台湾でフェイクニュースまん延 中国が“偽情報を拡散”…民間団体が“真意を検証” 対策強化へ
台湾に対し、軍事的圧力を強める中国。その一方で、偽情報やプロパガンダを拡散し、台湾社会の分断を狙っているとみられています。台湾に揺さぶりをかける「情報戦」の実態を取材しました。
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台湾で、24日から中国軍の侵攻を想定した大規模な避難訓練が始まりました。
いつもは車通りが多い台北市も、全く人がいなくなっています。路上には停車したままのバスもありました。
サイレンと同時に市民はシェルターへの避難が求められます。台湾全土で去年の3か所から、今年は22か所で実施され、規模が大幅に拡大されました。
そんななか先月、中国メディアは、これらの演習が蔡英文総統が有事の際、「真っ先に逃亡するためのリハーサル」だと報じました。
蔡総統をイメージさせようとしたのか、女性らしき人物が拘束されています。台湾国防部は、こうした報道は“中国による情報戦”だとして警戒しています。
「台湾統一」を掲げる中国。軍事的圧力を強める一方で、台湾社会の不安をあおろうと偽情報を拡散しているとみられています。
台湾市民
「(偽情報は)たくさんあります。(発信源は)今の若者がよく使うアプリやニュースだと思います」
ネット上に“偽情報”があふれる台湾で、活発に活動しているのが、情報の真偽を検証する複数の民間団体です。
そのうちの一つが「台湾ファクトチェックセンター」です。先月、台湾のSNSで拡散された動画を検証しました。中国軍機がアメリカの空母の真上すれすれを飛行し"追い払った"という動画です。
調査を行う記者
「この映像がおかしいと気づいた点は、中国軍機がこの辺りまで飛んできた時、機体の周辺にあるケーブルが消えました」
映像を拡大すると、たしかにケーブルが機体と重なる部分で不自然に消えているのがわかります。さらに…
調査を行う記者
「(本物の米空母には)ここに3本の構造物があるが、さっきの動画の中には2本しかない。だから、この動画がフェイクだと考え始めました」
空母の見た目も実際のものと異なり、「偽情報」だと判断されました。中国の軍事力を"アピール"したい狙いがあったと見られます。
「台湾ファクトチェックセンター」 陳偉婷 副編集長
「有事の際には(SNSなどの)拡散に紛れて、有害な情報が入ってきます。市民はそれらに影響されることになります」
こうした“偽情報”はどう拡散するのでしょうか。
中国の情報戦について分析する研究機関は、政府や軍の内部に、情報戦を仕掛ける専門部門が存在するとみています。
台湾民主実験室 呉銘軒CEO
「インフルエンサーや大手メディアを通じて、大量の転載を繰り返します。すると台湾社会に影響を与えることができる『トピック』になるのです」
一方、蓄積した情報の真偽に関するデータを利用しやすくする仕組み作りも進んでいます。2016年に設立された市民団体「Cofacts」。
市民が真偽の疑わしい情報を見つけたら、まずこの団体のLINEアカウントに情報を投稿します。AIが投稿を分析し、2000人以上の市民ボランティアにより、これまでに真偽の確認を行った12万件のデータから、一致するものがあれば自動的に回答。
データにない情報は、ボランティアが新たに真偽の確認を行うというものです。
この仕組みは、早ければ数秒で真偽の確認ができます。情報の確認を担うボランティアも一般市民です。
「Cofacts」ボランティア
「個人ではなく、市民全体の力で行う仕組みです。より多くの人が協力し、完成度を高めるのです」
来年1月の総統選を前に、偽情報の急増も予想される台湾。中国のゆさぶりに、草の根レベルで抵抗する動きも広がっています。