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楽しくてお金ももらえて地域貢献 新たな旅のカタチ「おてつたび」とは

2022年3月26日 20:00
楽しくてお金ももらえて地域貢献 新たな旅のカタチ「おてつたび」とは
新たな旅のカタチ「おてつたび」とは

「旅に行きたいけれど、出費がかさむ・・・・・・」。そんな悩みを解決するのが、「おてつたび」。楽しくて、お金ももらえちゃう新たな旅のカタチだ。株式会社おてつたびCEOの永岡里菜さんとともに、地域も旅行者も元気になる旅のあり方を考えた。

(2022年2月25日配信『Update the world #14』より)

■地域も人も元気になる新しい旅とは?

コロナ禍で世界的に旅行に行きづらくなった今、「サステナビリティ」につながる新しい旅行のカタチが生まれつつある。その1つが、「おてつたび」。コロナ禍でも登録ユーザーが倍増している、注目の旅のスタイルだ。株式会社おてつたびCEOの永岡里菜さんは、おてつたびについて次のように説明する。

「『お手伝い』と『旅』を掛け合わせた造語です。日本各地のまだまだ知られていない地域と旅行者を『お手伝い』で結びつけて、地域も人も元気になる新しい旅のカタチを提案しています」

旅行者にとっては、楽しいうえにお金ももらえる。地域にとっては、人手不足解消につながり、知名度向上にもつながる。まさにいいことづくめの旅のリアルに迫る。

■旅を満喫して、しかもお金ももらえちゃう!?

今回紹介するのは、「日本最北の村でイチゴ農業体験!しかもお金ももらえちゃう旅9泊10日」。旅のプランを順に追っていく。

まず1日目。自己負担の交通機関で現地集合。稚内空港からバスを乗り継ぎ、およそ1時間で日本最北の村・猿払村のバスターミナルを目指してもらう。そこに立っている案内人の目印は、なんと「ホタテ」。猿払村の名産品を持った猿払ナビゲーターが旅行者を歓迎する。

猿払ナビゲーターと合流した後は、宿泊施設へ。宿泊先は猿払村が移住体験者向けに用意した最新式のおしゃれで快適な住居。寒さ対策も万全で、Wi-Fi環境も完備。おてつたび期間中は無料で宿泊が可能だ。

さて、2日目からはおてつたびの本番、イチゴの定植作業。冬場は定植作業だが、夏場は収穫のお手伝いもあるとのこと。お手伝いは、朝9時から午後3時まで。それ以外の時間は、地域の観光も自由にできる。

北海道において「イチゴ」が名産というイメージを持つ人は少ない。なぜ猿払村でイチゴ栽培のおてつたびが行われているのか、永岡さんに伺った。

「たしかに猿払村は、ホタテを中心とした漁業や酪農が有名な地域です。しかし新たな産業にも挑戦できないかと考え、今力を入れているのが『イチゴ』なんです。最新のIoT設備を使った生産を進めています。実は、夏の涼しい環境がイチゴ生産に適しているんですよ」

期間中の楽しみは、イチゴ農業体験ばかりではない。その景色も魅力だ。オホーツク海から見える景色やライダーの聖地とよばれる「エサヌカ線」など、たくさんの風景を楽しむことができる。

ほかにも、地域住民との交流機会も。地元のそば屋でのそば打ち体験は参加者から人気を博している。そうしてあっという間の10日目、最終日には感極まって涙する人もいるという。

「猿払村のおてつたびに限らず、空港で涙する方や文通を続けられる方、その後も足を運んでいる方は多くいらっしゃいます。第二・第三の故郷ができたと表現する方もいますね。中には、定住・移住を決める人もいるんです」

そして気になるお金。7日間1日5時間の「お手伝い」で、計3万5000円が支給される。もちろん、現地までの移動費や食費は自分で払う必要があるが、それを鑑みても、かなりお得な旅のカタチといえる。

「旅の交通費はボトルネックになりがちですし、特に著名な観光名所のない地域ほど、交通の価格競争が起こりづらく、値段が上がってしまうという負の連鎖があります。地域でお手伝いをしてもらうことで、行ってみたかった地域を旅するきっかけになればと考えています」

■おてつたびを通じて、地域のファンをつくる

ここまでの旅のプランを聞いて、出稼ぎやリゾートバイトを想像された方も多いのではないだろうか。永岡さんは、おてつたびを新しい旅のあり方にしていきたいと語る。

「もちろん人手不足は地域の課題であり、そこをお手伝いすることは大事な要素です。しかしそれだけでなく、地域のことを知ったり、地域の方々と交流したりする時間を必ず設けていることに、おてつたびの特徴があります。猿払村以外にも、日本各地のいろんな課題を抱えている地域とご一緒していますが、それぞれの地域でファンをつくっていきたいと考えています」

おてつたびのカタチは、農業体験だけではない。空き家問題に悩む島根県江津市では、空き家のリノベーションをお手伝い。かつては港町として栄えた街で、江戸時代からの歴史的な町並みを楽しめる。もちろん、経験は必要なし。障子貼りや片付け、清掃など未経験の方もできる簡単な作業で地域に貢献できる。



新しい旅のカタチを提供するおてつたびは、コロナ禍にもかかわらず、登録者数は急増している。この状態について、永岡さんは次のように解説する。

「コロナ禍で海外に行きづらくなったことで、国内に目を向ける人が増えたのだと思います。中には移住先を探している方もいます。これ自体は、非常にポジティブなことであり、これからも発信していきたいですね。受け入れ先からも、外国人技能実習生が来られなくなって困っている、GoToトラベルで急にお客様が増えて働き手の調整が難しいなどの声も上がっています。うまくマッチングしていきたいですね」

旅行に行くことと、働くこと。二者択一の選択のように思えるが、どちらも選び、しかも地域にも貢献できる選択肢がある。新しい旅のあり方として、検討してみてはいかがだろうか。

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この記事は、2022年2月25日に配信された「Update the world #14 地球も人も“元気になる”旅のカタチ」 をもとに制作しました。

 

■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。