中村さん壁画消されるも 思い出は消せない
生涯をアフガニスタンにささげ、現地の人からも愛された医師の中村哲さん。そんな中村さんを追悼する壁画が、白く塗りつぶされていたことが分かりました。壁画を制作した芸術団体の代表オメイド・シャリフィさんが「アフガンのヒーロー」中村さんへの思いを語りました。
■「体の一部を失ったような思い」
私が代表を務める芸術団体「アートローズ」は、アフガニスタンで2200点以上の壁画を制作してきました。今月の3日か4日だったと思いますが、タリバンが、私たちの壁画を塗りつぶし始めたのです。そして、昨日(5日)、中村さんの壁画が破壊されたと聞きました。自分の体の一部を失ったようで、とてもつらいです。私が大好きだった人だからです。
■壁画の制作には200人以上が参加 アフガンのヒーロー
中村さんの壁画の制作には、200人以上のアフガン人が参加しました。中村さんは、アフガンの人々のために立ち上がったヒーローであり、「カカ・ムラド(=アフガン人全員のお兄さん)」と呼ばれていました。
中村さんの壁画は、イスラム教の教えやアフガンの価値観に反するものではありません。みんなが壁画を気に入っていました。そんなヒーローの壁画を、タリバンは破壊したのです。
■「壁画は消せても、中村さんの思い出は消せない」
中村さんの壁画は白く塗りつぶされ、その上から「独立おめでとう」と書かれていました。タリバンは、中村さんの壁画のほかにも、女性たちを描いた壁画やアメリカに関する壁画など、100点以上を破壊しました。そして、宗教指導者の言葉などを書いています。
タリバンは、今後も芸術や文化を破壊するでしょう。これは、アフガンの人にとっても、世界の人々にとっても、損失だと思います。今はとても悲しい気持ちです。しかし、タリバンが壁画を破壊したとしても、私たちの心から、中村さんの思い出を消すことはできません。
(NNNバンコク支局 平山晃一)
「アフガンからの声#3」
写真:中村さんを描いた壁画 ArtLordsのFacebookより