地域密着型スーパーの独自戦略 驚きの安さ&店ごとに違う品ぞろえ バイヤーに密着
東海地方で展開し、店舗の数を次々に増やしているスーパー「タチヤ」。遠くから訪れるお客さんも多いというタチヤの最大の特徴は、店ごとに違う品ぞろえ。そして、値段の安さだ。コロナ禍で売り上げを伸ばす「タチヤ」の好調の秘密を探った。
■店ごとにバイヤーがいる「個店経営」
タチヤの中でも最大級の店舗、名古屋のみなと店。青果担当バイヤーの吉田さんは、買うと決めたら豪快に買う決断力が持ち味。
タチヤは多くの大手スーパーと違い、それぞれの店にバイヤーが常駐している。地域によって住む人も違えば売れる商品も違う。
それぞれのニーズにきめ細やかに対応するため、店のバイヤーが自分の店で売るものだけを仕入れる仕組みだ。そんな吉田さんのこの日のイチオシは、ちょうど出回り始めたゴーヤーだ。
■安さのワケは…
吉田さんの1日は午前6時すぎに始まっていた。市場を訪れた吉田さん、大切にしているのは仲卸業者とのコミュニケーション。
いい関係を築くことで、その日安い商品の情報が得やすくなるのだという。そして、仲卸業者からこの日すすめられたのがゴーヤー。その数は何と1048本。普段売っている数の、10倍だ。
あまりの量に躊躇した吉田さんだったが…ほかの野菜をずいぶん安くしてもらったこともあり、思い切って全部買うことを決断した。
■山のように積まれたゴーヤー
そうして、みなと店には大量のゴーヤーが積まれることに。鮮度にこだわり、仕入れた野菜はその日のうちに売り切ることをモットーにしているタチヤ。
不安げな同僚をよそに、吉田さんは「しっかりと見て。全部なくすんできょうは」と意気込む。値段は前日の半額、1本100円で販売することに決定した。
この価格では利益はでないが、これをきっかけにお客さんが来てくれればお店全体にメリットがあると考えたのだ。
■チラシを作らないスーパー
午前10時前、みなと店がオープン。吉田さんはスマホを片手に、店内を歩き回りそのまま裏へ。実はこれも売るための戦略。
タチヤは店ごとに仕入れるものが違うためチラシは作らず、代わりにSNSを使って宣伝している。吉田さんは「ゴーヤーがいっぱいあるので助けにきてください」と書き込む。
■地域のニーズ反映 店ごとに違う品揃え
一方、車でおよそ50分離れた扶桑店を訪ねてみると…確かに品揃えが違った。野菜の特売品はゴーヤーではなく、「ぶなしめじ」。
扶桑店の野菜のバイヤーで、店長も兼務している三宅さんは、ぶなしめじを4個100円で売る戦略だ。
「これだけで100円っていうお値打ち感を出して。それで数や量を売る(三宅さん)」
鮮魚売り場を見ても、違いは明らか。みなと店は鮮魚がたくさん売られていたが、扶桑店は貝が盛りだくさん。担当者はこう語る。
「こっちは岐阜に近くて一軒家が多いので、(多くの人が)BBQをやるって話を聞いている」「地域性にあわせてやっていこうと思って」
地域によって変わる売れ筋を常に反映しながら、商品を仕入れているのだ。
■バイヤーとお客さんは顔なじみ
みなと店では、あるお客さんが吉田さんに話しかけていた。フキを使って大量の炊き込みご飯を作りたいというお客さんが、バイヤーの吉田さんに直接注文していたのだ。
地域密着のタチヤでは、お客さんとバイヤーも顔なじみ。お客さんのニーズを直接聞くことができるのだという。
■その日のうちに“売り切る”戦略
そして、ゴーヤーの方はというと…若干ペースが落ちている様子。まだ売り場に並べられていないゴーヤーが入った段ボールも、たくさん残っている。午後になっても期待したほど売れ行きは伸びず、心配そうに売り場を見つめる吉田さん。
そして、とうとう閉店までは残すところ1時間ほどに。すると、売り場のスタッフたちが思い切った行動に出た。ゴーヤー2本を赤いテープで巻いて、それを100円で売り出したのだ。吉田さんが思わず「やりすぎです」と苦笑するほどの大胆な値下げ。
タチヤでは、最初の価格はバイヤーが決めるが、値下げのタイミングや値下げ額は売り場スタッフが自由に判断。吉田さんも、そこに口出しはしないのだ。
2本で100円のゴーヤーはどんどん売れていき、ついに完売。ほかの野菜の棚も空っぽになり、この日も無事に野菜を「売り切る」ことができた。吉田さんはこう話す。
「利益とか売り上げとかありますけど、あまり考えずとにかく1円でも
安く売ることを意識して喜んでもらいたいなと思って1日やっています」
好調のウラには、地域に根ざしたスーパーの、独自の工夫と知恵があった。
※詳しくは動画をご覧ください。(2022年5月18日放送「news every.」より)