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【警鐘】トランプ氏と中国が手を組む最悪なシナリオも…中国国内で削除された習近平側近による“台湾統一戦略”に関する文章を入手!「新型統一戦争」呼ばれるその緻密な計画とは…?【独自解説】

2024年1月22日 16:30
【警鐘】トランプ氏と中国が手を組む最悪なシナリオも…中国国内で削除された習近平側近による“台湾統一戦略”に関する文章を入手!「新型統一戦争」呼ばれるその緻密な計画とは…?【独自解説】
習近平国家主席が描く“台湾統一シナリオ”とは?

 先日行われた台湾総統選の結果、中国から台湾への圧力が強まるのではないかと懸念されていますが、習近平国家主席のブレーンが書いた一冊の書籍に、台湾統一に関する中国の戦略が記載されていたといいます。その名も「新型統一戦争」。果たしてその驚くべき中身とは?そして、日本にも大きな影響を及ぼす“最悪なシナリオ”とは?「台湾有事は日本有事」と警鐘を鳴らす米中関係のスペシャリスト、キヤノングローバル戦略研究所・主任研究員の峯村健司氏が現地・台湾から解説します。

「人口ベースにすると世界の半分が選挙をする」 2024年は選挙イヤー 台湾総統選は“反中”が勝利 そして最後に控えるアメリカ…

 峯村健司氏は1997年に朝日新聞社に入社、北京特派員・ワシントン特派員・米中関係の編集委員などを歴任し、現在はキヤノングローバル戦略研究所・主任研究員、北海道大学公共政策学研究センター上級研究員をつとめています。多くの論客が“台湾有事”について議論する中、中国の内部文章を含めた資料を読み込み、具体的なシナリオを展開しています。

 2024年は選挙イヤーと言われていて、1月・台湾総統選、3月・ロシア大統領選、4月・韓国総選挙、11月・アメリカの大統領選と大きな選挙が控えています。

Q.選挙結果によっては大きく世界が動く年になりそうですね?
(キヤノングローバル戦略研究所・主任研究員 峯村健司氏)
「そうですね。実は人口ベースにすると世界の半分が選挙をするというとんでもない異例な年です。そうなると、選挙のない国が有利になるかもしれません」

 先日行われた台湾総統選ですが、約40%の支持を得て当選したのは与党・民進党の頼清徳氏です。頼氏は中国と距離を置いてアメリカとの関係を重視する立場です。そこから僅か7%差で敗れたのが最大野党・国民党の候友宜氏で、中国との緊張緩和を主張していて親中派が支持しています。躍進したのが支持率約26%の野党・民衆党の柯文哲氏で、アメリカと中国との中立の架け橋になると主張しています。

Q. 与党民進党の頼清徳氏は勝ちましたが、“笑顔なき当選”といわれてますよね?
(峯村氏)
「頼清徳氏の幹部たちと昼食を食べたのですが、『おめでとう』と言ってもかなり渋い顔をしていました。史上2番目に低い得票率でしたし、日本の国会にあたる立法院でも多数を取れずねじれ状態になるということで、『今後厳しい』というのがすごく会話の中でも出ていました」

Q.立法院がねじれているということは、民衆党の柯文哲氏をどれだけ取り込めるかというのが議会運営のキーポイントになるのでしょうか?
(峯村氏)
「民進党は柯文哲氏を取り込もうと一生懸命工作をしているのですが、柯文哲氏は“台湾のトランプ”ともいわれるかなり独特の人なので、うまく取り込めるかは微妙な情勢なようです」

 この結果に対して台湾の人々は、「頼氏は台湾を守ってくれると思う」という意見がある一方「台湾と中国は同じルーツを持つからもう分裂してはいけない」という声もあります。中国側は、「『一つの中国』という原則に堅持し『台湾独立』に反対する立場は変わらない。頼氏は台湾海峡の安定を壊すトラブルメーカー」と批判しています。峯村氏によると中国は、「頼氏を“台湾独立分子”と認定。中国側はこれまで以上に圧力を強めるだろう」とのことです。さらに「台湾有事の行方は、今年のアメリカ大統領選が最重要」だと語っています。

