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“銃の訓練”をする高校生たち 「台湾有事」を想定 兵役期間“4か月から1年に”延長 台湾の若者の本音は…有働キャスター取材

2023年7月26日 6:15
“銃の訓練”をする高校生たち 「台湾有事」を想定 兵役期間“4か月から1年に”延長 台湾の若者の本音は…有働キャスター取材

中国による軍事侵攻を想定した演習が行われている台湾。「防衛」の動きは“若い世代”にも広がっていて、台湾の高校生は市街地での戦闘で「敵を一掃する」という想定の射撃訓練を行っていました。有働キャスターが若い世代の本音を取材しました。

   ◇

有働由美子キャスター(25日 台湾・桃園市)
「こちら空港近くなんですけど、台湾軍の戦車がずっと並んでいますね。兵士の方がその戦車の前にいます。きのうから始まった軍事演習のために集まっているということです」

演習で想定されるのは、中国による軍事侵攻です。台湾軍の主力戦車が並びます。この部隊の役割は海からの上陸を防ぐことだといいます。兵士に話を聞きました。

有働キャスター
「緊迫感はいつもと違いますか?」

台湾軍人
「緊張感は高まっています。でも、しっかり準備しているので大丈夫です。いつも訓練をしていますので」

有働キャスター
「中国軍の軍事侵攻は怖くない?」

台湾軍人
「怖くないです。戦争は起きて欲しくないけど、準備はしていますから」

   ◇

この「防衛」の動きは、“若い世代”にも広がっています。21日に訪ねたのは、台湾南部・高雄市にある高雄市立三民高校です。

有働キャスター
「ダンス踊ってる。キレイな高校」

教官
「三民高校へようこそ。よくいらっしゃいました」

一見、日本でも見かけるような普通の高校ですが、教室の入り口には「体験教育基地」の看板がありました。その中で行われていたのが…

有働キャスター
「こちらですか? 射撃って書いてある」

教官
「市街地で(建物内の)敵全員を倒す戦闘を体験しています」

有働キャスター
「まだついていけない感じが…」

白い布の奥には、射撃訓練を行う生徒たちの姿が見えました。この学校では生徒らの「防衛への意識」を高めようと今年、この射撃場を開設しました。教官は、全員現役の軍人です。

台湾軍所属の教官
「ゴーグルをつけて、(防護)ベストを着てください」

有働キャスター
(ベストを着ながら)「リアルな訓練の…すごい複雑な気持ち。でもこれが現実…」

射撃場の中には、素早く銃を構え、連携して前進していく生徒たちがいました。訓練は実戦さながらです。

有働キャスター
「なんか言葉が…なんて言ったらいいのか、言葉が出てこない。個人的な感情としては怖い」

射撃訓練をしていた高校生に話を聞きました。

有働キャスター
「本当の銃だとやられるという恐怖は?」

高校2年生
「いいえ。戦いに行っているので、怖がっていられません」

   ◇

台湾では、来年から18歳以上の男性に義務づけている兵役期間を延長。4か月だったものが「1年」にのびます。ここにいる生徒たちも、その対象になります。普段は野球部で汗を流す男子生徒に聞きました。

有働キャスター
「兵役が延びることについてはどう思う?」

高校2年生
「大丈夫です。より多くのことを学べるから」

覚悟を決めたように見える一方…

有働キャスター
「その間、野球の練習をしていた方がいいなと思ったりする?」

高校2年生
「野球の練習がしたいです」

また、訓練には女子生徒の姿もありました。

有働キャスター
「実際に敵が来て、人を撃つんだとなったら撃てる?」

女子生徒は首を横に振りました。高校生たちの戸惑いが垣間見えました。

有働キャスター
「うーん。 平和であること、幸せであることを教えるのが学校なのに。どういう感じでこれをやってるんだろう」

   ◇

日常と“戦争の影”が交わる光景に、市民はいまの台湾の状況をどう思っているのか、台北の街頭で聞きました。

有働キャスター
「中国と台湾の関係が、いま緊張していると言われるが?」

台北市民
「私はそうは思いません」
「(緊張関係は)多少感じますけど、台湾はやるべきことはやっていると思います」

一方、こんな意見も…。

台北市民
「ウクライナ戦争が中国が喜ぶ結果になったら、中国は直接攻撃してくると思います。将来は(台湾以外の)平和な場所で暮らしていきたいです」

市民の思いは揺れています。

   ◇

台北市内の中国文化大学で、9月から日本への留学が決まっている陳さんに出会いました。日本の文化や歴史に興味を持ち、将来は日本で働きたいといいます。やはり、不安だというのが中国との関係です。

陳さん
「毎日、新聞やニュースでたくさん戦争についての情報が書いてあり、とても怖いです。自分の家とか家族とか失ったらどうしようと」

有働キャスター
「戦争は防げると思いますか?」

陳さん
「頑張れば防げると思います。個人的に(中国人と)交流するとか、戦争が起こらないようにしたい」

   ◇

有働キャスター
「若い人たちの声を聞いたのですが、いま台湾では、中国によるとみられる『偽情報』が急増しているんです。AIを使っての分析ももちろんですが、データの蓄積がないような情報は2000人以上のボランティアがファクトチェックする仕組みも始まっていて、そこにも若い方々が参加していました」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「なるほど。個人的にはロシアとウクライナの状況から、戦争の行動を具体的にとることのリスクが世界的に高まっているので、今すぐ何かが起こるとは思いませんが、それでも第二次大戦以来リスクは最大に近づいていると感じています。日本には米軍基地があり、徴兵制がなく、自衛隊は志願した人によって成り立っている。国民にとって戦争が“3ステップ遠い”ので危機は感じにくいけれど、やはり台湾は違うんだろうなと思いますね」

有働キャスター
「それは感じますね。市民ひとりひとりが台湾有事に備えて、それぞれのかたちで、いま自分ができることが何なのかということを考えなくては、あるいはしなくては、という空気を感じました。26日、台湾では初めて、利用客が最も多い国際空港を使って中国軍の侵攻を防ぐための軍事演習を行うということです」

(7月25日『news zero』より)