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【解説】浮かび上がった“みえない”更年期障害

2022年6月17日 23:21
【解説】浮かび上がった“みえない”更年期障害

ほてりや頭痛、気分の落ち込みなどの不調をともなう更年期の症状について、厚生労働省ははじめて調査を行った。診断を受けていなくても更年期障害を疑う人や、周りから指摘される人などが、診断を受けた人より多くいることがわかった。

更年期障害をめぐっては、周囲からの理解が得られず、働くことが難しくなるケースなどもあり、支援を求める声が上がっている。

■厚労省が初調査、浮かび上がった“見えない”更年期障害

更年期とは、閉経前後の10年間、45歳から55歳頃をさす。この期間、女性ホルモンの減少によって、ほてりや頭痛などの体調不良や、気分の落ち込みなど精神的な不調があらわれることがあり、その症状が日常生活に支障をきたすような深刻な場合「更年期障害」と呼ばれている。

今回の厚労省の調査では、更年期障害症状の有無や、受診状況、その症状が日常に与える影響などが明らかになった。

結果は以下の通り。

○「医療機関への受診により更年期障害と診断されたことがある/診断されている」

・40代で3.6%
・50代で9.1%

「更年期障害」と診断されている人は、いずれも1割未満だった。

一方、診断を受けていない人のなかにも、可能性があると考える人がいる。

○「医療機関を受診はしたことがないが、更年期障害を疑ったことがある/疑っている」

○「自分では気づかなかったが、周囲から更年期障害ではないか、といわれたことがある」

○「別の病気を疑って医療機関を受診したら、更年期障害の可能性を指摘された」

以上の回答の合計は以下の通り。

・40代で28.3%
・50代で38.3%

いずれも診断を受けた人よりも多かった。

また、更年期症状を自覚している人のなかで、家事や買い物、育児や仕事の影響について、「ある」と回答した人は以下の通り。

・40代で33.9%
・50代で27.1%

今回の調査で、更年期の症状を自覚していても病院を受診せず、更年期障害の診断を受けていない人が8割以上いることが明らかになった。

厚労省はこれをうけ、更年期障害についての研究を進めるとともに、実態の把握、周知を行いたいとしている。

■職場で理解得られず・・・離職を余儀なくされる人も

更年期障害をめぐっては、その症状の重さや、周囲の理解が得られず働けなくなってしまうケースもある。

大手コールセンターで非正規雇用で働いていた50代の女性は、めまいや激しい頭痛などに悩まされ、病院を訪れたところ、更年期障害と診断された。

「頭痛などに加え、涙がとまらなくなることもあった。そのせいで遅刻や欠勤することもあった」

女性は更年期の症状による不調で何度か欠勤したところ、出勤率が低下したとして雇い止めにあった。

「更年期障害について会社に相談しても、改善してほしいと言われるだけ。雇い止めと言われたときは感情が出てこなかった。穴が開いたような感じ」

労働組合「サポートユニオン」が昨年行った更年期症状に関連する調査では、更年期症状を経験した人のうち、37%が「更年期の症状のために、仕事で悩みを抱えたり労働問題にあったりした」と回答した。

さらに「更年期の症状が原因で会社を休んだことがある人」のうち、それが理由で「不利益な取り扱いを受けた」と回答した人は29%に及んだ。

現在、労働基準法では、「生理休暇」のように、更年期の体調不良などに対応する休暇制度は規定されていない。

先の女性は「更年期障害は誰にでも起こりうるもの」と訴え、職場などにおいて更年期障害への理解が深まるよう国に働きかけるとともに、安心して休める環境づくりを求めている。

■男性にも更年期障害がある?

厚労省は男性に対しても調査を行った。更年期障害は、女性だけでなく男性にも起こりうる。主に40歳以降に、男性ホルモンが減少することで、女性の更年期障害と似た症状があらわれることがあるが、その病態は十分に解明されていない。

男性の更年期障害・症状に関する調査結果は以下の通り。

○「医療機関への受診により更年期障害と診断されたことがある/診断されている」

・40代で1.5%
・50代で1.7%

○「医療機関を受診はしたことがないが、更年期障害を疑ったことがある/疑っている」

○「自分では気づかなかったが、周囲から更年期障害ではないか、といわれたことがある」

○「別の病気を疑って医療機関を受診したら、更年期障害の可能性を指摘された」

以上の回答の合計は以下の通り。

・40代で8.2%
・50代で14.3%

男性の調査結果においても、更年期障害の診断を受けていないが可能性があると考える人が、診断を受けている人よりも多かった。

■求められる社会の理解

目に見えない症状が多く、情報も少ないことから、周囲の理解が得にくい更年期障害。症状に悩む人々が孤独にならないよう、相談できる機関の設置や、安心して暮らすための支援策の検討が急がれる。

また、職場や家庭など社会全体で、更年期障害は誰にでもおこりうることをひとりひとりが理解し、正しい知識をもって助け合える環境づくりが求められる。