中国の発展支えた「農民工」高齢化で生活苦…格差拡大 景気低迷で“格安スーパー”人気も
中国の国会にあたる全人代(=全国人民代表大会)が5日、開幕しました。低迷する景気への対策が注目される中、経済発展を支えてきた日雇い労働者の高齢化が進み、課題となっています。
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夕どきの買い物客で混雑する中国・上海市内のスーパー。この店は期限までに売れなかった商品を格安で販売する“アウトレットスーパー”です。米はおよそ560円、ビールは140円と、低価格に抑えられています。
他にも街中には、60円のソフトクリームや、200円でセットが選べるハンバーガーショップなど、格安をウリにする店が中国で拡大しています。
客「本当に安いよ」「(ランチは)500円以内に節約している」
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中国の消費者に広がる節約志向。背景にあるのが「景気の低迷」です。
夜明け前の上海郊外で集まっているのは、日雇いの仕事を探す労働者たち。会話からは自虐の言葉も聞こえてきます。
仕事を求めて来た人「稼いだ人は全員行ってしまった。残りは私らみたいな貧乏人だよ」
中国の景気をけん引してきた不動産業界。その低迷から働き口さえも減り、労働者の生活を直撃しています。
労働者「(給料)いくら?」
雇い主側「いくらほしい? 」
労働者「いくら出せる?」
雇い主側「出せるのは200元(約4000円)」
この日、募集がかかったのは一日4000円ほどの仕事。去年の相場よりおよそ2割も下がっているといいます。
労働者「朝4時から6時まで待ったが仕事がない。家に帰って寝るよ。やってられないよ…」
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こうした農村からの出稼ぎ労働者は「農民工」と呼ばれ、中国の経済発展を支えてきました。人口のおよそ2割を占める3億人にものぼります。河南省出身の朱さん(68)は、今も働く農民工のひとりです。
農民工・朱さん「2~3日仕事をして2~3日休む。(仕事を見つけるのは)毎日は無理だ」
68歳の朱さんが仕事を得るのは簡単ではありません。月の収入は6万円ほどで、家賃の2万円を残し、ほとんどを故郷の家族に仕送りしています。
中国の研究者の調査によると、都市部の高齢者が毎月平均6万円の年金を受給するのに対し、農民工は最低限の2000円から4000円程です。
格差是正を目指す「共同富裕」を掲げる習近平政権。しかし、所得の差は依然として大きい上、生活苦にあえぐ農民工には高齢化という現実が重くのしかかっています。
農民工・朱さん「結局、農民の待遇(の現実)は都市には届かない。年金も100元(約2000円)しかもらってない。病気が一番怖い。(病気になったら)金がとてもかかる」
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こうした農民工の姿を描いたドキュメンタリーが、1月、ネットで公開され話題になりました。しかし、その動画はすでに削除されています。
5日に開幕した全人代で、李強首相は「高齢化に対応する国家戦略を行う」と強調しました。豊かになる前に老いを迎えた農民工に、中国の今の姿が映されています。