もっと恐ろしくなる」と心配しています。

確かに、最近の戦況の変化、首都・キエフを目指し、なりふり構わないことをやっていることを見ても、非常に心配な状況は続くとみられます。

■14日に停戦協議 両国代表団から前向きな発言も…

一方、停戦協議を前に、両国の代表団から前向きな発言もあり、不思議な状況になっています。ロシア・ペスコフ大統領報道官は、現地時間14日に次回の停戦協議が行われることを明らかにしています。

これを受けて、ウクライナ・大統領顧問は、「ロシアと建設的な話し合いが始まる。数日中に何らかの成果が得られると思う」と述べました。また、ロシア代表団の1人も「まもなく双方が合意できるかも」と話したということです。

     ◇

日本時間14日午後5時半から、ロシアとウクライナの協議が始まるということです。これまでは、仲介するベラルーシに集まり、対面で行われていましたが、今回はオンライン形式を採るということです。

(2022年3月14日午後4時半ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)