【解説】長期政権狙う野心とは… プーチン氏圧勝でロシアの軍事行動はどうなる?
週末に行われたロシア大統領選挙で、プーチン大統領が圧勝しました。この選挙結果などについて、ロシアと欧米の関係を研究されている筑波大学の東野篤子教授とお伝えしていきます。
■プーチン氏は国民の支持を得られているのか?
藤井貴彦キャスター
「大方の予想通りプーチン大統領の圧勝となり、得票率が約87%という、目標としていた過去最高の得票率となったということです。一方で、投票所では火炎瓶などによる妨害行為や、プーチン体制に抗議する人たちもいたということです。東野教授、それでも国民の支持を得られていると考えていいのでしょうか」
東野篤子教授
「なかなか難しいところです。非常に高い得票率、支持率ですが、事前から『高くなる』と言われていましたが、それでも『前代未聞の高さ』だと思います。これはやはり、非常に念入りに調整をした結果とみるほうがよいと思います」
「最終日に『反対票をまとめて入れる』といった運動もあったのですが、それをもってしても、この高い支持率を覆すには至っていませんし、ウクライナの支配地域での投票では軒並み90%以上なんですね。なかなか異常な結果と言えるかと思います」
藤井キャスター
「ロシア全土で管理されていたとみたほうがいいのでしょうか」
東野教授
「そうですね。ロシア全土のみならずウクライナ支配地域も含めて、非常にしっかりと管理された選挙だったと思います」
■長期政権を狙うプーチン大統領 その野心とは?
藤井キャスター
「2000年の大統領就任以降、通算5期目となります。プーチン大統領は71歳ですが、憲法上は2036年、83歳まで続投が可能だということです。これは旧ソ連の独裁者・スターリンを上回る異例の長さだということですが、長期政権を続ける狙いは、どのあたりにあるのでしょうか?」
東野教授
「プーチン大統領の非常に大きな野心として、ロシアを歴史上一番長く統治したい、そして、そのプロセスにおいてロシアの版図を歴史上正しい場所に戻したい、ということがあると思います。彼は長期政権を狙っているわけで、大統領選挙法を改正してまで非常に長期的な12年にわたるような政権を可能にしているわけです。任期が長ければ長いほど、プーチン大統領が求めるものを追求しやすいということはあると思います」
「そのため、ウクライナはそのプロセスには極めて大事であり、これで白紙委任状を得たということで、ウクライナに対する支配、攻撃は進めていくものと私は考えています」
■ロシアの軍事作戦はどうなる? 代わりの指導者が出てくる可能性は?
藤井キャスター
「いま『攻撃を進めていくもの』とおっしゃいましたが、ウクライナ侵攻で2年が過ぎている現状で、今後ロシアの軍事作戦はどうなっていくとお考えでしょうか」
東野教授
「この大統領選挙で、おそらく『ロシア国民からのお墨付きが得られた。こんなにたいへんな状況であっても国民は圧倒的にプーチンを支持している』といった理解が推進されたと思います」
「従って、たとえばことしの初夏以降にロシア側からの猛攻撃が予定されているということが指摘されています。この猛攻撃が、あまり世論を気にせず、一層容赦ないものになると想像できると思います」
「また、動員や戦時経済体制への徹底的な移行も、選挙前は難しかったかもしれませんが、選挙後であれば国民の反発をあまり気にしないでできると思います。軍事的には東部南部4州を完全に制圧すること、できればオデーサくらいまで支配地域を広げること、また戦争目的が変わったわけではないので、キーウの制圧やゼレンスキー政権の排除も、この6年間ないし12年間に引き続き狙っていくと思います」
「おそらく歯止めがかからない状況だと思います」
藤井キャスター
「今後、代わりとなるロシアの指導者が出てくる可能性は、どれぐらいの確率なんでしょうか」
東野教授
「私も、さまざまなヨーロッパやアメリカの専門家と議論を重ねてきましたが、やはりプーチン大統領にとって代わる指導者が出てくることを期待するのは、非常に難しいと思います」
「では、この状況をどうやって変えられるのか。これはもう、突発事項に頼るしかないというのが、みなさんの大方の見方です。たとえば、ロシアかウクライナで大きな軍事的な突破口が生じる、あるいはロシアで反戦運動が高まる可能性はなくはないですが、どれも短中期的に『必ず起きる』と言えるようなものではありません。当面はやはり、この状況が続いていくものと、みなさんはみていると思います」
■欧米、そして日本への影響は?
藤井キャスター
「欧米や日本への今後の影響を、東野さんはどう考えていますか」
東野教授
「欧米はプーチン大統領が再選されるだろうという認識のもと、このままいくらでも好きなだけプーチン大統領が戦争を続けていくことになれば、ウクライナだけではなくヨーロッパも危険だと考えていると思います」
「この危機感の表れが、たとえばフランスのマクロン大統領のように地上軍の派遣も排除しないという、いままでだったら考えられなかった意見表明にもつながっていると思います」
「日本に関してできることはやはり、ウクライナへの支援を続けること。これしかないと思います。戦争が短期間に終わることを過度に期待せずに、ウクライナに対してなにができるのかを真剣に、改めて問い直したい。こういった機会にしたいと思います」
藤井キャスター
「ありがとうございました」