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「シファ病院」標的の正当性を主張 イスラエル軍 “人質連行”や“地下トンネル”の映像公開

2023年11月20日 19:57

イスラエル軍は、イスラム組織「ハマス」によって人質がシファ病院に連行されたとする映像を新たに公開しました。さらに、ハマスの地下トンネルの内部とする映像を公開し、病院を標的としたことの正当性を訴えています。

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イスラエル・テルアビブで19日、イスラエル軍の報道官が会見を行いました。

イスラエル軍報道官
「シファ病院で新たな情報が得られました」

公開された映像には、ハマスの人質とされる人物が複数の人物に押さえ込まれながら、病院の中を移動していく様子が収められていました。画面には、ハマスによる奇襲攻撃が行われた「10月7日」の表示があります。

別の映像では、人質とされる男性がストレッチャーに乗せられ、周囲には銃を持った人物が複数確認できます。イスラエル軍は映像について、タイ人とネパール人の人質が、ガザ地区最大のシファ病院に連行された際の映像だとしています。

19日には、病院の敷地内で見つかった「ハマスの地下トンネル」の内部とする新たな映像をイスラエル軍のYouTubeで公開しました。

映像はドローンで撮影されたとみられ、敷地内にカメラを向けると映る穴が、トンネルの入り口だといいます。カメラがその穴の中へ潜っていくと、円柱形の穴は一部が崩れていますが、らせん階段のようなものが確認できました。

イスラエル軍が発見したというハマスの地下トンネル。地上の入り口から、はしごとらせん階段が10メートル続き、そこから横穴が55メートルにわたって続いているとしています。カメラは地上の光が届かない奥へ…。突き当たりに見えてきた扉には、爆発に耐えられる「防爆扉」と、射撃をするための「銃眼」との表示がありました。

イスラエル軍はこうした映像を立て続けに公開し、病院を標的にしたことの正当性を訴えています。

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こうした中、シファ病院に残され、命の危険にさらされていた新生児たちの状況に進展がありました。WHO(=世界保健機関)によると、健康上の深刻な問題を抱えた31人の新生児が、19日、ガザ地区南部の別の病院に退避したということです。

しかし…。

ガザ地区保健当局の医師
「39人いましたが、8人が亡くなりました。何人かは深刻な状態で、1人は人工呼吸器をつけています」

この医師によると、新生児たちは不衛生な水を使ったミルクを飲み、嘔吐や下痢をしていたり、保育器の外にいたため低体温症になっていたりするなど、深刻な状態の子もいるということです。新生児たちは、20日にはエジプトへ移送される予定です。

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ロイター通信によると、18日にはイスラエル軍の空爆で、ガザ地区南部でも少なくとも47人が死亡するなど、戦火がさらに拡大しつつあります。

ガザ地区南部・ハンユニスではこの日、がれきの中で、カメラに向かって無邪気な笑顔を見せる子どもたちの姿がありました。中には、「戦争が終わってほしい。勉強して医者になりたい。友達の半分は死んじゃったから、戦争がすごく怖い」と話す子も。

アメリカの主要メディアは、イスラエルとハマスが5日間の戦闘の休止と引き換えに、人質を一部解放することで暫定合意したと報じました。戦いの終わりはいつ訪れるのでしょうか。

【解説】病院の内部映像や関連情報…信ぴょう性は?

イスラエル側は、特にシファ病院の内部の映像や関連する情報を連日出しています。公開映像の信ぴょう性について、日本テレビ・近野宏明解説委員に聞きました。

近野委員
「病院への“突入”という作戦をとにかく正当化したいというイスラエルの狙いがあるのは間違いありません。ただ、注意が必要なのは、実は“突入”というのは本当のところがよく分からないことです。病院がどれだけ守りを固めていたのか、病院にハマスの戦闘員はいたのか、また、どれだけいたのか、激しい銃撃戦があったのか、そのプロセス自体がほとんど明らかにされていません。それにもかかわらず、イスラエル側の主張に基づく“突入の成果”だけが公開されています。これはまさに情報戦の様相です」

藤井貴彦キャスター
「そうした中、今度は人質の解放と引き換えに一時的な戦闘休止があるのでは…という状況です」

近野委員
「これも、両者が正式な発表をするまでは、これも双方の思惑を含んで情報が流されている可能性もあります。情報をめぐるせめぎあいも戦争のひとつの現実といえます」

「伝えていく私たちもその都度、どの程度の信ぴょう性があるのか、意図せず一方的な主張に乗ってしまっていないか、引き続き十分に注意しながら伝えていかなければならないと考えています」