Q.台湾の人の独立への意識は?
(峯村氏)
「民進党の支持者は台湾独立を望んでいると言われますが、実はほとんどの人は今のままでいい、戦争はしたくない、しかし中国には絶対に取り込まれたくないという思いです。今のままが幸せなので、『頼むから余計なことはしないでくれ』という感じが強いです。頼清徳政権の幹部も『私たちは独立派と言われているが、全く独立する気はない。我々は現状維持がしたい』と強調していました」

 日本時間の1月16日、アメリカ・アイオワ州で行われた大統領選に向けた共和党の候補者選の初戦で、トランプ前大統領が勝利しました。トランプ前大統領は、「我々が国を取り戻す」「バイデン大統領はアメリカ史上最悪の大統領だ」とコメントしています。トランプ前大統領は、4つの刑事事件で起訴されていますが、NBCなどが行った調査では、「トランプ前大統領は有罪判決を受けても大統領にふさわしい」と64%の人が答えています。

Q.アメリカ人はトランプ前大統領が好きなんですね?
(峯村氏)
「トランプ前大統領は、独特のオーラがあって、演説を聴いている内にファンになってしまうんです。また、起訴されれば起訴されるほど『バイデンの陰謀だ』というトランプ前大統領の主張が裏付けされることになって、起訴されるごとに支持率が上がるという不思議な現象になっています」

2024年11月に行われる大統領選では、バイデン大統領とトランプ前大統領の一騎打ちの可能性が高いのですが、峯村さんによると「民主党と共和党の関係者に会ったが、トランプ前大統領が強い印象」とのことです。

Q.バイデン大統領の年齢というのがあるのでしょうか?
(峯村氏)
「すごく大きいと思います。2023年の10月にワシントンに行って民主党政権の幹部と話をしたのですが、『今一番何に関心があるかというと、ボス(バイデン大統領)が如何に転ばない靴を選ぶか』だそうで、彼らは『健司見てくれ、テニスシューズが一番芝生で転びにくいんだ』と嬉しそうに言っていて、冗談かなと思ったのですが、真剣に考えているようで、体調の衰えを気にしているようです」

「台湾は中国の一部と法で規定」「2週間の海上封鎖」「アメリカと手を組む」習近平国家主席の“戦略ブレーン”の著書から削除された幻の章、「反台湾独立から祖国の完全統一」その恐るべきシナリオとは…

 2023年9月、峯村氏は「中国『軍事強国』への夢」という本を出版しています。これは中国国防大学教授の劉明福氏の著書「強軍の夢」を翻訳したものです。この劉明福氏は、習近平国家主席の戦略作りや政策決定に影響を与える「戦略ブレーン」といわれています。しかし、著書「強軍の夢」が2020年に出版さたとき、中国国内では草稿の約6割が削除されたということです。なかでも、第5章 「反台湾独立から祖国の完全統一」は全部削除されてしまいました。峯村氏は「中国にとって都合が悪いと判断された」としています。その削除された内容は、「知恵を持って戦うことで敵の心を潰し、人命だけでなくインフラなども一切破壊せず併合を図る中国側の大勝利を目指すもの」で、劉明福氏は「新型統一戦争」と呼んでいます。

Q.ばれるとまずいことが書いてあったのですか?
(峯村氏)
「削除された部分も全部入手して翻訳作業をしていたのですが、訳しながら、『これは削除されるよな』と思いました。これから習近平国家主席が台湾を統一したいと思っているのに、そのブレーンが戦略をボロボロ喋ったら、『そりゃだめだと言われるにきまってるな』というような内容です」

 峯村氏が想定するシナリオによると、今年のアメリカ大統領選でトランプ前大統領が再選し、2025年1月に就任。大統領に就任したトランプ前大統領は、中国の最恵国待遇を撤回し“一つの中国”政策と“戦略的曖昧性”の見直しを行い、最大で約2700億円の武器を台湾に売却する方針を明らかにするといいます。

