【独自解説】暴落したビットコインを関係会社が“爆買い”⁉就任式には“新・猛獣使い”を異例の招待…世界が注目するトランプ大統領の船出 演説の『言葉』から読み解くアメリカ・ファーストの真意とは―
2025年1月20日(日本時間21日)、アメリカ大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏。注目された就任演説で飛び出した“びっくりワード”と“肩透かし”に、早速世界が振り回されることに…。中国が用意したまさかの切り札とは?これからのアメリカの行方は?『読売テレビ』高岡達之特別解説委員の解説です。
■『大統領令』記録達成なるか?トランプ大統領らしさが垣間見えた就任式
トランプ大統領らしさが表れていたのが、就任式の映像です。「中身を読んでいるんだろうか」とよく言われますが、堆く積まれた大統領令に独特のサインで署名しました。
そして、「俺がサインしたペンを持っていけー!」とでも言うかのように、署名に使ったペンを何本もオーディエンスに投げていました。まるで“アイドルのショー”のようですが、トランプ大統領らしいシーンです。
初日に議会を通さず大統領が命令を下す『大統領令』は、これまでもいろんな人が記録を持っていますが、今回は一日100本以上で記録になるそうです。ただ、アメリカのメディアですら今のところ正確に計算できていませんので、まだ目標を達成できたかはわかっていません。
■「“より多くの人が共感すること”に戻したい」トランプ氏が発した『常識』の意図
では、世界が一番注目した『就任演説』を紐解きます。私が注目したのは、登場した“ことば”です。今までのトランプ氏ならあまり使わないような言葉が、たくさん出てきました。前回は、吠えるようなアピールの激しい言葉でしたが、今回はトーンが落ち着いていました。
いきなり、『常識』という単語から出てきました。トランプ氏を批判する人は、「あなたが“常識”?」という話になります。しかし、トランプ氏が言いたいのは、いろんな政策をやる時に、“今の時代”というよりも、「“自分たちが教育を受けたもの”“より多くの人が共感すること”に戻したい」ということです。
今までのアメリカは“少数派”、例えば「体は男性だが意識は女性」という人も大事にしましょうという流れで来たのですが、トランプ氏はいきなり「性別は男性と女性のみ」と断言しました。当事者からすると、大変傷つく言葉です。
そして、コロナの対応が不適切だったとして、WHOを早速脱退。「パリ協定も抜けます」と初日に言ったわけです。だから、『常識』という言葉は、2025年の世界の常識というよりは、「アメリカの常識をもう一度やり直す」という意味で使われました。
■『緊急』と『非常』から見えるトランプ氏の思い エネルギーと不法移民の問題
もう一つが、『緊急』『非常』という表現を使いました。「大統領ではなかった4年間にいろいろ勉強したんだろう」というような話がありますが、そうだと思います。アメリカ大統領の権限に『緊急』と『非常』が付くと、かなり力が強まり、法律を飛び越えるようなこともできます。
まず、緊急という言葉がついたのは『エネルギー緊急事態宣言』です。これは、「化石燃料を掘って掘って掘りまくれ!」ということです。アメリカはとにかく物価が高いので、気候変動など地球のことを考えて太陽光をのんびり待っているよりも、世界の流れに逆行しようが、産油国のアメリカは化石燃料をどんどん使いましょうということで、『緊急』をつけました。
そして、『非常』が付くと、より大統領の権限が強まります。「トランプ氏は1期目でやりたかったけど周りが止めた」といわれているのが、戦争以外の『軍』使用です。アメリカは強大な軍を持っていますが、議会にも国防総省にも、「軍隊は国家のための戦争に使うものであって、戦争以外に軍隊を使うことはあり得ません」と言われました。
でも今回は、不法移民対策として非常事態を宣言しました。『非常』という言葉を使い、「メキシコとの国境の警備に正規軍を出すことも考えろ」というようなことを言いました。
■『平和をレガシーに』その真意に世界が驚き?トランプ氏にとって、平和とは…
そして3つ目が、『平和』という言葉です。トランプ氏は演説で、「平和こそ私がレガシー(後の世に遺すもの)としたい」と話していました。
その解説は「もう戦争はしない」ということですが、これは日本からすると、「台湾有事にも来ない」とも取れる言い方です。そして、遠く離れたウクライナのことなどにも、「巻き込まれないようにする」と言っています。
