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【解説】韓国で“塩騒動”…原発処理水で「汚染」不安? 韓国政府「怪談のような情報」 冷静な判断呼びかけも…

2023年6月20日 19:39
【解説】韓国で“塩騒動”…原発処理水で「汚染」不安? 韓国政府「怪談のような情報」 冷静な判断呼びかけも…

韓国の一部のスーパーでは売り場の棚が空になるなど、“塩騒動”が起きています。背景には、まもなく始まる予定の日本の福島第一原発の処理水の海洋放出が関係しています。

●塩売り切れのスーパーも
●キムチに影響…不安
●日本の塩は大丈夫?

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■原発処理水…夏ごろに放出開始の方針 「1人1個まで」韓国で“塩騒動”

福島第一原発にたまる処理水は、環境基準を大幅に下回るまで薄めた上で、今年の夏ごろに海への放出を開始するというのが日本政府の方針です。今月12日には設備の試運転も始まり、東京電力は近いうちに設備の準備を完了させる見通しです。

このニュースはお隣の韓国でもトップニュースとして報じられ、大きな関心が寄せられています。

これを受け、福島県の内堀知事は19日の会見で「処理水の受け止めは各国・各地域によって異なっている。韓国においては尹錫悦大統領と岸田総理が直接会談をしてから状況が変化しつつあるが、まだ予断を許さない状況」と述べました。

つまり、政府などが処理水の安全性を世界に向けて説明しているものの、まだ、正確に伝わりきっていなくて不安を感じている国もあるというのが現状です。

日本で処理水放出の準備が進む中、韓国では意外な現象が起きていました。

ソウルの大手スーパーで20日に撮影された写真では、袋入りの塩などが並んでいたところが空になっています。「塩 1人1個まで」との表示も確認できます。NNNソウル支局の記者も大手スーパーを2店舗回りましたが、袋入りの塩はほぼなかったということです。

韓国では今、“処理水の海洋放出前に海水から作られる塩を買っておこう”という動きが起きているようです。実際、20日午前、ソウルで街の人に話を聞くと、「不安ではありますよね、大騒ぎしてるから。(買おうとしても)塩がなかったんですよ。全部売り切れでした」「深刻ですよね。だめですよ。国民の食に一番欠かせないのが塩なのに」といった声が聞かれました。

一部の大手スーパーでは塩がなかったものの、商店街などではまだ売っている店もありました。ただ、その店でも産地が塩を十分に売ってくれず、入手には苦労しているようです。

実際、韓国の塩の産地で生産業者を取りまとめる団体に話を聞くと「注文が増えていて、完売になっている。こんな状況は珍しい」と話していました。

■韓国政府「怪談のような情報に惑わされることがないように」

韓国での塩の価格について、見ていきます。

準政府機関の韓国農水産食品流通公社によると、19日時点での粗塩5キロあたりの小売価格は1万3094ウォン(=約1450円)だということです。平年の7940ウォン(=約880円)と比べれば、6割以上高騰しています。

またそもそも、去年から塩は値上がりしていましたが、1年前の同時期の1万1189ウォン(=約1240円)と比べても、2割弱高騰しているということです。

塩の値上がりについて、韓国政府は「天日塩の品切れ及び値上げは、4~5月の天候不良などで生産量が減少した」と説明しています。これに加えて処理水の海洋放出の準備が進んでいることから消費者が不安に感じ、今のうちに塩を買っておこうという動きもあったとみられています。

ただ、韓国政府は「今月から生産量は回復していて、供給に問題はない」と強調しています。さらに処理水の放出に関する国民の根強い不安を払拭するため、15日から毎日、会見を開いているのです。会見では、「『原発汚染水が放流されたら、塩が汚染される』という全く科学的でない、怪談のような情報に惑わされることがないようにお願いします」と冷静な判断を呼びかけています。

■「キムチ作りの“行事”」には支障ない? 日本で“買い占め”は…

塩をめぐる騒動は、韓国の国民食ともいえるキムチにも波及しています。キムチ作りでは最初の段階で白菜に丁寧に塩を振るように、塩は欠かせないものです。

韓国では、キムチを作る「キムジャン」という行事があり、大量にキムチを作る家庭も多いそうです。ただ、一般的にこの行事は10~11月に行われるため、まだまだ先になります。

また、韓国の塩の8割を生産する一大産地・シンアン郡では、一時は天候不良で減っていた生産量も今月から平年の水準に回復しているとしています。さらに、地元のトップも「来月に新たな塩が本格出荷されれば、今年のキムチ作りに支障はないはず」と話しているそうです。

一方で、日本の塩の価格はどうなっているのでしょうか。

業務用の塩を主に製造している国内大手のメーカーによると、「エネルギー費や物流費が高騰している影響で去年は2回値上げをしたが、今年、大幅な値上げをすることは考えていない」ということです。

また、塩の買い占めも国内では起きていないということです。

    ◇

東京電力は今月12日から処理水放出のための設備の試運転を行っていて、近いうちに準備を完了させるとしています。さらに、国際原子力機関(=IAEA)による評価結果を踏まえ、政府は夏ごろまでに処理水の放出を開始する方針です。

(2023年6月20日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

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