Q.トランプ前大統領が大統領に返り咲いた場合、中国に強く出ますか?
(峯村氏)
「側近に聞くと、トランプ元大統領は世論の風を読むのがとても敏感な人だそうで、今アメリカの世論は中国に対して極めて厳しい意見が強いので、演説などでも『中国ふざけるな!あいつらが仕事を奪ったんだ!』とも言っていますし、最恵国待遇も撤回すると言っていますので、これが引き金になります」

Q. 台湾は“ねじれ議会”となっていますので、アメリカから武器を購入できるかも怪しいのでは?
(峯村氏)
「台湾の立法院は過去にもねじれていたことがあり、その時アメリカから潜水艦売却の提案があったのですが、予算案が野党国民党の反対で通らなかったということがありました。今、同じ構図なので、武器を買えない可能性はあります」

武器の購入ができたとして、これにより台湾は、中国による軍事圧力に対向するためアメリカとの連携をさらに強めることになります。中国は、台湾への武器売却は中米関係を危うくする行為だとして、必要な対抗措置を講じるといいます。

 中国の台湾統一のシナリオですが、2025年1月に、習近平政権は「国家統一法」(仮)を制定
“台湾は中国の一部である”ことを法制化します。この法には、中国政府の管轄権が台湾領空や領海に及ぶことが明記されます。これにより、台湾の防空識別圏の範囲が中国の防空識別圏となります。

Q.こんな法律は習近平国家主席が言えばすぐできるのですか?
(峯村氏)
「できてしまいます。中国の関係者に聞くと、本当に中国の議会の中で議論している法律だということです。『お前のものは全て俺のものだ』という、まさに中国が得意とする“法律戦”というもので、まず法律を作って既成事実化するのです。今は曖昧な状態なので『決めた』としてしまうのが最初の方法です」

Q.中国の国民は「台湾は中国のもの」だと思っているのですか?
(峯村氏)
「中国は世論調査をしませんが、仮にしたとしたら100%が『当たり前だ、台湾は中国のものだ』と答えるでしょう」

「国家統一法」が施行された後のシナリオは、台湾海峡を通過する外国籍の船舶に対し、「海上臨検(船舶の調査)」を中国海警局(警察)が実施し、海上を封鎖します。峯村氏は、「あくまで軍事行動ではなく、自国の領海での“法執行”という名目なのでアメリカなど他国も動きづらい」といいます。さらに、中国は台湾海峡を含む東シナ海一帯で約2週間「台湾“封鎖”演習」を実施するといいます。

(峯村氏)
「海上封鎖で軍艦を出すと軍事行為になるのでアメリカなども反撃しやすいのですが、国内の警察権ですよとすると、アメリカが攻撃した場合アメリカが先制攻撃したことになってしまいますので手を出し辛いと思います」

その影響を峯村氏は、「臨検と軍事演習で台湾の物流はほぼ遮断される」といいます。さらに、日本への影響については、「日本の海運は9割が台湾周辺を通っている」ので大きな影響があると言います。

(峯村氏)
「このシナリオが実際に起こると、台湾は干上がりますが、同じくらい日本も干上がってしまう恐れがあります」

Q.中国は少子化で国力が落ちて行くと言いますが“台湾統一”は諦めないのでしょうか?
(峯村氏)
「習近平国家主席が若いころから知っている人に聞いたのですが、『習国家主席の頭の中には台湾しかない』というふうに言っていました。『経済がどうなろうとまず台湾だということで、統一を進めるだろう』ということです」

Q.今、台湾を統一するというのは急ぎ過ぎではないですか?
(峯村氏)
「無茶苦茶急いでいると思います。その理由としては、2023年に習国家主席が異例の3期目を認め任期を延長したことに、相当国内でも反対があったということです。その任期延長の理由として『私こそが台湾問題を解決する』と言っています。ですので周りは、任期延長したからには当然解決してくれると思っています。となると、一つのゴールは任期が終わる2027年ではないかと思います」

