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【独自解説】「日本人を騙すにはネイティブでないと」中国系マフィアが日本人20人以上を“監禁”か 銃や暴力で脅し特殊詐欺などを強要…被害者が語る卑劣な手口「逃走することも死ぬこともできない」

2025年1月29日 16:00
【独自解説】「日本人を騙すにはネイティブでないと」中国系マフィアが日本人20人以上を“監禁”か 銃や暴力で脅し特殊詐欺などを強要…被害者が語る卑劣な手口「逃走することも死ぬこともできない」
ミャンマーで外国人の“拉致・監禁”相次ぐ

 政情不安が続くミャンマーで、中国系マフィアにより拉致・監禁され、特殊詐欺などを強要されている人が21か国6000人以上いると指摘されています。そして今、犯罪組織が人材確保のため狙いを定めているのが、私たち日本人だというのです。なぜ日本人が標的に?卑劣な“監禁”手口とは?ジャーナリスト・多田文明氏の解説です。

■“映画関係者のSNS”からオーディションに招待され…俳優が拉致・監禁「特殊詐欺の訓練を受けていた」

 2025年1月3日、映画のオーディションのため、タイへと渡った中国人俳優・王星さん。中国からバンコク・スワンナプーム国際空港に入り、手配された車で移動していましたが、ミャンマー国境付近のターク県・メソトで道中やり取りしていたガールフレンドへの連絡が途絶え、行方不明になりました。

 香港メディア『星島日報』によると、その4日後に保護された王さんは、「ミャンマーの国境からほど近い50人程度がいる建物で、監禁されていた。全員が髪を剃らなければならず、そこでタイピングなどの特殊詐欺の訓練を受けていた」と語りました。

 中国メディア『上海日報』によると、王さんは海外での俳優活動を視野に入れていた矢先で、2024年12月29日に、実存する映画関係者のSNSからタイ映画のオーディションに招待されたといいます。ただ、この映画関係者のSNSアカウントは犯罪組織により乗っ取られていた可能性があることが発覚。“なりすまし”は業界の専門用語を使い、巧みに誘ってきたということです。

 『星島日報』によると、王さんは「数年前にもオーディションでタイに行ったことがあったので、普通だと思った。国境を越えた後に騙されたことに気付いたが、怖くて抵抗できなかった」と話しました。

Q.王さんとしては「本物の映画関係者だ」と思ってしまいますよね?
(ジャーナリスト・多田文明氏)
「詐欺グループなので、本物の情報に見せかけて騙すのが上手いわけです。求人やオーディションなどは、本当に気を付けなければいけません」

■拉致・監禁の目的の一つに『特殊詐欺への加担』 拒否すれば食事ナシ・激しい暴行も…被害者が語る卑劣な手口

 実は、王さんが行方不明になったタイとミャンマーの国境周辺は、犯罪組織の拠点となっています。軍によるクーデターの後『軍事政権』と『武装組織』が内戦状態にあり、国境周辺を実質支配しているのが武装組織で、無法地帯だということです。

 ミャンマー情勢に詳しいジャーナリスト・永杉豊氏は、「中国系犯罪組織が現地の武装組織と組んでいるとみられ、マフィアタウンを形成している非常に危険な地域」だと話しています。

 中国系犯罪組織の監禁・暴行を告発したタイの市民団体によると、中国系犯罪組織はSNSで「タイで高収入の仕事」などと偽の情報を出し、集まった人たちをボートなどでミャンマーに密入国させるといいます。ジャーナリスト・永杉氏によると、拉致・監禁の目的は『人身売買』『強制労働』『身代金の要求』『売春』『特殊詐欺への加担』だということです。

 3か月ほど“監禁”・“詐欺”に加担した中国人男性(38)は、「毎日、詐欺をやらざるを得ない。逃走することも死ぬこともできない」と話していて、建物2~6階に詐欺グループが各2つずつあり、各フロアに24時間、銃を持った監視がいたといいます。もし詐欺行為を拒否すると、数日間食事なしで暴行を受けるということです。

 この中国人男性(38)は、もともとアルバイトでドラマのエキストラをしていて、2023年7月にSNSで見た『ドラマ撮影スタッフ募集広告』に応募。中国・雲南省のマンションの一室に集合すると数人の若者がいて、「極秘ドラマ」と説明され、携帯電話と身分証を預けたということです。

