北朝鮮で禁煙法が制定 その背景とは?
知っておきたいデータや情報をひもとく「input」。今回は、ひと味違った視点から北朝鮮の今を分析する“NKウォッチ”、「北朝鮮で新たに制定された法律」について。日本テレビ国際部の森本隼裕記者に聞いた。
今月は世界中がアメリカの大統領選挙の行方に注目していたと思いますが、そのさなか、実は北朝鮮でこんな法律ができていたのです。
それが、こちら。「北朝鮮禁煙法」というものです。
――文字通り「たばこを吸ってはダメ」という法律でしょうか?
そうです。北朝鮮メディアによると、11月4日に北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の常任委員会が開かれ、「禁煙法」が採択されました。劇場や映画館など公共の場所や医療施設、教育機関など禁煙しないといけない場所を定めていて、守らなかった場合には罰則もあるということです。
――そもそもどうしてこんな法律ができたのですか?
北朝鮮は、男性の「喫煙率」が非常に高い国なのです。WHO=世界保健機関が去年報告したデータによると、15歳以上の男性の46.1%、ほぼ2人に1人がたばこを吸っていることになります。これに対し、日本の男性は29.3%なので、北朝鮮の喫煙率がいかに高いかがわかると思います。
北朝鮮では、たばこは嗜好品にとどまらず、役人に賄賂として渡すのが慣例化しているとされ、「社会の潤滑油」として生活に浸透してきたとみられます。
その北朝鮮でも、実は2005年に「たばこ統制法」をつくって以来、たびたび禁煙キャンペーンを展開してきました。このように国営メディアが禁煙を特集することもあります。とくに今年は、新型コロナウイルスの世界的流行を受け、「喫煙者は重症化する危険性が高い」といった報道で警鐘を鳴らすなど、さらに本腰を入れている印象です。
――まさに国を挙げて、禁煙に取り組もうとしているわけですね。
その禁煙をめぐっては、こちらの人物の動向が注目されています。こちらの映像をご覧ください。
――金正恩委員長ですね。
2020年3月に朝鮮中央テレビで放映された記録映画で、農場や大学などを視察した様子が映っているのですが、手に持っているもの、わかりますか?
――指に挟んでいるのは、たばこですね。
そうです。映像では、このあとも大学の校舎内や体育館など、ところ構わず、火のついたたばこを持つ金委員長の姿が登場しました。実は、金委員長はかなりのヘビースモーカーとみられています。国営メディアが禁煙キャンペーンを行っていながら、最高指導者が堂々とたばこを吸うという正反対の様子が報道され、韓国メディアなどは北朝鮮が「禁煙の雰囲気づくり」に失敗してきたと指摘しています。
――今回の法律制定で雰囲気に変化は出るのでしょうか?
今回の動きは、金正恩体制のもと“正常な国家”になっていると内外にアピールする政策の一つともみられています。改めて禁煙の統制強化をはかり法律を作ったわけですから、当分は国営メディアが金委員長のたばこを持った姿を報じることはないのかもしれません。
【the SOCIAL inputより】