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竪穴住居を作り文明をゼロから築く…“縄文時代”を再現した30代サラリーマンの2人 きっかけは?

2022年10月12日 18:00
竪穴住居を作り文明をゼロから築く…“縄文時代”を再現した30代サラリーマンの2人 きっかけは?

不自由なく生活できる現代で、既存の道具を使わずに火を起こし、土器や竪穴住居などを作る、そんな縄文時代の暮らしを再現する30代の大手企業に勤める2人組がいます。

「週末縄文人」(@wkend_jomonjin)というユニット名、コロナ禍をきっかけに、家族が所有する山中の50坪の土地から“縄文人生活”をはじめ、現在は約2000坪の借地で、活動を本格化しています。

2人は、自ら撮影・編集した“縄文人生活”の様子を、YouTubeとTwitterに投稿し、8月23日のツイート「現代の道具を使わずに竪穴住居を作り、週末そこで暮らしてる。穴はとがった棒で堀り、木は3日かけて作った石斧で切った。ちなみにサラリーマンである」には6.2万のいいねが付いていて、反響を呼んでいます。

完成まで30日かかったという竪穴住居の中は、広々としていて、6人程なら余裕を持って入れるということで、2人で生活するには十分な広さです。また、雨が降っても浸水はしないということですが、「警報レベル」に達する大雨が降ると雨漏りすることもあるといいます。

同じ会社の同期入社で、社会人1年目からお互いに自然で遊ぶことが好きだったことから意気投合したという「週末縄文人」の2人。YouTubeに投稿する動画は、撮影から編集まで2人だけでやっていますが、編集について、竪穴住居でなく、自宅でやっているということです。

どうしてそのような生活を送るようになったか、本人たちに話を伺いました。

■文明の不安定さ、足腰の弱さを感じ…

――竪穴住居を作ったきっかけとなぜ“縄文人生活”に行き着いたのでしょうか?

活動を始めた時期は、2020年の夏です。きっかけは色々あるのですが、1つはコロナ禍が始まってすぐの頃に、都会のライフラインが断たれるかもしれないというリアルな危機感です。その時、この文明の不安定さや、そこに頼り切っている自分の足腰の弱さが見えた気がしました。そこで、同じ危機感を持っていた会社の同期と、人類の文明をゼロから作り直して、強い足腰を手に入れようということで始めました。もともと、2人とも人類学や民俗学に関心があったことも理由としてあります。

縄文時代は日本史の一番原始的な時代であり、必然的にそこからスタートしました。いずれは弥生時代、そして、その次の時代へと移行していく予定です。

――制作過程で苦労した部分とこだわりのポイントは?

一番苦労したのは、笹を採って屋根に結びつける作業です。14日間かけて2万本の笹を集めて結びつけたのですが、あまりに進まないので、気が狂いそうでした。ただ、基本的にすべての作業が大変なのですが、その大変さを発見することが楽しさでもあります。例えば、石斧だと直径5センチくらいの木を切るのに10分ほどかかります。チェーンソーを使えば10秒なので、現代人の感覚からすれば、とんでもなく時間がかかるように思えます。僕らは石斧を作れるようになるまで、手で石を持って切っていました。その時は30分ほどかかっていたので、石斧でも“革命的”なスピードだと感じます。「石斧すげえ!」と思えるんです。

少し文明批判的な意味で始めた側面もあったのですが、やればやるほど文明へのリスペクトが湧いてきています。それに、石斧だと木の生命力にも気付かされます。切ろうとすると木の抵抗を感じるので、簡単には切りたくないと思うようになりました。木に対するありがたさや、畏敬の念のような感覚です。

こだわったのは壁です。土が崩れないよう、パンチして固めたのですが、その模様が美しかったので、そのままにしています。

――縄文の知識などはどのようにして得ましたか?

基本的には本だったり、考古館の復元された竪穴式住居を観察して勉強しました。ただ、縄文の技術に関する具体的で正しいハウツー本などはほぼないので、基本的にはトライアンドエラーです。自分で考えて工夫すると、成功したときの喜びが大きいので、その前に“わかりすぎない”というのが結果的によかったです。

――竪穴住居で生活をしてみた感想は?

夜の竪穴式住居の照明は、炉の小さな炎の灯りしかありません。そのため、一緒にいる人の輪郭もぼんやりしていて、自分との境界が曖昧になっていく感覚があります。これが不思議な一体感を生んでいて、縄文人も同じ家に住む者同士、親密な関係性を築けていたのかもしれないと思います。また、朝、入り口の向こうに見える外の木々の緑が鮮やかで、生まれ変わったような気分になれます。

■なぜスーツ姿で活動している?

――スーツ姿で活動されていますが、意図は?

現代人が縄文時代から文明を辿り直すというコンセプトなので、スタート地点は現代人の象徴であるスーツを着ることにしました。自分たちもサラリーマンなので。これからどんどんスーツがボロボロになっていき、自分たちで作る服に代わっていくのも楽しそうだなと!

――他に作ったものは?

先日、鹿の角を加工して釣り竿を作りました。竿は竹、糸はカラムシという植物、針は鹿の角でできています。ただ、道具の性能なのか、自分たちの技術不足なのか分かりませんが、まだ釣れていません。縄文人がどうやって釣りをしていたのか想像しながら、いつか釣ってみたいと思っています。

――今後どのようなものを制作して生活をしていきたいですか?

土器を作って、それで海水を蒸発させて塩を作る製塩をしたいです。以前、手作りの網でヤマメを獲って食べたことがあるのですが、その時、塩が欲しいと思ったからです。

◇ ◇ ◇

コロナ禍で文明の不安定さに気付き、“縄文人生活”を始めた「週末縄文人」の2人。「これから冬になり寒くなるので、笹ではなく、土葺きの住居も作ってみたい」と、今後の予定を教えてくれました。さらに、「目指すのは江戸時代(80歳くらいでいきたい)」と話し、それぞれの時代の生活を追体験していきたいということです。まずは次の時代となる「週末弥生人」になる日が待ち遠しい限りです。