 シナリオによると、もし「国家統一法」が施行されたら、中国が“台湾独立派”と認定した人物は拘束・刑事訴追することを定め、最高刑は死刑となります。そして、中国内のすべての外資系企業に対し、“祖国統一”を支持する誓約書への署名を求めます。拒否した場合、会社およびその責任者は厳重に処分されるといいます。その後、署名拒否した北京・上海駐在の日本人が中国当局に拘束ということも考えられ、峯村氏は「拘束した日本人を“人質”に日本政府に米軍基地を使用しないよう圧力をかける可能性」もあり得ると言います。

Q.企業だけでなく各国の特派員なども非常に怖いですね?
(峯村氏)
「怖いです。私もかつて北京の特派員をしていましたが、6年間で25回拘束されています。安全保障などをしていたのでマークされていました。それでも当時はまだ『反スパイ法』がなかったのですが、今はありますし、それが去年アップデートしていますので、さらに危ない状態です」

Q.ほかにも、反戦デモが起きても在日米軍が動きにくくなると聞いたのですが?
(峯村氏)
「例えば、米軍基地の周りに10万人の反戦デモが取り囲んだ場合、基地に物資が運び込むことができなくなります。そしてこれを排除する法律が日本にあるかというと、実はありません。また滑走路の周りでバルーンを上げたりされると戦闘機も発着できなくなります。こういう状況になると米軍は基地が使えなくなります」

 このシナリオが現実になると、台湾の次期総裁は“エネルギー不足”“食料不足”のため、台湾全土に「非常事態宣言」を出すと予想されます。峯村氏は、「台湾の食料自給率は30%液化天然ガスの備蓄は約14日分しかない。台湾の人々の“心を潰して戦意を喪失させる”には十分な圧力」だといいます。

Q.現代版の“兵糧攻め”ですよね?
(峯村氏)
「おっしゃる通り“兵糧攻め”です。先ほどの劉明福氏が言っていた通り、台湾の人たちが『戦うのをやめよう、平和のために交渉しよう』という雰囲気になるようにもっていくのです」

 そして、台湾の次期総裁は、民間船舶が食料や生活必需品を運べるよう基隆(キールン)港から東シナ海までの「人道回廊」設置を求めます。習近平国家主席は、“人道回廊”を認める見返りに“統一”に向けた対話を交換条件に示すということです。峯村氏は、「台湾の人を極限まで追い込み、強制的に統一のための“対話”に応じさせる。これこそが中国側の言う平和的統一だ」と言います。

(峯村氏)
「このやり方だと劉明福氏が言っていた様に、台湾の半導体製造工場などを傷つけないまま統一できます。習国家主席は『中国人は中国人を殺さない』と言っているのですが、このシナリオだと、ぎりぎり『平和的』統一ができるというわけです」

 そして、峯村氏が予想する最悪のシナリオは、「トランプ前大統領と習近平国家主席が手を組む」というものです。

(峯村氏)
「トランプ前大統領にとって、中国の貿易赤字が憎くてしょうがないのです。一期目もとにかく全ての敵は貿易赤字なんです。仮に習近平国家主席が『アメリカのものをたくさん買って貿易赤字をなくしましょう』と約束して、『その代わり、台湾のことは目を瞑っておいてね』というと、おそらくトランプ前大統領は『いいよ。任せる』という可能性があるというシナリオです」

Q.トランプ氏にとって台湾の最先端の半導体技術が中国に渡ることは関係ないのでしょうか?
(峯村氏)
「台湾のTSMCの半導体技術は高くて、中国どころかアメリカでも作れません。トランプ氏は台湾について『台湾の連中は、アメリカの素晴らしい半導体技術を奪っていきやがった』と言っています。半導体は盾にはならなくて、むしろ恨みの対象なんです」

Q.このシナリオだとEUも経済制裁などはしにくいんじゃないですか?
(峯村氏)
「EUからすると台湾は遠いですので、金儲けの方が大事だということで、制裁はやったふり位になる可能性はあります。例えば、ウクライナは国連にも入っている独立国ですが、台湾の場合は国連には入っていませんし、正式な国交のある国も先日1つ減って12か国しかない状態です。今の台湾はいたって平和ですが、ここ半年くらいで台湾の人々の危機感も高まっていると感じます」

(「情報ライブミヤネ屋」2024年1月18日放送)

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