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43年前の北朝鮮による原敕晁さん拉致事件―実行犯の韓国籍の男死亡か

2023年10月24日 20:20
43年前の北朝鮮による原敕晁さん拉致事件―実行犯の韓国籍の男死亡か
北朝鮮による拉致被害者 原敕晁さん

43年前、大阪市の中華料理店で働いていた原敕晁さんが北朝鮮によって拉致された。

主犯とされる北朝鮮の大物工作員の名前から「辛光洙事件」と呼ばれるこの事件。関与したとされる韓国籍の男が、韓国で数年前に死亡していたという情報が、およそ1年前に日本側に寄せられていたことが捜査関係者への取材で分かった。

事件から43年。日本の警察当局は死亡の確認をすすめ、今後、容疑者死亡で書類送検する方針だ。

●北朝鮮の大物工作員が主犯か「辛光洙事件」とは

43年前の1980年6月。在日朝鮮人の男性が経営する大阪市の中華料理店で働いていた原敕晁さんが宮崎市の青島海岸に誘い出され、消息不明となったとされる拉致事件。

主犯とされる北朝鮮の大物工作員、辛光洙容疑者の名前を取り「辛光洙事件」と呼ばれているこの事件で共犯者とされるのが韓国籍の金吉旭容疑者だ。

生きていれば95歳となる金容疑者。しかし1年ほど前、韓国から金容疑者が数年前に死亡したという情報が日本側に寄せられていたことが捜査関係者への取材で分かった。

●スパイ容疑で韓国で逮捕――韓国籍の工作員金容疑者とは――

北朝鮮による拉致事件で国際手配されているのは男女合わせて11人。捜査関係者によると10人が北朝鮮にいるとされる中で、唯一韓国国内に在住していたのが金容疑者だ。

事件のあと、金容疑者は日本から韓国に渡航。原さんの拉致に関わった疑いを含むスパイ容疑で1985年に韓国当局に逮捕され、懲役15年の判決が確定したが、恩赦で釈放となり、韓国国内に暮らしていた。

逮捕当時は拉致への関与を認めていたという金容疑者だが、2000年には一転して韓国当局に拉致への関与を否定したという。

警視庁公安部は事件から26年が経った2006年に関係先を捜索。金容疑者と辛容疑者対し、原さんを北朝鮮に拉致した国外移送目的拐取容疑などで逮捕状を取った上、警察庁がICPO(=国際刑事警察機構)を通じて国際手配していた。

日本と韓国は、日本国内で犯罪を犯した外国人の身柄の引き渡しを要請して、日本の司法制度で裁く「犯罪人引き渡し条約」を結んでいるが、日本政府は原さんの拉致事件の主犯は辛容疑者であり、北朝鮮にいる辛容疑者の身柄が引き渡されていない以上、事案の全容解明が困難であることなどから正式に身柄の引き渡しを求めてこなかったという。

事件から43年。日本の警察当局は金容疑者の死亡の確認を進めていて、今後、容疑者死亡で書類送検する方針だ。

●容疑者の高齢化も問題に――拉致被害者の家族は――

拉致被害者の親世代だけでなく、実行犯の高齢化も問題となる北朝鮮による拉致事件。

拉致被害者家族会の横田拓也代表は、「加害者側が自由な世界で生きながらえていた一方、被害者は自由がない世界で苦しい時間を強いられていることに矛盾を感じるし憤りを覚える。同時に日韓の連携により人権問題解決するというお互いの価値観を共通した土台でこうした情報が共有されていることはとても意味がある。日米韓で拉致問題を早期に解決してほしい。」とコメントした。

金容疑者の死亡の情報が正しいとすれば、一連の拉致事件で容疑者が死亡が確認されるのはこれが初めてとなる。