イスラエル軍の攻撃で、ガザ地区の多くの病院の機能が停止し、“医療崩壊”の危機に陥っています。医師らは、懸命な救命措置を続けていますが、生まれたばかりの小さな命も失われています。

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「もっと下に！」

12日、ガザ市内の病院の床で、幼い赤ちゃんが治療を受けていました。ガザ地区北部でイスラエル軍の空爆にあい、けがをしました。父親は空爆で死亡しました。

「頭に直接、けがをしている。内部出血だ。手術はできない」

この病院はすでに電源を失い、医師たちは蘇生装置を手動で使っています。

必死に生きようとする小さな命。一命はとりとめたものの、ここでは、必要な手術を行えない状態だということです。

ガザ地区はまさに、“医療崩壊”の危機に陥っています。イスラム組織「ハマス」の打倒を掲げ、イスラエル軍はガザ市中心部で戦闘を続けています。戦闘が激化するなか、燃料不足から“電源”を失う病院が相次いでいます。

ガザ地区で2番目に大きいクッズ病院では、医師たちは、真っ暗で何も見えない中、懐中電灯の明かりを頼りに、けが人の治療にあたっていました。この病院は12日、全体の「機能停止」を宣言しました。

9日、ガザ地区で最大のシファ病院には、敷地内に砲弾が着弾。周辺での戦闘が激化するなか、11日には燃料が切れ、機能を停止したと伝えられました。

ベッドに並べられた、生まれたばかりの赤ん坊たち。保育器を動かすことができず、保育器の外に出されています。これまでに、乳児5人が死亡したとの報道もあります。（※英「スカイニュース」による）

イスラエル軍は、病院への攻撃や包囲は否定しています。しかし、シファ病院の地下には「ハマスの司令部がある」と主張していて、周辺に軍を展開していることを認めています。アメリカの政策研究機関「戦争研究所」の12日の分析では、イスラエル軍はガザ市を取り囲むように展開。シファ病院の目の前まで迫っている可能性があるとしています。

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国際社会の批判を意識したのか、イスラエル軍は12日、次のような音声を公開しました。

イスラエル側
「アルマジュレス・アルタシュリーイの交差点に、燃料を置きます」

病院側
「わかりました」

イスラエル側
「燃料を置いたら、我々の兵は、交差点付近から下がります。救急車を送って、燃料を受け取ってください」

「病院に燃料300リットルを提供した」として、病院側との打ち合わせの“音声”と、燃料を運ぶ“映像”を公開したのです。アメリカNBCの番組に出演したイスラエルのネタニヤフ首相も、「燃料を提供しようとしたが、ハマスに妨害された」と主張しました。

「ハマス」側は、燃料について“受け取り拒否”を否定し、「300リットルでは、発電機を30分以上動かせない」とイスラエル側を批判しています。

イスラエル側は、病院からの安全な避難経路を示すなど「人道的な配慮」をアピールしていますが、罪のない命が奪われ続ける現状に、国際社会からの批判は高まっています。