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原発を“占拠”ロシアの狙いは?「人道回廊」で合意の意味 専門家「攻勢を強めるだろう」

2022年3月5日 1:57

■なぜ原発を攻撃したのか?ロシアの思惑は?

有働由美子キャスター
「まずは、4日朝時点の状況を整理します。前日と比べて大きな変化は見られないのですが、南東部にあるザポリージャ原子力発電所が攻撃をうけました。地元当局によると、ロシア軍によって占拠されたということです。鶴岡先生、ヨーロッパ最大級の原発への攻撃の狙い、それから占拠したことでの影響は、この後どんなことが考えられるのでしょうか?」

慶応義塾大学 鶴岡路人准教授
「まず原子力発電所への攻撃というのは、取り返しのつかない結果をもたらす可能性がありますので、非常に危険で、国際法でも禁止されているわけです。日本政府も『ロシア政府の蛮行は断じて認められない』と、今までで一番強い言葉を使って非難しています」

「ただ、今回の行動は、原発の破壊を目的としたものではなかったんだろうと思います。占拠して支配下に置くことをロシアは狙ったんだと思います。といいますのも、この原子力発電所は、ウクライナ全土の4分の1ぐらいの電力を担っているわけですね。ここを管理下に置くということは、ウクライナ全土に対して、『電力はロシアが握っているんですよ』ということを示すことができるわけですね。これは政府に対しても、国民に対しても、非常に大きな圧力になるんだと思います。重要インフラとしての発電所を管理下に置くことによって、交渉も含めて優位に立つ、国民に対しても圧力を強めていく、そういうことが狙いだったんだろうと思います」

有働
「伊藤さんが気になることは?」

元競泳選手・伊藤華英さん
「チェルノブイリという経験をしているにもかかわらず、『原子力発電所を狙ったわけではない』と言っていましたけど、やはりこの、なぜこの攻撃を決断したのかな、誰がこの決断をしたのかな、プーチン大統領なのかな、というのが質問なんですけど」

鶴岡
「誰がということはなかなかわからないですし、一つ一つの行動はすべて大統領が決めいているとは思えないですけれども、ただこの重要インフラを確保するというのはおそらく、全体の計画にも入っていたことだと思います」

■2回目の停戦協議 “唯一”合意に至った「人道回廊」とは?

有働
「そしてこの原発への攻撃へ先だって行われた、2回目の停戦協議なんですが、唯一、合意したというのが、『人道回廊』の設置でした」

日本テレビ・岩本乃蒼アナウンサー
「人道回廊とは、民間人を避難させる脱出ルートのことで、設置されている間は、避難する人や食料や医薬品を運び入れる人々の安全を保証し、一時的な停戦もあり得るというものです。過去の紛争などでも設置されてきました」

■「人道回廊」の設置は攻撃激化の前触れ?

有働
「鶴岡先生、この『設置で合意した』、この意味合いはなんでしょうか?」

鶴岡
「これは小さな一歩、前進ということだとは思います。ウクライナの側としてはですね、この人道的な危機を避けたい、そして国民の犠牲を避けたいと、非常に切実なところがあると思います。そしてロシアの方も『人道的に戦争してますよ』というアピールとして、これを使うということなんだろうと思います」

有働
「先生、仮に『民間人が退避しました』となった、その後なんですけれども、これ攻撃はしないと考えられるんでしょうか」

鶴岡
「それが非常に危険でして、民間人がいなくなったんであれば、ある意味『攻撃しても問題ないであろう』という議論にもなってしまうんですね。しかもこの停戦の協議をしている中で、この人道回廊を新しく設置するということですから、まだまだ攻撃が続くということなわけですね。人道回廊によって市民を避難させた後に攻撃が続くと。ですから、次の交渉に向けて、ロシアはおそらくさらなる攻勢を強めてくるんだろうと懸念されます」

(3月4日放送『news zero』より)