“謎”の大使を直撃…ロシアの本音は? 中国、インド“戦略的パートナー”北朝鮮“隣国”…異なる距離感【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「“謎”の大使を直撃…露の本音は?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●中国、インド、北朝鮮と「蜜月」 意外な発言も?
●「ほぼトラ」でロシアの命運は?
「8日、ロシアはウクライナの首都キーウの小児病院などに大規模な攻撃を行い、子どもを含む42人が死亡しました。こうした中、日本の岸田総理は11日朝早く、NATO=北大西洋条約機構の首脳会議に出席するため、アメリカ・ワシントンに到着。この会議で岸田総理が特に強調するのは、『ロシアと北朝鮮の接近』です」
「北朝鮮の弾薬がウクライナでも使われているという指摘をふまえ、アジアとヨーロッパの『共通の危機』であるということを訴えます」
「この会議に出席するため、ウクライナのゼレンスキー大統領もアメリカを訪問し、ロシアに対する国際的な結束が改めて強調されました」
「一方、ロシアの新しい駐日大使として、今年5月に正式に赴任したのが、ニコライ・ノズドリェフ氏。これまで、『謎』のベールにつつまれてきましたが、10日、初めて私たちのインタビューに日本語で応じました」
ロシア・ノズドリェフ駐日大使
「日本に来るたびに、いつも新しいことに出会っている感じがします」
「中国は…」
「インドは…」
「北朝鮮はロシアの隣国ですから」
森圭介アナウンサー
「ロシアに対する国際的な批判も高まっていますし、日本とロシアの関係も、いわゆる非友好的な状態でインタビューに答えてくれたことに驚きましたし、大使の日本語が堪能なことにも驚きました」
小林解説委員
「そうなんです。およそ1時間20分にわたったインタビューですが、ずっと日本語でのやりとりが続けられたんですね」
小林解説委員
「まず、この大使(ノズドリェフ駐日大使)何者なんだろうと思った方も多いと思いますが、現在52歳。20代のころ日本のICU=国際基督教大学に留学した経験があります。2000年代には再び来日し、ロシア大使館で一等書記官。その後も、ロシア外務省で日本担当の局長をつとめる『知日派』として知られている人物なんです」
山崎誠アナウンサー
「今回の赴任で初めて日本に、ということではなくて、これまでも日本で学んだり、働いたりする機会があったということなんですね」
小林解説委員
「ただ、駐日ロシア大使のポジションというのは、ウクライナ侵攻後の2022年に前任の大使が離任してから『空席』が続いていたため、今回およそ1年半ぶりの着任となったわけなんです。これまで、公式会見などは一度もなく、『謎』の存在とも言われています」
「大使が正式に着任した5月は、プーチン氏が5期目の大統領に就任したタイミングでしたが、今回大使へのインタビューで私たちが注目したのが、就任後にプーチン大統領が訪問したり、会談したりした3つの国です」
「今年5月には、就任後初めての外遊で中国を訪問し、習近平国家主席と首脳会談。小児病院へ攻撃を行った今月8日には、インドのモディ首相がロシアを訪問し、親密さをアピールしました」
「また、6月には北朝鮮を24年ぶりに訪問。金正恩総書記にプレゼントしたロシア製の高級車に2人で乗り込み、交互にハンドルを握りドライブする姿が話題となりました」
「欧米の経済制裁が強まる中、中国、インド、北朝鮮と蜜月ぶりをアピールするロシア。これらの国との関係は?と、大使に聞いてみると…」
──中国はロシアにとって欠かせない存在?
ロシア・ノズドリェフ駐日大使
「中国はロシアにとって極めて重要な戦略的パートナー。貿易・投資関係は極めて緊密です。これからも発展させていきたい」
──軍事的な面においても?
ロシア・ノズドリェフ駐日大使
「中国は色々な面において、ロシアと協力している。経済面で緊密な関係もありますし、技術の面においても、一般国民の交流も盛んに行っている」
──G7を中心とした世界経済あるいは安全保障は?
