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慰安婦支援団体「裁判長名は恥として記憶」

2021年4月21日 19:59
慰安婦支援団体「裁判長名は恥として記憶」

韓国の裁判所が、日本政府に損害賠償を求めた元慰安婦らの訴えを退けたことについて、慰安婦の支援団体は「人権の歴史を後退させた裁判長の名前は、恥として記憶される」などと裁判所を批判しました。原告側は控訴するとみられ、問題は長期化する可能性も出ています。


●今回の裁判の概要

この裁判は2016年、元慰安婦の女性と遺族ら20人が、「反倫理的な犯罪について日本の法的責任を明確にする」として日本政府を相手取り、日本円にして総額およそ2億9000万円の損害賠償を求めて訴えを起こしていたものです。

日本政府は、国際法上、外国政府が他国の裁判で被告にはならないとする「主権免除」の原則から訴えは却下されるべきと主張し、これが争点になっていました。

21日の判決で、ソウル中央地裁は「国際慣例で、外国政府を被告に賠償請求することはできない」として、主権免除の原則の適用を認め、原告側の訴えを退けました。

また、2015年の慰安婦問題をめぐる日韓合意についても国家間の合意だと認定した上で、「相当数がお金を受け取り」救済手段になったとの認識も示しています。


●原告らの反応、支援団体は猛反発

原告の1人、李容洙(イ・ヨンス)さんは、判決後、「本当に荒唐無稽だ」とコメント。原告側弁護士は「到底、納得しがたい判決で元慰安婦女性たちと相談し、控訴するか決める」としています。

慰安婦支援団体の「正義記憶連帯」は、「日本政府の主張を受け入れた退行的な判決だ」とした上で、「東北アジアの人権の歴史を後退させた裁判長の名前は、恥として記憶される」と裁判所を激しく批判しています。

慰安婦問題に敏感な韓国で、今後、世論の反発が強まる懸念もあります。


●韓国政府の反応

韓国外務省は、詳細は把握中としながらも「我が政府は被害者中心主義の原則によって、被害者が名誉と尊厳を回復するための努力を尽くしていく」とコメント。その上で日本側に「責任の痛感と、反省の精神に符合する歩みを見せるよう」求めました。

また、慰安婦問題を所管する女性家族省は、「慰安婦問題は歴史的に数多くの被害者の証言と、国際機構の調査を通じて立証された戦時性暴行問題だ」と指摘。「今回の判決と関係なく国際的な共感拡散のため事業を積極的に推進する」とコメントしています。


●慰安婦問題の今後は

慰安婦問題をめぐっては、今年1月の同様の裁判で、今回とは逆に、日本政府への賠償を命じる判決がすでに確定していて、裁判官によって判断が分かれた形です。

1月の判決のあと、文在寅大統領は会見で「少し困惑した」と述べていて、韓国メディアは、こうした韓国政府の立場が今回の判決に影響を及ぼしたとの見方を伝えています。

また、別の韓国メディアは「日韓関係の改善を望む韓国政府にとって、外交的な負担を減らすことになる」とする一方で、「ねじれた判決によって問題の根本的な解決は“漂流”する懸念がある」とも伝えています。

原告側が控訴した場合、上級審まで判決が確定しない状態となり、外交的な問題としても長期化する可能性が出ています。


写真:ソウルの日本大使館近くに設置されている“慰安婦像”