【性教育】「思春期になってから」では遅すぎる?海外ではどう教えてる?幼少期からできる性教育のススメ
性の話はタブー。そんな価値観が日本では根深い。一方で、子どもに対しての性教育が不十分な結果、知識のないままの性行為にいたり、性感染症や予期せぬ妊娠、中絶につながるケースもある。ネット時代における、性教育のあり方について考えた。
(2022年3月8日配信『Update the world #15』より)
■年齢に合わせた性教育を
学生の頃、どのような性教育を受けたか覚えているだろうか。小学校高学年のときに男女別々に呼び出されたことを思い出す人も多いかもしれない。しかし、直接的な表現などはなく、子どもの頃に理解できなかった人も多いのではないだろうか。
弁護士の上谷さくらさんは、女子大学で「もしレイプにあったらどうするか」と投げかけたとき、日本の性教育の弊害を強く実感したという。
「圧倒的に多いのが、黙っているとの答え。2番目が母親に相談、3番目が友達に相談でした。『110番通報しないんですか?』と聞くと、『こんなことで110番してもいいんですか?』と返されました。痴話げんかくらいの認識しかなく、それゆえに性被害が減っていかないのだと感じました」
さらなる充実が求められる日本の性教育。産婦人科医の高橋幸子さんによると、世界に比べると日本の性教育は遅れているという。
「2009年にユネスコなどが発表した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、包括的セクシュアリティ教育の開始年齢は5~8歳のゾーンから記述されており、年齢に応じた段階的な教育が必要としています。しかし日本の義務教育で性教育が始まるのは、小学校の高学年です。
そもそも性教育は、赤ちゃんがどうやってできるかだけではありません。自分の身体は大切であること、水着で隠れるようなプライベートゾーンは自分で守ること、誰にいつどこで触らせてもいいかは自分では決めることを、身体を洗いながら教えることも性教育です」
実際に、幼少期から正しい性教育を受けていないことの弊害が現れている。高橋さんは性教育の講習で、小5の女の子から寄せられた質問を取り上げた。
「『セックスは、血が出て痛いと聞いたけど、本当ですか』と質問されました。詳しく聞くと、クラスの男子が言っていたとのこと。インターネットの普及により、性に関する情報が低年齢化しています」
間違った知識を得る前に、幼少期から正しい性教育をすることで避けられる問題だ。自らも2人の男の子のパパであり、社会学者の田中俊之さんは、幼少期の性教育について、実例をもとに語った。
「たとえば、漢字の読み方がわからないといわれたら、間違って覚えられても困るからちゃんと教えますよね。性教育も同じです。
僕自身、息子が4歳のときに、おふろで性器の下を指し、『なんかある!』と騒いでいたんです。僕は息子自身が疑問を感じた今こそがチャンスだと思って、『そこには、赤ちゃんの素が入っているんだよ』と教えました。彼なりに納得していましたね。年齢に合わせた知識を伝えることが大事だと思います」
クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんも、性教育を受けないことで困るのは若い世代ばかりではないと持論を語る。
「たとえば妊娠したときに女性の身体がどうなっていくのか、出産後はおなかがどう変わって、骨盤がどう戻るのか、誰も教えてくれません。義務教育でしっかり教えてほしいと思いますね」
■まずは自分を尊重することが必要
社会学者の田中さんは、男の子が自分のカラダや性を雑に扱う風潮に警鐘を鳴らす。
「アニメやバラエティなどで男性の下半身や性器が見えてしまうことがギャグとして雑に扱われます。またトイレでも、女性は個室ですが、男性はついたてもない場所で小便をします。自分の身体に対して尊厳を持てない人は、他人の身体を尊重しようと思えません。男の子の身体が、もっと尊重される必要があると感じます」
この意見について、番組でも共感の声が。海外の性教育では、「自分と他者は別」という自分への尊厳から性教育を始めるとのこと。日本でも、男性が自身を尊重できていない状況を変えることが必要だという。
■パートナーとの豊かな性をめざす
社会を変えるためにはどうすべきか、産婦人科医の高橋さんは次のように語る。
「『寝た子を起こすな』というような考え方の人たちがまだ一部いるのが現状です。しかし保護者からの性教育のリクエストを受けて学校が動くケースもあります。保護者の方々が学校に確認してみることで、少しずつ変えていけるのではと思います」
そして、性教育を通して子どもたちにどう育ってほしいか、自らのミッションを語った。
「性教育の最終的な目標は、パートナーとのコミュニケーションとしての『豊かな性』です。自分の身体は自分のものだと理解したうえで、自己決定権は自分にあるんだと認識してほしいですね。
リスクを知った上で、性に奔放で多くの人たちと性生活を楽しむのも自由です。最近では、自慰行為も”セルフプレジャー”といわれ、ポジティブに捉え直されています。すべて権利として、伝えていきたいですね」
私たちが生まれたのも、そもそもは性がはじまり。タブー視しなければいけないことでも、恥ずかしがることでもない。人生を豊かにすることとして、もっと前向きに性について考えていきたい。
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この記事は、2022年3月8日に配信された「Update the world #15 “性の話はタブー?”をアップデート」 をもとに制作しました。
■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。