【性的同意】どこまでが“OK”?どうやって確認?自分も相手も大切にするために知っておきたい、性的同意のためのコミュニケーション
「性的同意」という言葉を日頃から意識している人は少ないかもしれない。しかし、きちんと知っておかないと性暴力の加害や被害につながってしまう可能性があるという。どうやって性的同意を取るべきか、どのラインならばOKなのか。専門家の視点をもとに、よりよいコミュニケーションについて考えた。
(2022年3月8日配信『Update the world #15』より)
■「イヤよイヤよ」は、「イヤ」
「家に泊まりにきたら“OK”のサイン」。一昔前の恋愛マニュアル本で書かれていそうな言葉で、男女や世代を問わず当たり前の価値観として捉えている人も多いかもしれない。しかし、この認識は危険だという。番組では、このアウトオブデートな価値観をアップデートしていくため、まずは、男女の異性愛のケースを例にとり、細かく分けて考えてみた。
1:2人きりで、女性が男性の家に泊まりに来た
2:2人きりの家で、一緒にお酒を飲んだ
3:キスをしたら、拒否されなかった
4:その先に進もうとしても、イヤとはいわれなかった。
このうち、どこからが「性行為に同意」しているといえるだろうか。弁護士として性被害やDVの裁判を多く担当する上谷さくらさんは、次のように解説する。
産婦人科医で性教育の講演を全国の学校で年間100回以上行う高橋幸子さんは、子どもたちに「交際の12段階」を使って性的同意について教えている。
「1:目と目が合う、2:言葉をかわす、3:並んで歩く。この段階は友達同士でもよくあることです。
次に、4:手をつなぐ、5:肩を抱き寄せる、6:腰に手を回す、7:近い距離で向かい合う、8:見つめ合う。この段階は親密な関係で行うこと。親しい間柄だと思っていないのにこのような行動を取ると、相手に勘違いされるかもしれないため、してはいけません。
最後に、9:唇が触れる、10:互いの性器に触れる、11:裸で接触する、12:性器の挿入を伴う性行為。ここまで進むと性感染症、12では妊娠の可能性も発生します。
たとえば、9のキスまでは望んでいたとしても、その先はまだというケースもあります。ひとつ同意があったからといって、その先が自動的にOKというわけではありません。性教育の現場では、性的なアクションを希望する側が一つひとつ言葉で同意を取らなければいけないと教えています」
では具体的にどうすれば性的同意を確認できるのか。高橋さんは実際に寄せられた相談をもとに答えた。
■相手の希望を叶える必要はない
「お互いが性行為をしたい、と思っていることを双方が確認することを『性的同意』といいます。この場合、すべて性的同意が明確に取れているとはいえません。1・2を性的同意とするのはアウト、3・4はケースバイケースですが、微妙なラインです」
2人でお酒を飲んでいても、家にあがっても、それは性的行為に同意したことにはならない。「イヤよイヤよ」は好きのうち、ではなくて「イヤ」。そこを都合良く「同意があった」と解釈して性的行為をすることは、性暴力になる可能性もある。
番組では、明確なラインがないことの難しさについて質問が。上谷さんも、この点については日本人特有の難しさもあると話す。
「決まったルールがあるわけでもありませんし、日本人の場合、言葉によらないコミュニケーションを好む側面もあります。一方で、女性がどうしていいか分からないままに進んで、最終的に傷ついてしまう例も少なくありません。やはり丁寧にお互いの気持ちを確認し合うことが大事だと思います」
「高校生から『相手から求められて断れないとき、どうしたらいいですか』とよく聞かれます。そのときは、『どうして断れないと感じるのか』を考えてほしいと伝えています。対等な関係なのだから、相手の希望を叶えなければと思う必要はありません。自分がどうしたいかを自分の言葉で伝えることが一番大切だと思います」
弁護士の上谷さんは、必ずしも言葉でなくてもいいと語る。
「夫婦やカップル間など、言葉以外で確認する関係が確立しているのであれば、明確な言葉にしない方法もあります。そのためにも一度どこかのタイミングで話し合って約束事をつくる関係性づくりも大切です」
ここで番組出演者から、恋人同士や夫婦においても、性的同意が必要なのかという質問が寄せられた。弁護士の上谷さんは、最悪の場合、犯罪が成立するケースもあると解説する。
「2人がどういった関係性であっても、性的同意がない性行為はゆるされるものではありません。長く一緒にいても、体調や気持ちもありますし、性的同意をその都度とることは重要です」
一方で、男性側が断られると自分が拒絶されたと思ってしまうケースも聞く。弁護士の上谷さんも、“断られた”ことが原因で離婚になった事例があると語る。
「夫側が2回連続で断られて、それ以上いえなくなって、セックスレスになったという話も聞きます。離婚調停では妻側から離婚原因がセックスレスだと主張されるケースもあります。コミュニケーション不足が大きな要因だと思いますね」
■男/女ではなく、人間同士として話し合う
これまでの議論を経て、男性学が専門の社会学者田中俊之さんは、前提に問題があると語る。
「これまでの内容は、男性がセックスをしたいと考えていて、女性がイエスかノーを決める文脈です。男性がリードするという固定観念自体をアップデートしなければ、解決できない内容だと思います」
そのためにもフェアな関係性を築くことが一番大切だと続ける。
「性の問題に限らず、日頃からパートナーとお互いの考え方について話し合うこと、対等に自然に意見交換することが信頼関係の構築につながります」
性的同意において重要なのは、対等なコミュニケーション。双方が自分の考え方や思いを伝えて信頼関係を築いていくことが、性的同意が取れた豊かな性生活につながっていくだろう。
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この記事は、2022年3月8日に配信された「Update the world #15 “性の話はタブー?”をアップデート」 をもとに制作しました。
■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。