戦勝記念日でプーチン氏「再び本当の戦争が」――戦況に触れず「日本」に言及 “異例の式典”…パレードの戦車は1両のみ
ロシアは戦勝記念日を迎えましたが、以前に比べると異例の式典となりました。軍事パレードに参加した軍人は約3000人少なく、戦車は1両のみ。市民による行進も中止となりました。プーチン大統領は演説でウクライナ侵攻を正当化し、日本にも言及しました。
■プーチン氏、ウクライナ侵攻を正当化
日本時間の9日午後4時すぎ、ロシアの首都モスクワ中心部の「赤の広場」は、多くの軍服を着た人々で埋め尽くされました。
登壇したプーチン大統領は、改めてウクライナ侵攻を正当化。「我々の祖国に対して再び本当の戦争が行われています。しかし、国際的なテロを撃退し、東部ドンバス地域の住民を保護し、我々の安全を確保します」と訴えました。
第二次世界大戦でナチスドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」を迎えたロシア。ただ、これまでと比べると今年は異例の式典となりました。
■少なくとも21都市でパレード中止
規模が縮小され、軍事パレードに参加した軍人の数は、去年の1万1000人より3000人少ない、8000人以上になりました。
去年は最新鋭の戦車なども登場していましたが、今年も大陸間弾道ミサイルなどは見られたものの、戦車は第二次世界大戦時代の1両のみでした。
さらに、これまで軍事パレードはモスクワ以外のロシア各地でも行われていましたが、イギリス国防省が6日に明らかにしたところでは、少なくとも21の都市で中止になりました。
例年行われる、「不滅の連隊」と呼ばれる市民による行進も中止に。去年はプーチン大統領も市民と一緒に行進していましたが、安全上の懸念を理由に中止となりました。その背景には、大統領府にドローンが接近した事件があるのでしょうか。
■演説では「多極化する世界」に言及
ロシアメディアにも人数制限がかけられるなど厳戒態勢が取られる中、プーチン大統領はアメリカなど西側諸国を批判しました。
日本にも言及しながら、「日本の軍国主義と戦った中国にも敬意を表します。過去の共通の脅威との戦いにおける協力的な経験は、我々の貴重な遺産です。今、公正な多極化する世界に向け、逆戻りできない動きが勢いを増しています」と主張しました。
演説を聞いたロシア国民は「彼の話を聞くたびに自信が湧いてきます。大統領のことを誇りに思っています」という賞賛や、「いつもと同じです。新しい内容は何もありませんでした」と冷ややかな声が聞かれました。
■ゼレンスキー氏「悪は戻ってきた」
今もウクライナ各地で戦闘が続きます。
首都キーウでは日本時間9日、早朝の空に黒煙が上りました。ロイター通信はウクライナ側の発表として、夜から朝にかけてロシア軍がキーウに巡航ミサイル25発を発射し、うち23発を迎撃したと報じました。けが人の報告はないということです。
戦勝記念日についてゼレンスキー大統領は動画を公開し、「残念ながら悪は戻ってきた。現代のロシアが復活させようとしている古い悪は、ナチズムが敗北したように打ち破られるだろう」と語りました。
苦戦が続くウクライナでの戦況には触れなかったプーチン大統領。「ロシアのため、勇敢な軍隊のために祈ります。万歳!」と言うと、軍人たちは一斉に「万歳!」と応じました。
(5月9日『news zero』より)