ロシア・ノズドリェフ駐日大使
「いま変わりつつあります。どの国も自分の主権をもって、自分の利益を大事にして国際協力をしていると思う。インドも全く同じだと思う。ただインドはロシアにとって、戦略的にきわめて大事なパートナーでその二国間関係は長い歴史を持っている。これからも二国間関係の歴史を大事にして、新しい未来も作っていきたい」
──北朝鮮のつくる武器・弾薬などもウクライナの侵攻において欠かせない状況?
ロシア・ノズドリェフ駐日大使
「そういった(武器弾薬の)提供はまったくないと思います。北朝鮮はロシアの隣国ですから、当然ロシアとしては隣国とできれば良い関係を築いていきたいと基本的に思います」
鈴江奈々アナウンサー
「インタビューの中でG7が世界の中心だという表現になったときに、すかさず反応していたことろにロシアの立ち位置というところが見えましたけれども、ロシアとの関係性でインドや中国、北朝鮮それぞれに使う言葉がちょっと違う点も気になりました」
小林解説委員
「大使の発言は、そのまま『ロシア政府の意思』として受け取ってもいいわけなんですが、中国とインドについては『極めて重要な』ですとか、『戦略的パートナー』などの言葉を使って、関係性の強化を強調したんですが、一方で、北朝鮮とは『隣国なので』として、あくまでも“お隣さんとしての関係”という言い方にとどめていた」
忽滑谷こころアナウンサー
「こう見ると、北朝鮮だけ少し温度感が低いのかなと感じてしまいますね」
小林解説委員
「やはり、新興国の中でも大国でもある中国やインドと、一方で弾道ミサイル発射を繰り返して国際社会から批判を浴びている北朝鮮とは、同列には語れない、という思いがあるのかもしれないと感じました」
小林解説委員
「では、アメリカとの関係はどうなるのか?」
「先日行われたテレビ討論会から、バイデン大統領に対する高齢不安が高まっていて、トランプ前大統領の『再選』の可能性が現実味を帯びています」
「そんな中、トランプ氏が繰り返し主張しているのが、『私なら大統領に就任前にウクライナとロシアの戦争は終わらせる』」
「トランプ氏はウクライナへの軍事支援を続けるべきではないと主張しているので、そんなトランプ氏の返り咲きに期待しているのか、についても聞きました」
──トランプ氏がもし当選したら、停戦交渉のテーブルにつく?
ロシア・ノズドリェフ駐日大使
「トランプ氏がどのような考え方を持っているか、ハッキリ分からないといけない。本当にしっかりした交渉の提案があれば、もちろん用意は十分にあると思うが、今まで何回もそういう交渉に積極的に取り組んできた流れがあると思うが、残念なことに成功裏に終えることはできませんでした」
森アナウンサー
「バイデン大統領はウクライナ支援に積極的ですから、トランプ氏になったほうがいいんじゃないかと思いましたけど、そこに関しては慎重な発言したね」
小林解説委員
「確かにトランプ氏は予測不能な面があって、ロシアに対してもいきなり何を言い出すかわからない、という不安要素もあると思うんですね。なので、“もしトラ”にはあまり大きな期待はしていない、ということなのかもしれません」
鈴江アナウンサー
「インタビューの中でロシアが小児病院を攻撃するなど、心が痛むニュースが続いていて、早く停戦しないものかと思うんですけど、その点については何か聞けたのでしょうか?」
小林解説委員
「停戦の条件ですけれども、ロシア側はウクライナ東部の4つの州、ここからウクライナ軍が完全に撤退すること、そして、ウクライナが今後、NATO=北大西洋条約機構への加盟を目指さないこと、この2つは最低限の条件としなければ、停戦の交渉のテーブルにはつけないと言っているんですね。この2つというのは、プーチン大統領がこれまで言ってきたことで、今回改めて大使としてもそういったお話があったわけですね」
鈴江アナウンサー
「停戦の道のりも険しいことがうかがえますけれども、こうやって大使に直接ロシアの考えを聞けるというのは、貴重な機会でしたね」
小林解説委員
「いまも日々、ウクライナ・ロシア双方で、多くの命が失われ続けています。それでも、両者の主張は平行線で、交渉の糸口さえ見つけられていないのが実状です」
(2024年7月11日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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