 その夜、車で山の中へ連れて行かれましたが、異変が起きました。行き止まりの場所にはナイフを所持した迷彩服の男たちがいて、「怖がらないで。一緒に山を登って“密輸品”を受け取ってきてほしい、報酬は払う」と言われたといいます。

 そして、山中を歩き、夜明け頃に山越え。何度も車を乗り換えた先にあったのが、農家や高層ビルが混在した町でした。商店の看板は中国語でしたが、行き交う人の外見がこれまでとは違うことで、この中国人男性(38)は「国境を越えた」と気付いたということです。

 その後、連れて行かれた“監禁場所”はミャンマー北東部の平屋の建物で、人身売買の拠点でした。部屋には手錠された若者70~80人がいて、ライフル銃を持った見張り役がいました。抵抗すると暴行を受け、食事は見張り役の食べ残しのみ、金銭・人間関係は搾取されたということです。そして、毎日やって来る犯罪組織のリクルーターに「パソコンを使えるかどうか」「中国を話せるかどうか」を聞かれ、“品定め”されたといいます。

 それから連れて行かれたのが、ミャンマー北東部のホテルでした。中国系詐欺グループの拠点で、各地から集められた数百人規模の人々が詐欺に“加担”していたといいます。そこでは、24時間銃を所持した警備がつき、午前10時半~深夜2時まで強制労働させられ、“成果”が悪ければ暴行されたということです。

 “作業”内容は、一人につきスマホ4台・パソコンを支給され、投資詐欺メールを送付。整備された“撮影場所”では、“投資に成功したビジネスマン”を装い、テレビ電話で会話もさせられました。

Q.俳優やエキストラが狙われる理由は、演技ができるからですか?
(多田氏)
「第一は『演技ができる人』、もう一つは『顔が良い人』です。いわゆるロマンス投資詐欺で騙せるのは美男美女ですから、犯罪グループが『顔の良い人は詐欺に引っかけるのに適している』とみていると思います」

■日本人20人以上が監禁の可能性 中国の犯罪組織「日本人を騙すにはネイティブでないとうまくいかない」

 タイの市民団体によると、ミャンマーの拠点では中国の複数の犯罪組織が21か国6000人以上を監禁しているとみられ、日本人も20人以上“監禁”されている可能性があります。最近、中国の犯罪組織が「日本人をたくさん集めたい」と話していたとの情報も…。

 中国人男性(38)によると、「大金で何人かの日本人と韓国人を買って、暗号資産の詐欺をやっていると聞いた。ボスの話では、日本人と韓国人を騙すには、ネイティブでないとうまくいかない」ということです。

Q.日本人がターゲットになっているということですよね?
(多田氏)
「そういうことです。日本人はお金を持っていますし、『日本語がおかしい』と詐欺に引っかからない人もいるので、ネイティブの日本人を求めているんでしょう」

Q.タイは観光地なので気軽に遊びに行く日本人も多いですが、そこから川を一本渡ったミャンマーでは、こんなことが起きているんですね?
(多田氏)
「そうですね。今回こうした情報が出たことで、皆さんが身構えて警戒できます。でも、もしこの情報がなかったら恐らく次々に誘われて、ミャンマーに連れて行かれることがあったと思います」

 詐欺グループの一員にならないために、注意すべきことが2つあります。

 まず、旅行・留学の際には要注意。多田氏によると、「行方不明になってもすぐ捜す人がおらず、狙われやすい」ということです。現地の人に安易についていかず、怪しいと思ったら一度大使館に相談しましょう。

 また、SNSの防犯意識を高めることも大切です。多田氏は、「マッチングアプリやオンラインコミュニティーなどSNSが日常となり、防犯意識が低下している」と指摘します。SNSのみでやり取りせず、電話など別の手法も検討し、「借金に困っている」などという個人情報は投稿しないことを意識しましょう。

(多田氏)
「SNSで高額報酬を謳い、外国人を誘って連れ去るケースがあるということで、タイの大使館も注意しています。だから、『何かおかしいな』『怪しいな』『心配だな』と思ったら、大使館に連絡して相談することが大切です」

Q.「犯罪組織はどんどん新しい手口を考えてくる」と思っておくべきですよね?
(多田氏)
「おっしゃる通りです。もし詐欺に引っかかってお金を騙し取られると、また犯罪グループが人を集めてしまいます。こうしたSNS型の詐欺があることを警戒して、『お金は絶対に出さない』ということを常に考えておかなければいけません」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年1月20日放送)

最終更新日:2025年1月29日 16:00
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