“熱気欠いた?”ウクライナの国連演説 バイデン大統領の“表と裏”…「支援疲れ」指摘されるなか
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、国連総会で一般討論演説を行い、各国に支援の継続を呼びかけました。ただ、アメリカには支援継続を困難にする事情もあるといいます。
■バイデン大統領の本音は"ロシアとの和平交渉"?
有働由美子キャスター
「NNNがゼレンスキー大統領に国連出席初日の感想を聞いたところ、『Very good!』と言っていたんですが、今年の国連総会には、去年のような熱気はなかったということなんです」
「去年、ゼレンスキー大統領はリモートで参加し、演説が終わると各国の代表からはスタンディングオベーションが起こりました。それが今年は直接対面で訴えたにもかかわらず、演説終了後の拍手の時に立ち上がっていた人は見当たりませんでした。“支援疲れ”という問題も指摘されていますが…」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「鍵を握るのが、アメリカのバイデン大統領です。今回、どうやら"表向き"と、“裏テーマ”があるようなんです。まず表向きは『ウクライナとともにロシアの侵略に立ち向かおう!』と強い言葉で各国に支援を呼びかけていました」
「本音では、ゼレンスキー大統領に『早くロシアと和平交渉をしてほしい』と思っているというんです。そのため、今回の裏テーマは、ゼレンスキー大統領にアメリカ国内政治の現状をよく見て、戦争が長引いてしまうことについて考えてもらうことだと、アメリカ政治に詳しい明海大学・小谷哲男教授は話します」
■「追加支援」共和党下院の強硬派が反対
有働キャスター
「アメリカ政治の今というのは?」
小栗解説委員長
「ポイントは2つあります。まずは、アメリカ議会の動きを見ていきます。まさに今、バイデン大統領はウクライナへの240億ドル(約3.5兆円)もの追加支援を議会に要求しているんですが、共和党下院の強硬派は反対しています。議会で予算がまとまらず、政府機関の閉鎖にまで追い込まれる可能性がちらついているんです」
有働キャスター
「追加支援が難しいとなると、ゼレンスキー大統領も苦しいですよね…」
■来年秋に大統領選 トランプ氏が…?!
小栗解説委員長
「そしてもう1つが、来年秋のアメリカ大統領選挙です。共和党はトランプ前大統領が候補になる可能性が高く、(日本の)ある外務省幹部は『トランプ氏は選挙キャンペーンで、“ウクライナ支援にいくら使うんだ。大事なのはアメリカ国民の生活だ”などと必ずバイデン大統領を批判してくるだろう』と指摘しています」
「小谷教授は『もしトランプ氏が返り咲けばウクライナ支援の継続は基本的に考えないだろうし、ロシアに有利な交渉をするのは間違いない』とみています」
「それだけにバイデン政権としては、来年夏までに一定の戦果をウクライナがあげて、ロシアとの和平交渉が始まるのが望ましいというのが本音だというんです」
有働キャスター
「でも、ゼレンスキー大統領は、そこを妥協しますかね?」
小栗解説委員長
「そこは正直、アメリカもはかりかねていると、小谷教授は話します。ただゼレンスキー大統領としても、アメリカの支援継続が前提なので、それが難しいとなれば、どこかで態度を軟化させるかもとみているんです」
■今こそ“ロシアとどう向き合うのか”との視点に
有働キャスター
「辻さんはどう思いますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「アメリカをはじめ、国際社会がウクライナを支援するべき、しないべきで対立すればするほど、どんどん分断が起きて、その結果、ロシアを利する形になってしまうんじゃないかなと思います。そもそもはロシアが攻め入ったこと自体がすべての始まりなわけで、アメリカも日本も国際社会も、そのロシアとどう向き合うのか、という視点に改めて立ち返ることも必要だなと思います」
有働キャスター
「『和平交渉』という言葉が出てきましたが、この厳しい現実の中でも、国際法を破った国を“攻めた者勝ち”にしてはいけません。難しいことは分かっていますが、日本や世界が知恵を絞って外交のチカラを今こそ見せてほしいです」
(9月20日放送『news zero』より)