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欧州人権裁判所「セメンヤ選手への差別あった」陸上女子競技への出場制限めぐり判決

2023年7月12日 3:24
欧州人権裁判所「セメンヤ選手への差別あった」陸上女子競技への出場制限めぐり判決

陸上女子800メートルでオリンピック2連覇を成し遂げたキャスター・セメンヤ選手が、男性ホルモンの値が高い女子選手の出場を制限する世界陸連の規定撤回を求めていることをめぐり、ヨーロッパ人権裁判所は、11日、セメンヤ選手側に対する差別があったことを認める判決を下しました。

世界陸連は、2018年、男性ホルモンのテストステロンの値が高い女子選手に対し、薬などで数値を下げなければ、400メートルから1マイルの種目で国際大会に出場できないとする規定を定めました。

女性として生まれたものの、先天的に精巣も持っているためテストステロンの値が高いセメンヤ選手は、「数値を下げる薬は健康に影響を及ぼす可能性がある」などとして、この規定を撤回するよう求めて、CAS(=スポーツ仲裁裁判所)に提訴しましたが、CASは「規定は公正な女子競技のために必要である」とする判決を下しました。

この判決を受けてセメンヤ選手は、CASの本部があるスイスの最高裁判所に対して、CASの判決を覆すよう求めて提訴していましたが、訴えが認められなかったため、ヨーロッパ人権裁判所に対して、スイス側を相手取って訴えを起こしていました。

こうした中、ヨーロッパ人権裁判所は11日、「これまでの審理が正しく行われておらず、スイス側がセメンヤ選手を差別から守らなかった」とする判決を下しました。また、「スイス側が、セメンヤ選手に対する救済措置を適切に行わなかった」としています。

判決を受けて世界陸連は声明を出し、「規定は女子競技の公正な競争を守るために必要で、合理的な手段であるという見解に変わりはない」と述べましたが、セメンヤ選手が、規定について再び異議申し立てを行うことができるようになる可能性があります。