平和を考えているなら良いではないかという見方もありますが、トランプ氏は「そのために、今でも世界最強といわれる米軍をもっと強くする。そうすれば皆、逆らわないだろう」ということも言っているので、先ほどの『常識』もそうでしたが、『平和』の意味が世の中とは少し違う印象です。
■身構えた世界に壮大な“肩透かし”…就任前と大きく変わった『関税』の今後
トランプ氏が「初日に全部やる」と言っていたので、日本もそうですが世界中が身構えていましたが、“肩透かし”となりました。その最たるものが、『関税』です。日本も含めて世界中に「即日に関税をかける」と言っていましたが、結局かけませんでした。
カナダとメキシコへの関税は、就任前は「就任初日に署名」と言っていましたが、就任後は「2025年2月1日にやるつもり」と条件だけを話しました。しかし他の国、中国などに関しては、何も言っていません。
今は、「しばらく待つ」と言っています。その間に、どの関税を上げるのか下げるのか、どの国に対してやるのかを考えるとしていますが、言っていることが就任前と大きく変わってきました。
カナダとメキシコについても、「不法移民と麻薬の侵入を改善したら、2025年2月1日にやるつもり」としていますが “つもり”なので、また変わるというのが例の“交渉”でしょうか。
■「アメリカを『ビットコイン』超大国にする」と発言も…大暴落の背景とトランプ氏の“策略”
もう一つ肩透かしだったのが、『ビットコイン』です。アメリカにも日本にも、トランプ氏の就任でお金を儲けたいという人がたくさんいます。
『ビットコイン』は架空のお金のように思えますが、政府が発行する株みたいなもので、市場や取引があり、安く買っていると儲かるわけです。
トランプ氏は「アメリカを『ビットコイン』超大国にする」と言っていたので、就任直前まで1ビットコインの価格が約1700万円と史上最高値を更新し、凄いことになっていました。しかし、これについて演説で触れてくれるだろうと思っていたら、全く言及しませんでした。それで、『ビットコイン』を買おうとしていた人たちが失望し、暴落しました。
と思ったら、暴落した後にトランプ氏の関係企業が“爆買い”していたらしいです。普通だと、「大統領が何てことを!」と言われますが、『好き放題やる』というトランプ政権の一つの象徴です。
■様々な問題に揺れる中国、“まさかの切り札”でイーロン・マスク氏を利用か
どういう立場を取るか微妙なのが、中国です。即日の関税はなかったので、少しホッとしているところがあります。中国政府はこの数日とても頑張っていて、韓正副主席を派遣して、「中国が一番嫌いだ」と言っていたJ.D.バンス副大統領といち早く会って握手をし、アメリカ側から「経済貿易関係は米中双方にとってとても重要」という言葉を引き出しました。この言葉を引き出して握手しただけでも、すごいことです。
トランプ大統領本人も、一時は中国が情報を吸い取っているとして『TikTok』に反対していましたが、自身の支持者が使っていると聞いて、利用禁止に75日の猶予を与えると言いだしました。
ここでイーロン・マスク氏が登場するわけですが、中国が強硬な対応を取るトランプ政権に向けて用意してきた切り札が、イーロン・マスク氏の母でモデルのメイ・マスク氏です。
息子のイーロン氏は、いろんな産業を作った世界一の金持ちです。今、中国では、「そんな出来の良い息子をどうやって育てたのか」というメイ氏の本がベストセラーになっています。“子育てと知恵の象徴”として、中国はメイ氏を頻繁に呼んで、VIP待遇で多額の謝礼を払って講演してもらっています。
それは、息子も気分が良いですよね。だから、『TikTok』をイーロン氏に買ってもらったらどうかという仲介を、メイ氏がするのではないかという話も出ています。
■就任式に“お気に入り”を異例の招待 世界が注目するトランプ氏の今後
かつてトランプ氏は、世界の政治家の間ではビギナーだったので、間を取り持ったのは安倍晋三元首相だといわれました。そして今回、一番そばに呼んでもらったのは、イタリア・メローニ首相です。これは、実は異例です。
メローニ首相は“新・猛獣使い”といわれていて、右寄りの国家のトップだといわれています。普通は、就任式に首相を呼んではいけませんので、日本からは外務大臣が行きました。メローニ首相は、異例で呼ばれています。トランプ氏は、メローニ首相の言うことを非常に聞くそうです。
世界は今後、どのようにトランプ氏の船出を見ていくのでしょうか。『言葉』も『仕草』も大切です。
(「かんさい情報ネットten.」2025年1月21日放送)